連載

中国のじいちゃんとばあちゃんがPCを学ぶ山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)

中国のじいちゃんとばあちゃんは、若いときにいろいろあって、勉強する時間がなかったそうな。だから、いま大学でPCの歴史やPCの仕組みを覚えているんだって。

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ENIACから始まりQQで終わる

 筆者が参観したその日の授業では、20人生徒のうち19人が出席した。期末テストはなく、用事があれば遠慮なく休めるお気楽な老年大学であるのに、この出席率の高さはすごい。さらに、教科書を開き、マイ茶びんをキーボードの脇におき、真剣に授業に取り組もうとするじいちゃんとばあちゃんの気迫には、正直恐れいってしまった。

 私立と比べて授業料が格段に安い老年大学のPC教室なので、近隣の農家や都市部の低所得層居住地域「城中村」の住民も参加できなくはないのだが、生徒はすべて「都市住民」だ。ダンスクラスや音楽クラスでは農村住民も少ないながらもいるが、PCに関してはいかに安くても学ぼうと思う人はいない、と城中村に住む筆者の知り合いが話していたのを思い出した。

 授業は、前回の内容を実践しながら復習し、それから新しい内容を学ぶ構成だ。筆者が参観したのはWord 2003を使った文書作成の第2回目であり、文字の修飾や図形挿入を教えていた。各生徒のPCには、講師が使っているPCのデスクトップ画面が表示され、生徒は講師の操作と説明を真剣にチェックしている。講師の手本が終わると生徒がそれを実践する。講師は机を巡回して1人1人指導していく。

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 Wordで文字の装飾を教えているということは、文字入力やIMEの使い方は習得できていることになる。Aさんの文字入力はとても遅いが、それでも過去に習ったことを思い出し、教科書の文字入力方法を解説したページを開き、「右手の人差し指」で入力し、ディスプレイを時間をかけて確認しながら「私もPCを使えるようになったの!」と筆者にアピールする。

いたってまじめに授業を受ける中国のじいちゃんとばあちゃん(写真=左)。じいちゃんとばあちゃんには、マイ茶びんがマストアイテムなのだ(写真=右)
中国のPCには多数のIMEが用意されている。使うIMEを選ぶ操作も重要なのだ(写真=左)。初級クラスの教科書(写真=右)

 全44時限で学ぶPCの授業では、次のような流れで構成されている。「PCの動く仕組み」→「ENIACから始まるPCの歴史」→「Windows XPの操作方法」→「IMEの切り替え」→「文字入力」→「Webブラウジング」→「人気ポータルサイトサイト“網易”でフリーメールアカウントを取得」→「WEBメールでメールを送受信」→「人気チャットサービス“QQ”のアカウント取得からチャット」→「ついでに“QQ”のアカウントでオンラインゲーム」

 ……仕組みや歴史という壮大なテーマから始まりながら、最後はチャットしてオンラインゲームにたどり着くという流れがあまりにも正直すぎる。

 日本では聞いたことのない旋律のチャイムが流れる。おお、もう45分経ったのか。教師は授業を止めて休み時間になった。しかし、生徒は黙々と復習に励むのであった。

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