Hemlockで“大台”を目指せっ──「Radeon HD 5970」のデュアルGPUパワーを喜ぶ:イマドキのイタモノ(2/2 ページ)
Radeon HD 5000世代のデュアルGPUカード“Hemlock”こと「Radeon HD 5970」が発表された。“Radeon HD 5800×2”のパフォーマンスを早速チェックしてみよう。
3DMark Vantage Performanceで大台を超える
Windows 7とDirectX 11が登場した11月掲載のレビュー記事だが、今回はすでに測定しているGPUとの比較のため、Radeon HD 5970でもWindows Vistaの環境でベンチマークテストを行っている。今回評価で用いたシステムの構成もこれまでのレビュー記事と同じくCPUがCore i7 965(動作クロック3.2GHz)、チップセットにIntel X58 Expressを採用した環境となる。
テストシステム構成 | |
---|---|
CPU | Core i7 965 Extreme Edition(3.20GHz) |
マザーボード | MSI X58 Pro |
チップセット | Intel X58 Express |
メモリ | DDR3-1333(GeIL GV33GB1333C9TC 1GB×3/9-9-9-24) |
HDD | WD3200AAJS-B4A(320GB/7200rpm/8MB) |
OS | Windows Vista Ultimate(SP1) 32ビット版 |
Radeon HD 4870 X2では、当時のシステムで3DMark Vantageのスコアが10000 3DMarksを超えたが、Radeon HD 5970は20000 3DMarksを超えた。3DMark 06では、Radeon HD 5870のプラス1000~2000程度だが、これは3DMark06の限界が近づいていることも示しているといえるだろう。
市販ゲームタイトルによるベンチマークテストの結果では、Crysis、FarCry 2でデュアルGPU(CrossFireX)の効果が表れている。マルチGPUの効果が出にくいとされているCrysisも“画質オプション=High”の1920×1200ドットの条件で60fpsに迫るスコアを発揮している。FarCry 2も“画質オプション=UltraHigh”の1920×1200ドット設定で81fpsに達した。
この結果から見ると、最新のAPIやエフェクトを導入したゲームタイトルでも超高解像度や最高画質オプションで快適に楽しめると判断できそうだ。また、将来登場するDirectX 11対応ゲームタイトルに向けての備えとしてもRadeon HD 5970は十分といえる。ただ、Unreal Tournament 3ではデュアルGPUの効果がまったく出ず、1GPUのRadeon HD 5850に対しても低解像度で下回るスコアになった。もちろん、快適なプレイに十分なスコアであるから問題ないが、ほかのゲームタイトルにおいても「CrossFireX構成に最適化されているか」についてチェックする必要はあるだろう。
消費電力はさすがに従来のRadeon HDシリーズから増えて、ピーク(3DMark 03で計測)で346ワットに達した。Radeon HD 5870に対してはプラス100ワットといったところだが、Radeon HD 5870を2枚用いたCrossFireX構成にする場合と比べればワットあたりのパフォーマンで優れている。さらにいえば、Radeon HD 4890と比べて50ワット増でしかない。もちろん、アイドル時の消費電力も増えているが、127ワットに抑えられている。Radeon HD 5870と比べて増えた分は30ワット程度だ。
こうしてみると、消費電力も優れていると評価できるデュアルGPUのRadeon HD 5970だが、発熱量はかなりのものになる。実際、ベンチマークテストを実行する前の状態でリファレンスカードの表面はかなり熱く、室温20度前後の条件で検証している時にも熱暴走と思われるハングアップが数回起きている。ピークで346ワットという消費電力を余裕をもって冷却できるよう、システムの冷却には万全を施したい。
見つけたらほかは後回しでも即買い……か
1枚のグラフィックスカードで20000 3DMarks(3DMark Vantage)を記録したパフォーマンスのインパクトは大きい。NVIDIAがRadeon HD 5000シリーズと同世代のシングルGPUを投入する前という時点において、この優位性は大きい。
Radeon HD 5970の価格は、米国で599ドルとされるが、国内では8万円前後になるとみられる。Radeon HD 5870を2枚用意するのと比べれば、コストも抑えられる。ただ、Radeon HD 5870の流通量が相変わらず改善されていない状態で、Radeon HD 5970も同じ状況になる不安はぬぐえない。そういう事情にあって、ハイエンドGPUを求めるユーザーとしては、まず製品を見つけたら即購入し、それから、PCケースやそのほかのパーツを選ぶという、やや変則的な“お買い物”になるだろう。しかし、そういうトリッキーな技を使ってでも手に入れておきたいGPUということになるだろう。
関連キーワード
Radeon | GPU | GeForce | AMD | EverGreen | GDDR | グラフィックスカード | ATI | ATI Eyefinity | ベンチマーク | DisplayPort | Unreal Tournament | マルチディスプレイ
関連記事
Radeon HD 5700シリーズの“2万円級”な性能を知る
シングルGPUで最高性能を発揮するRadeon HD 5870で絶好調のRadeon陣営は、2万円台というボリュームラインでも攻勢の手をゆるめない。発表されたRadeon HD 5770とRadeon HD 5750の実力を検証した。待ちきれないっ!Radeon HD 5850のパフォーマンスを楽しむ
絶大な絶対性能を発揮したRadeon HD 5870だが、そのミドルレンジGPUとして期待のRadeon HD 5850がこの週末に出荷された。気になる性能を早速試してみた。EverGreenで7680×3200ドットの未知なる視界がっ!──日本AMD、ATI Eyefinityライブデモを公開
日本AMDは、9月11日にマルチディスプレイ出力機能「ATI Eyefinty」のライブデモを行った。これは次世代GPUの「EverGreen」でサポートされる機能といわれている。DirectX 11への対応と省電力CPUの充実が最重要課題──AMD Press Conference
COMPUTEX TAIPEI 2009におけるAMDの基調講演ともいえるこのイベントで、“動く”次世代GPUによるDirectX 11対応のデモが世界で初めて行われた。40ナノ世代に突入した「Radeon HD 4770」の“正体”を知る
ついにGPUが40ナノメートルに突入した。最先端のプロセスルールを導入したRadeon HD 4770で、GPUは変わるのか?変わらないのか?まさに“がっぷり四つ”!──Radeon HD 4890とGeForce GTX 275
AMDがRadeon HD 4890を発表した日に、NVIDIAは「GeForce GTX 275」を発表した。実売3万円前後という同じ価格帯でGPU市場を制するのはどちらだ。GPUの2009シーズンは本日開幕──Radeon HD 4890でベンチを走らせる
RadeonのシングルGPUで最上位となる「Radeon HD 4890」が登場した。“番号”は20アップ、スコアはどれだけアップする?これでGeForce 9600 GTと戦える──「Radeon HD 4830」は2万円GPU戦線を突破できるか
AMDは、10月22日にRadeon HD 4800シリーズのバリューモデル「Radeon HD 4830」を発表した。搭載グラフィックスカードの実売価格は100~150ドルになる見込みだ「新しい設計思想」が生み出すミドルレンジ──Radeon HD 4670の実力拝見
AMDは、9月10にRadeon HD 4600シリーズを発表した。Radeon HD 4000世代のミドルレンジだが、Radeon HD 3800シリーズに迫る性能を発揮するという。RadeonはGeForceを追い越せたのか──「Radeon HD 4870 X2」を「GeForce GTX 280」にぶつけてみる
先日登場した“RV770”ことRadeon HD 4870は、「ミドルレンジ」クラスのGPUとAMDはいう。GeForce GTX 280と競うのは「8週間後に登場する」と予告されたデュアルGPUカードだった。その期待の“R700”が姿を現した。北京直前!GPUトップアスリートで競う“ベンチマークオリンピック”
NVIDIAもAMDも最新GPUを“どどーん”とぶつけてきた2008年の夏。2560×1600ドットの超高解像度環境で「GeForce GTX 280」「GeForce GTX 260」「Radeon HD 4870」「Radeon HD 4850」の実力を比べてみた。GeForce 9800 GTXに負けないっ! 新世代ミドルレンジ「Radeon HD 4850」
「RV770」の開発コード名で知られてきたRadeon HD 4800シリーズの1モデルが6月19日(米国時間)に出荷を開始した。新しい設計思想で開発された新世代Radeonの実力に迫る。AMDがRadeon HD 4800シリーズで導入する“新しい”設計思想
AMDはまもなく次世代GPUを投入するとみられている。その正式発表を前にして、AMDがこれまでとは違う新しい設計思想を説明した。NVIDIA、バリュークラスGPU「GeForce 9500 GT」発表
NVIDIAは、バリュークラスの価格帯をカバーするGPUの新製品「GeForce 9500 GT」を発表した。このGPUを搭載するグラフィックスカードの価格は1万円台前半となる見込みだ。ライバルは「8800 GT」──「GeForce 9600 GT」で新世代ミドルレンジの実力を知る
タイトルを見て「そりゃ無理があるでしょう」と思いきや、なかなかどうして、いい勝負を見せてくれちゃうのだ。これはバランスのいい“ハイエンド”GPU──「Radeon HD 3870」ゲームベンチレビュー
RV670と呼ばれてきたAMDの新世代GPUが登場した。先に登場したGeForce 8800 GTと同じく、絶対性能ではなく費用対効果でユーザーに訴求するモデルだが、その狙いはうまくいったのだろうか。“G92”世代「GeForce 8800 GTS 512M」の微妙な立ち位置を探る
「価格は半分なれど性能差はわずか」という衝撃のGPU“GeForce 8800 GT”の上位モデルが登場する。昔から微妙な“GTS”の意味付けはどう変わるだろうか。こいつは意外と使えるかも──実売2万円台半ばに落ち着いてきた「Radeon HD 3850」を試す
GeForce 8800 GTという“とんでもない”GPUのおかげで、なんとなく地味な印象のRadeon HD 3800シリーズ。だが、“ボリュームゾーン”の価格帯でRadeon HD 3850が「イケテル」らしい。2万台の新世代ミドルレンジGPU「GeForce 8600GT」と「GeForce 7600GT」と比較する
“8600 GTS”は実売3万円の「高めミドルレンジ」だが、“8600 GT”は実売2万円前半の「ど真ん中ミドルレンジ」。その性能は名機“7600 GT”を圧倒できるか。ASUS「EAH2600XT D4」で“GDDR4”Radeon HD 2600 XTの実力を知る
期待の新世代RadeonのミドルレンジGPUであるが、まず登場したのはクロックを抑えたGDDR3版だった。ようやく姿を見せつつある「定格動作」2600XTでこのGPUの真価を検証する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.