常識破りの2画面タブレット「Sony Tablet P」を丸裸にする:完全分解×開発秘話(1/4 ページ)
ソニーが作るAndroidタブレットはやはり普通じゃない。2画面折りたたみボディの“Sony Tablet”Pシリーズを開発者に分解してもらい、こだわりが詰まった内部構造に迫った。
ソニー初、2画面Androidタブレットの中身は?
各メーカーからAndroidタブレットが続々と発売される中、ひときわ異彩を放っているのが“Sony Tablet”Pシリーズ(以下、Sony Tablet P)だ。
タブレット端末は、7~10型程度の液晶を搭載したスレート型の製品が主流だが、Sony Tablet Pは1024×480ドット表示の5.5型ワイド液晶が2枚備わった折りたたみボディを採用している。これにより、携帯時は2つ折りにしてコンパクトに持ち運ぶことができ、利用時は本体を開いて広々と2画面で使えるという、携帯性と操作性の両立を図っているのだ。
今回は実に個性的なAndroidタブレットであるSony Tablet Pがどのように生まれたのか、また2画面折りたたみボディの内部構造はどうなっているのかを詳しく知るため、同製品のハードウェア開発者に実機を分解してもらい、開発の経緯や各所のこだわりをうかがった。
インタビューしたのは、ハードウェア設計のプロジェクトリーダーを務めた佐久間康夫氏(VAIO & Mobile 事業本部 モバイルデバイス部門 商品設計1部 シニア電気設計マネジャー)、機構設計を行った辛島亨氏(VAIO & Mobile 事業本部 モバイルデバイス部門 商品設計1部)、無線機能の開発を担当した佐藤宜永氏(VAIO & Mobile 事業本部 モバイルデバイス部門 商品設計1部)の3人だ。実機の分解は、辛島氏にお願いした。
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開発はAndroidタブレットやiPadが世に出る前から
まずは開発の経緯だが、Sony Tablet Pのもとになるプロジェクト自体は2007年4月ごろとかなり前からスタートしたという。当時、ソニーでは技術開発部門の中に新しい技術に取り組む部署があり、さまざまな部署から新しいモバイルデバイスの開発に興味がある人員が集結し、プロジェクトが始まった。
もっとも、2007年にはAndroid端末がまだ存在せず、2010年発売のiPadに始まるタブレットのブームもまだまだ先のこと。2007年1月にiPhoneが発表されたが、同年6月に米国での販売が開始される前で、その評価も定まっていないような時期だ。
したがって、開発プロジェクトの当初はタブレット端末を想定していたわけではなかった。佐久間氏は「ADSLや光ファイバーによるブロードバンド環境が一般家庭に普及し、次はHSDPAやWiMAXによってモバイル環境での高速なデータ通信が普及すると見られていた。そこで、家庭での高速なインターネット体験がモバイルで実現できたときに何ができるのか、というのが製品コンセプトの発端になった」と当時を振り返る。
次に同氏は「家庭にブロードバンド環境が普及して一番便利になったのは、Webサイトの閲覧だったため、新製品を作るにあたっては、まず家庭での快適なWeb閲覧環境をモバイルでも実現しよう」と考えたが、当時のスマートフォンの一般的な画面サイズ(3.5型前後)では、PCと同じWebサイトを表示できても、拡大/縮小やスクロールを頻繁に行う必要があり、家庭でのPCと同レベルとはいいがたかった。これをより快適化するには大画面が重要になるが、10型や12型のディスプレイを採用すると、今度は常に携帯するのがつらくなってしまう。そこで、視認性と携帯性のバランスを模索していた。
一方、辛島氏は機構設計の立場から、製品のデザインもサイズもまったく決まっていない段階で、プロジェクト内の各自が思い描く未来の携帯端末を試作してもらったところ、複数画面の端末というアイデアが多数集まってきたという。また、デザイナーにも同じテーマで依頼したところ、「長財布のようなボディを開くと、2画面が現れる携帯端末」というデザインが出てきた。これが設計で検討していた2画面端末と近い考えだったことから、Sony Tablet Pの基本となる2画面折りたたみボディにつながっていく。
VAIO type Uベースの試作機で2画面を検証
開発初期にはWindows以外のタブレット端末が一般向けになく、OSやプラットフォームを何にするかも特に決めていなかった。
そこで、まずは「手のひらでPC並の処理ができる端末」という感覚を味わってみようと作られたのが、VAIOをベースとした試作機だ。小型軽量モバイルPCの「VAIO type U」からディスプレイ部分を分離し、感圧式タッチパネル付きの4.5型液晶ディスプレイとケーブルでつないだもので、手のひらサイズの小型軽量端末をイメージしたさまざまな評価に役立てた。これを十数台試作し、社内のユーザーエクスペリエンス調査を行う部署などで検証した。
試作機のディスプレイ側には、加速度センサー、ジャイロセンサー、電子コンパスなど、当時考えられるセンサーをほぼ“全部入り”で載せたほか、カメラやL/Rボタン、さらには「PlayStation Vita」のような裏面タッチパッド、押したり握ったりする強さを伝えられる感圧センサー、息遣いなどの再現を想定した送風デバイス、といった一風変わったものまで、とにかく詰め込んでみたという。
やがて2画面の携帯端末という方針が定まると、今度は2台のVAIO type Uを用いて2画面の体験ができる試作も行った。「2008年にこれらの試作機による検証を繰り返し、2画面折りたたみの端末を製品化できると確信した」と佐久間氏は語る。
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