「N680GTX Twin Frozr III OC」で“GPU Boost”の挙動を知る:イマドキのイタモノ(2/2 ページ)
リファレンスデザインばかりだったGeForce GTX 680搭載カードに、MSIのオリジナルクーラー搭載モデルが登場。“GPU Boost”の挙動でOCモデルの優位性を検証する。
リファレンスに“上乗せ”するOCモデルのGPU Boost
まず、GPU Boostがどのような挙動を示すのか、3DMark 11のPerformance設定で、GT1~GT4の間における動作クロックの挙動をGPU-Zのログから起こしたのが下のグラフだ。
このグラフでは、それぞれのGPUにおけるリファレンスデザインの動作クロックを100パーセントとしている。比較用としてGeForce GTX 580の動作クロックを入れているが、こちらがGT1が開始してからGT4が終了まで常に100パーセントで、テスト終了後に動作クロックを落としている。一方、GeForce GTX 680はGT1~GT4までかなり細かく動作クロックを制御しており、ギザギザのグラフとなった。さらに、トップパフォーマンスだけでなく、テストとテストの間も、動作クロックを引き下げるなど省電力面でもメリットが大きい。なお、今回の計測におけるGPU Boostの最大動作クロックは1110.5MHz、GPU負荷90パーセント以上における平均動作クロックは1080.6MHzとなった。
次は、GeForce GTX 680のリファレンスカードで取得した動作クロックと、N680GTX Twin Frozr III OC、N680GTX Twin Frozr III OCをGeForce GTX 680のリファレンスデザインにおける動作クロック(1006MHz)で動かしたときの動作クロックの変動をグラフにした。これを見ると、オーバークロック設定におけるN680GTX Twin Frozr III OCが一番高い動作クロックで、リファレンスデザインの動作クロックに設定したリファレンスカードとN680GTX Twin Frozr III OCを比べると、N680GTX Twin Frozr III OCがより高いクロックで動作していた。
GPU負荷の高い状態、1000MHz以上動作時の平均動作クロックを計算すると、リファレンスカードでは1080.6MHzに対し、1006MHz駆動のN680GTX Twin Ftrozr III OCは1103.6MHz、N680GTX Twin Ftrozr III OCは1146.5MHzとなった。それぞれの動作クロックでGPU Boostの上昇幅をみると、リファレンスカードは74.6MHz、1006MHz駆動のN680GTX Twin Ftrozr III OCは97.6MHz、N680GTX Twin Ftrozr III OCは88.5MHzとなる。
これらの結果からいえることは、GeForce GTX 680は、クーラーユニットの性能が平均動作クロックに影響し、冷えるクーラーユニットほど動作クロックが上昇する(ただし限界はある)。また、オーバークロックモデルでは、動作クロックが上昇しただけ性能が向上するものの、GPU Boostによる上昇幅は狭まる可能性がある(とはいえ、パフォーマンスは高いから問題はない。あるいは、GPU Boostによる上昇幅を打ち消してしまうほどのオーバークロック設定も可能と思われる)。GPUのクーラーユニットだけでなく、PCケース内のエアフローも十分に考慮したいところだろう。
これをGPUの温度変化でみると、リファレンスカードは最大で76度に達するが、N680GTX Twin Frozr III OCは製品のオーバークロック設定である1058MHz動作でも60度程度、GeForce GTX 680のリファレンスデザイン設定である1006MHz動作でも同じ60度となった。
そして、そのパフォーマンスだが、3DMark 11のPerformanceのスコアで比較すると、リファレンスカードはP9634 3DMarksだが、N680GTX Twin Frozr III OCはP10022 3DMarksと、1万の大台に乗せた。N680GTX Twin Frozr III OCもクーラーユニットだけの性能ではP9000台のスコアであるため、オーバークロック設定は必須だ。なお、3DMark Vantageでは、リファレンスカードではP39000台だが、Twin Frozr IIIクーラーでP40000台にのせ、N680GTX Twin Frozr III OCでP40846を記録した。こちらはリファレンスカード比で約P1000の向上だ。
こうした結果から、GPU Boostは、パフォーマンスに対する効果ももちろんだが、動作クロック調整により全体的な消費電力対性能の向上にも有効な機能だと確認できた。ただし、GPU Boostをより有効に使うには、冷却が重要ということも忘れてはならない。オーバークロックにチャレンジすることが主目的のユーザーならともかく、常用におけるPCで静音と冷却効率はバランスが重要であり、ここが自作PCユーザーの腕の見せ所でもある。
冷却に関してはもう1つ考慮しておきたいポイントがある。今回用いたMSIのN680GTX Twin Frozrのように、今後はオリジナルデザインのクーラーユニットを搭載するオーバークロックモデルが登場するようになるだろう。オリジナルデザインのクーラーユニットに関しては、マルチGPUの環境構築で向き不向きがあるが、スロット間隔を確保してやればリファレンスデザインのクーラーユニット以上に冷却効率が高く、GPU Boostの効果も高まることが期待できる。
すでに、GPUのコアクロックを1202MHzに引き上げたオーバークロックモデルがGalaxyから登場する予定で、MSIも「Lightning」クラスの製品を投入する可能性がある。ある程度落ち着きを見せてきたRadeon HD 7970に対し、GeForce GTX 680はこれから新モデルが次々と登場するタイミングだ。自作PCユーザーとしては、その動向に注目したい。
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