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AMDの第3世代省電力APU“Mullins”と“Beema”の特徴を解説Bail Trail-Tより上?(2/2 ページ)

AMDが新しい省電力APUを発表。Mullinsは消費電力あたりのパフォーマンスを2倍に引き上げ、BayTrail-T世代のAtomに対して優位性をうたう。

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ハードウェアセキュリティ機能を統合

 MullinsとBeemaでは、ARMベースのハードウェアセキュリティ機能を統合したことも大きな特徴だ。両SoCは、AMR Cortex A5をPlatform Security Processor(PSP:プラットフォーム・セキュリティ・プロセッサ)として統合し、ARM TrustZoneをサポート。TrustZoneは、物理メモリのTrusted OSと呼ぶ専用OSを動作させることで、WindowsやLinuxといった汎用OSの動作を監視してマルウェアなどの攻撃や、セキュリティ解除の動きを検知・防止することを可能にする。

 また、このPSPではICカードのセキュリティに関する標準化団体であるGlobal Platformや、Trusted Computing GroupがモバイルOS向けのオープンスタンダードとして採用する「Trusted Execution Environment」(TEE)もサポートしており、業界標準技術を採用することで、幅広いプラットフォームやアプリケーションで、すぐれたセキュリティ機能を実装できるとしている。

ARM Cortex A5を統合することで、ARM TrustZoneベースのセキュリティ機能をサポート(画面=左)。ARM Cortex A5を統合することで、ARM TrustZoneベースのセキュリティ機能をサポート(画面=右)
Mullins/Beemaでサポートするセキュリティ機能(画面=左)。業界標準のオープンスタンダード規格となるTEEのサポートにより、幅広いセキュリティ機能をサポート(画面=右)

大幅に強化された省電力機能

 AMDは、MullinsとBeemaにおいて、大幅な省電力機能のアップデートを行なっている。同社がターゲットとしたのは、制約の多い熱設計でも、SoCの半導体性能を引き出すことだ。

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省電力SoCにとって、省電力性能の向上は最史上命題だ

 現在、熱設計の制約が厳しいタブレットでは、SoCの表面温度を“しきい値”として、電力制御を行なっている場合がほとんだ。しかし、MullinsはBeemaと同じ半導体を使っていることからも分かるとおり、SoCそのものの性能や熱設計には余裕がある。

 そこで、Mullinsでは新たにタブレット本体の温度を新しい“しきい値”とすることで、これまで以上に高い表面温度でも一定時間動作するようにすることで、より高い動作クロックでの動作を可能にし、パフォーマンスアップを図っている。

 その一方で、MullinsとBeemaでは、Webブラウジングなど、ブースト動作によって動作周波数を引き上げてもあまり効果がないアプリケーションを認識し、これらのアプリケーションでは動作周波数を固定にすることで、電力消費を抑えるインテリジェント・ブースト・コントロールもサポートする。

 また、バッテリー駆動時間を引き延ばすため、ブースト動作と同時にSoCの利用しない機能をすばやくオフにすることで、消費電力の低減を図っている。さらに、MullinsとBeemaでは、半導体製造技術の成熟と半導体設計の最適化により、リーク電流はTemash/Kabiniに比べて、CPU部で19%、より専有面積の大きいGPU部ではその倍の38%を削減することに成功している。

現在、SoCは半導体の温度をしきい値に周波数などの制御が行なわれているが、タブレット本体の許容温度とは大きな差がある(画面=左)。タブレット本体の温度をブースト動作のしきい値とすることで、より高い性能を引き出すことができる(画面=右)

 この省電力性能とパフォーマンス向上の両立には、新たに改良された省電力DDRメモリインタフェースも寄与している。Beemaでは、DDR3-1866に対応することで3D性能を向上させているほか、DDR3L-1333の新しい低電力モードをサポートすることで、メモリの消費電力を500ミリワット低減。また、ディスプレイインタフェースについても、電源回路の改良により200ミリワットの省電力化を果たした。

 同社はさらに、省電力技術ロードマップも公開し、2014年末にはAPUの電源回路をシリコン統合する「Integrated Voltatge Regulation」や、SoCの各機能ごとに、よりきめ細やかな電力制御を行なう「Per Part Adaptive Voltage」などを実現する意向を示した。

アプリケーションによっては、ブースト動作でクロック周波数を引き上げても効果が薄いものがある(画面=左)。アプリケーションごとの特性にあわせて、ブースト動作の有無を判断するインテリジェント・ブースト・コントロール(画面=右)
ブースト動作時に、使わない機能を積極的にOFFにすることで、パフォーマンスを向上させつつも、消費電力へのインパクトを最小限に抑えることを可能にする(画面=左)。AMDが公開した省電力技術ロードマップ。SoCへの電源回路統合などが計画されていることが分かる(画面=右)
I/0機能も省電力性能を向上させるために改良が加えられた(画面=左)。Mullinsは、タブレットの高性能化のみならず、超小型デスクトップPCなどの新しいプラットフォームを実現できるとアピール(画面=右)

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