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「ページプリンタ」選びで“見落としがち”なポイントとは?SOHO/中小企業に効く「ページプリンタ」の選び方(第1回)(2/2 ページ)

ペーパーレス化を推進している企業も少なくないだろうが、まだまだ重要なオフィス機器として使われ続けている「ページプリンタ」。実際、データを紙に印刷する機会は依然として多いだろう。本連載はそんなページプリンタの選び方を紹介する。

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コスト削減にこだわるには「TEC値」をチェック

 法人でページプリンタを導入する場合、コスト削減の観点は欠かせない。製品を買い替える理由として「コストの削減」を挙げているのであれば、それを客観的に説明できることも、社内で稟議(りんぎ)を通す上では重要になるだろう。コストと言ってもさまざまな種類があるが、ここでは3つのポイントに注目しよう。

 まず1つは「ランニングコストの削減」だ。ページプリンタの場合、消耗品であるトナーやドラムの価格は、ランニングコストに直結する。これについては、プリンタの仕様欄に「カラー○○円、モノクロ○○円」と1枚あたりの印刷コストが書かれているので、そこをチェックするのが手っ取り早い。至って分かりやすい指標である。

 2つめは「消費電力の低減」だ。多くのプリンタでは、しばらく利用しないとスリープモードに移行し、消費電力を抑える仕組みになっている。つまり稼働時とスリープ時とで消費電力がまったく異なるので、同じプリンタでも使い方によっては大量に電力を消費する場合とそうでない場合とがある。それゆえ、仕様欄に記載された「消費電力」の値を単純にチェックするだけでは、実際の消費電力を把握するのは難しい。

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 こうした場合に指標としてチェックすべきなのが「TEC値」だ。TECとは「Typical Electricity Consumption」(標準的な消費電力)の略で、「テックち」と読む。単位は1時間あたりの消費電力量である「kWh」(キロワットアワー)で示す(1週間単位の「kWh/週」と表記されることもある)。

 TEC値とは大ざっぱに言うと、機器の稼働とスリープ/オフが頻繁に繰り返される5日間(つまり一般企業でいうところの営業日、月~金を想定している)と、ほぼスリープ/オフのままの2日間(土~日を想定している)の計7日間で、どれだけの電力が消費されるかを示す値だ。なるべく実環境に近い消費電力を算出するために考え出された指標といってよい。

 このTEC値は、国際的な省エネルギー製品の認定制度である「国際エネルギースタープログラム」の指針になる値でもあり、機器同士はもちろん、異なるメーカー間の製品の省エネ性能を比較する際にもってこいだ。例えば製品AのTEC値が3.0kWh、製品BのTEC値が2.4kWhであれば、後者のほうが省電力でコストに優しいと言えるわけである。

 TEC値は客観的な指標であり、メーカーとしてもごまかしがきかないことから、これを下げるのはメーカーにとっては技術力の見せどころである。例えばキヤノンのレーザープリンタ「Satera」シリーズは、セラミックヒーターで熱伝導を高める独自の「オンデマンド定着方式」を採用することで、TEC値を低減させている。

通常のローラー定着方式とオンデマンド定着方式の仕組み。オンデマンド定着方式では、熱伝導効率が高く熱容量が低い「定着フィルム」と、線状の「セラミックヒーター」を採用し、瞬時に加熱することで、消費電力を抑える(画像はキヤノン提供)

 こうした工夫を積み重ねた結果、ページプリンタという製品は外見こそこの10年ほど大きく変化していないものの、TEC値は劇的に(それこそ数分の1といったレベルで)下がっている。「新しい製品に買い替えるだけで電気代が安くなる」などと言われるのはこのためだ。もし買い替え候補の製品と、手持ちの製品とでTEC値を比較したければ、以下のサイト(国際エネルギースタープログラム)を利用するとよい。あまりの値の違いにがく然とすることだろう。

 また、TEC値の基準に適合した製品のうち上位25%だけが使用できるのが、前述の国際エネルギースタープログラムのロゴだ。それゆえ、製品間の比較を必要とせず、省電力に優れた製品かどうかをチェックするだけならば、この国際エネルギースタープログラムのステッカーが貼付されているかだけを確認するという方法もある。

「国際エネルギースタープログラム」のロゴ。PCやプリンタなどの周辺機器にこのロゴシールが貼られているのを見たことがある人は多いはずだ

 最後にもう1つ、「紙の使用量の低減」についてもチェックしておきたい。これは紙そのもののコストの話ではなく、例えば両面に印刷することで紙の使用量を半減させたり、あるいは1枚に2ページや4ページを割り付けて枚数を削減したりといった機能を指す。片面にしか印刷できない製品の場合、いかに消費電力などの値が低かったり、本体の価格が安くても、紙の使用枚数が増えることから、コストは高くついてしまう。

 むしろ現在は、両面印刷や割り付け印刷などで紙の使用量を減らす取り組みはどの企業でも実践しており、こうした中で片面印刷の資料を対外的に大量配布していると、コスト削減の意識が希薄な企業とみなされかねない。表層的な印刷コストうんぬんよりも、むしろこうした利用者側のコスト意識ほうが、はるかに深刻な問題かもしれない。

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