Surface Bookは「AppleになりたいMicrosoft」の象徴か:鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(3/3 ページ)
唐突に登場した「Surface Book」は、同時発表の「Surface Pro 4」や従来のSurfaceシリーズとは異なるインパクトをPC市場に与えそうだ。
Appleの夢を見るMicrosoft
製品の選択肢が1つしかないよりは、多様性があったほうが市場が拡大して盛り上がるのは確かだ。その意味でAppleのエコシステムよりも、Windowsのエコシステムのほうが大きいという点に異論の余地はないだろう。
Microsoftの今回の動きをフォローするなら、同社は「Windowsの多様性は否定しない」ものの、自身はOEMパートナーの動向抜きで「Appleになりたい」と考えているのではないだろうか。「iOSやOS XをライセンスするAppleのような存在」と言えば、分かりやすいかもしれない。
実際、今回の10月6日のイベントにあたって、MicrosoftがAppleを非常に意識していると思われる様子は何度も散見された。
典型的なのが、当日の製品紹介を行ったSurface担当のパノス・パナイ氏によるプレゼンテーションだ。スライドの出し方や話の流れ、ビデオやアニメーションの挿入タイミング、逐次観客に反応を尋ねるスピーチや言葉の選び方など、Appleの製品発表イベントを見たことがある人ならば誰もがそれを意識したと分かるものだった。
また、競合となる製品(MacBook)とのパフォーマンス比較や、明確に競合を意識した価格付け、そして製品の紹介にあたってAppleが好む「Re-invent(再発明)」というキーワードを用いるなど、「Microsoftから最高にクールなデバイスを発表する」と言わんばかりだ。前述のムアヘッド氏ではないが、「MicrosoftがAppleに勝つためには自らがAppleになるしかない」と同社は考えているのだろう。
恐らくは今後もSurface Bookに続く形で、Microsoftはとがったハードウェア製品をリリースし続けてくるだろう。一方でWindowsエコシステムの多様性も重視しており、その部分の開拓や市場拡大はOEMパートナー各社に任せる……というのが今後のWindows PC世界の潮流となりそうだ。この辺りは今回ハイエンド製品を発表した「Windows 10 Mobile」の世界にも通じるものがある。
不安材料としては、MicrosoftがAppleの影を追う一方で、残りの多様性を担う部分の方向性を示していないことだ。もし今後PC市場からメーカーの脱落が相次ぐようでは、Windowsの強みである多様性を失いかねない。Windows 10の製品リリースラッシュが一段落し、2016年以降のMicrosoftに期待したいのは、この部分での活躍だ。
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