国内市場で存在感を増す台湾製NAS――製品担当者が語るASUSTORの魅力:来日インタビュー
台湾ASUSTORでマーケティングを統括するアレン氏が来日。日本市場に向けた取り組みや今後の展開を聞いた。
期待されるNASの普及と、存在感を増す台湾製NASキット
総務省の発表(平成27年版情報通信白書)によれば、デジタルデータの流通量は国内だけでみても2014年に14.5EB(エクサバイト)を超えたという。IoT(インターネットに繋がるモノ)の増加によって、今後ZB(ゼタバイト)級のデータがネットを飛び交う時代は当たり前になるだろう。
私たちは膨大なデジタルデータに囲まれている。このことをライフスタイルの変化で実感している人は多いかもしれない。iPhoneに代表されるスマホの普及によって、誰もがいとも簡単に高精細な写真や4K映像を撮影できるようになった。インターネット黎明期(れいめいき)に最もポピュラーな記録メディアだったFDDで換算すると、実に数十枚分のデータが指先の一瞬の操作で生み出され、SNSを通じて瞬く間に共有されていく。写真や映像、音楽を、印画紙やフィルム、レコードといった過去の“アナログ”なメディアで所有するのは、一部の好事家のものになりつつある。
ただし、個人が持つデジタルデータの増加は、それらが一瞬で消えるリスクも伴う。子ども時代の写真を失うにしても、火災でアルバムが焼けてしまう可能性と、ある日突然HDDがクラッシュする可能性には大きな差がある。後者は残念ながら、避けるほうが難しいかもしれない。
そしてそもそも、日々作り出されていくデータを管理することさえ困難だ。様々なデバイスを使い分けている人なら、目当てのデータがどこにあるのか忘れて探し出すのに苦労した、という経験はないだろうか。スマホに撮りためた写真が空き容量を圧迫し、面倒になってすべて消してしまったという人さえいるだろう。
こうしたライフスタイルを取り巻く環境の変化から、法人だけでなく個人への普及も期待されているのがNAS(ネットワーク・アタッチド・ストレージ)だ。複数のデバイスのデータを管理・保存するのはもちろん、それぞれのデバイスでデータを共有し、ネットワークを通じていつでもどこでもNASに保存したコンテンツを活用したり、冗長性の高いRAID構成によってデータ消失の可能性を低減できるメリットがある。
そして、NASの中でも昨今注目されているのが主に台湾メーカーが手がける「NASキット」と呼ばれる製品である。国内NAS市場はこれまでバッファローとアイ・オー・データ機器がほぼ二分する形だったが、一方のNASキットはHDDが別売であり、将来的な増設も含めてユーザーが柔軟に容量を選べ、拡張アプリによって機能を追加できるという特徴が受けて、急速に存在感を増しつつある。
今回、台湾ASUSTORでマーケティングを統括するアレン氏の来日を機に、ASUSTOR製品の魅力や日本市場における今後の展開について話を聞いた。
高コスパを武器に日本市場の攻略を目指すASUSTOR NAS
ASUSTORは2011年に設立された新興メーカーだが、実は老舗のNASメーカーの技術者たちがスピンアウトし、ASUSTeKグループの資本を受ける形で立ち上げた、いわば“熟練の新興NASメーカー”である。日本市場に参入してからは約3年、販売代理店のユニスターと協業し、国内でもAmazonなどでNASカテゴリのトップ10に入る人気の製品を投入している。
―― 日本のNASキット市場では、同じく台湾メーカーであるQNAPやSynologyも有名です。これらに比べてASUSTOR製品はどこにアドバンテージがありますか?
アレン氏 まずコストパフォーマンスの高さが一つある。競合メーカーと同価格帯の製品を比べたときに、通常は高性能なモデルにしかないHDMI出力端子を、ASUSTORはそれよりもずっと安い価格帯のモデルから提供している。
これに関連して、ASUSTOR製品は特にマルチメディア機能に力を入れている。動画をダイレクトにエンコードしてどこでも視聴でき、クアッドコアのCeleronを搭載したモデルならば4K映像の再生や光デジタル音声出力による高音質環境を利用できる。日本のユーザーは高品質なビデオやオーディオ好むので、DACを挿してdsd形式のハイレゾ音源を再生できる点は魅力だろう。
また、マルチメディア機能の拡張でNetflixをはじめとするビデオサービスプロバイダーにも対応している。例えば、PCオーディオ向けのNASとしては、10年以上日本で展開してきたQNAPが先行しているのは事実だが、ビデオ活用という視点ならマーケットをリードできると考えている。2016年後半には対応プロバイダをさらに拡充する予定だ。
デザイン性の高さも注目して欲しいポイントの1つで、新しいモデルはホームユースを想定して前面にダイヤモンドプレート加工を施したインテリアになじむデザインを採用した。競合に比べ、コストパフォーマンスが高い、理想のホームマルチメディアサーバになると自負している。
―― 具体的にどんなユーザー層を想定していますか?
アレン氏 法人から個人までフルラインアップをそろえているが、個人向けでいうなら大きく二つに分けられる。Intel製CPUを搭載する高機能なモデルは、先に紹介した機能をすべて使いたいと考えるヘビーユーザー。これはSOHO/SMBでの活用も十分な性能を持つ。
そしてもう1つがARM系CPUを採用するエントリーモデルで、こちらはパソコンを持っていない人でもモバイルアプリでNASをコントロールし、タブレットやスマホで活用できる初心者向けの製品。OSが同じため基本的な機能や使い方は共通なので、将来ステップアップして高機能なモデルに乗り換えるのもスムーズだ。
―― 日本市場での立ち位置と、日本ユーザーに向けた取り組みを教えてください。
アレン氏 日本は国内ブランドの2強体制が約8割の市場を占める特殊な市場だが、グローバルで見ても影響力は大きい。参入してから3年が経過してASUSTORの認知度は上がっているものの、現在は残り2割のNASキットカテゴリの中で、シェアが6%から8%といったところだと思う。
ただし、最近では日本のユーザーのフィードバックを受けて、DTCP-IPに対応したのがトピックだ。日本ではテレビ番組の録画先にNASを使いたいという要望が強く、国内ブランドのNASでなくても、テレビレコーダーとして活用できるようになったという点は大きいと考えている(関連記事:「見たら消す!」「消さない!」戦争に終止符――sMedio DTCP MoveでNASを地デジ番組ライブラリに)。
―― 今後の展開について。
アレン氏 ASUSTORはハードウェアの企業で、まず第一に安定性や性能も含めた品質を優先している。そのうえでOSがアップデートしていくので、仮に競合との機能差があってもキャッチアップして埋めていくことができる。
また、ほんの10年前は企業向けだったNASが今や家庭で普及し始めていることを受け、誰もが使えるようにシンプルな製品を目指している。例えば、たった5ステップで設定できるといったユーザー体験の部分だ。
直近でコンシューマー向け製品のトピックはソフトウェア面での強化だけだが、ユニークなアプリがいくつか追加されるはずだ。例えば、囲碁やチェスといったゲームがHDMIを経由してテレビで楽しめるようになる。
―― ゲーム機のエミュレーターも拡充される?
アレン氏 有志が作るアプリの中にはそういうものがあるかもしれない。私個人としては詳しいことは言えない(笑)
とにかくASUSTOR NASは、ソフトウェアによって機能が強化され、新しいアプリが追加され、常に進化していくNASだ。高いコストパフォーマンスを武器に、国内シェアのNASキットというカテゴリの中で、2ケタのシェア、アグレッシヴな目標として15%を目指していきたい。
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