シャープがビジネスチャットツール「LINC Biz」を事業化する理由:そろそろ会議やめませんか(1/2 ページ)
AIoTクラウドが手がけるビジネスチャットツール「LINC Biz」は、シャープの社内ツールを外販したものだ。そのアドバンテージや今後の展開を聞いた。
ビジネス上、必要な対話のために、メールなどでなく「ビジネスチャット」を使う企業は多い。日本ではまだ普及期だが、それでも、SlackやMicrosoft Teams、LINE Businessを使う企業は珍しくない。
そこに、あえて日本の大手企業が参入した。その企業とはシャープだ。その子会社である「AIoTクラウド」が、シャープ社内で使うために開発したビジネスチャットツール「LINC Biz」の社外提供を開始したのだ。
ビジネスチャットツールは、多くの企業が参加するレッドオーシャン市場に見える。シャープやAIoTクラウドが、そこに参入する理由はどこにあるのだろうか?
シャープで磨いたビジネスチャットを社外提供
LINC Bizは、ビジネスチャットとビデオ会議を組み合わせて使うことを前提としたツールだ。スマートフォンやタブレット用アプリも用意されているが、基本的にはWebブラウザ上から使うものだ。
料金は「ゼロ円」から。2019年末現在、有料プランはスタートしていないが、1月中旬をめどに、ユーザーあたり月額350円のプランがスタートする。有料プランに移行すると、利用できるチャンネル数の制限やビデオ会議の同時利用数などの制限がなくなる。
画面を見ると分かるが、簡単にいえばLINC Bizは、SlackやTeamsのクローンに見えるサービスだ。特にSlackに近く、ユーザーインタフェースにあまり特殊性はないように思える。
LINC Bizは、シャープが社内で使うために開発したものを、その運用部門であり、シャープのIoT関連インフラ開発を手がけている「AIoTクラウド」がビジネス化するものだ。実際シャープは、LINC Bizをもう1年以上、200人単位の事業部の中で、国内外の拠点間でのビジネスチャットツールとして使っている。シャープが社内で磨いたツールをビジネスとして外にも切り出す、という形と考えていい。
なぜシャープはわざわざLINC Bizを開発したのだろうか? AIoTクラウドの赤羽良介社長は、「社外のものはコストもかかり、使い勝手の面で満足できなかったから」と話す。
シャープでも、以前はメールが社内コミュニケーションの主軸だったが、部門や企業をまたぎ、横断的にコミュニケーションする際など、さすがに今では問題も出てきた。そこでビジネスチャットツールの導入を検討したのだが、どれもシャープのニーズには合わなかったのだという。
特に彼らが強調するのは、「ビデオ会議とビジネスチャットのつながり」だ。LINC Bizの場合、ビジネスチャットから簡単にワンクリックでビデオ会議に移行し、各種文書ファイルやデスクトップ画面を共有しながら会議ができる。
シャープとAIoTクラウドは、LINC Bizについて、2020年に1万ユーザーの法人顧客獲得を目指している。特に狙うのは「300人未満の中小企業」だ。ポイントは、価格と簡便さにある。
前述のように、LINC Bizは有料のプランと無料のプランがある。無料のプランでは、クラウド側にデータを保存できる容量が少ないことなどに問題はあるし、ビデオ会議でつなぐ場所が3拠点までに制限される、という限界はある。
だが、ごく小さな組織で扱うなら、無料版でも使えないことはない。有料版であっても価格は月額350円と、Slack(1ユーザー月額850円から)やMicrosoft Teams(1ユーザー月額540円から)より安い。シャープの言うとおり、ビデオ会議までインテグレーションされていてシンプルに使える、というのは美点の1つといえる。
350円はかなり安価だが、「この価格でも十分に利益に出ると見込んでいる」(AIoTクラウド・赤羽社長)という。
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