ビジネスには第11世代Core vProプロセッサ(Tiger Lake)が適任? インテルが説明
インテルが第11世代Core vProプロセッサ(開発コード名:Tiger Lake)の説明会を開催した。ビジネスでTiger Lakeを使うメリットはあるのだろうか。
インテルは2月9日、第11世代Core vProプロセッサ(開発コード名:Tiger Lake)に関する説明会を開催した。
セキュリティ対策を強化 ラインアップは4種類
第11世代Core vProプロセッサは、第11世代Coreプロセッサ(開発コード名:Tiger Lake)をベースに以下の機能を追加したものだ(※印の付いている機能はこの世代から新規搭載)。
- 「Intel Hardware Shield(IHS)」によるランサムウェア/クリプトマイニング攻撃遮断機能(※)
- IHSによるアプリとOSの保護機能(※)
- クラウドベースのリモート管理機能
CPUのラインアップは、UP3(旧来の「Uプロセッサ」に相当)とUP4(旧来の「Yプロセッサ」に相当)でそれぞれ2種類ずつ用意している。
UP3(オペレーティングレンジ:12~28W)
- Core i5-1145G7(2.6GHz~4.4GHz、4コア8スレッド、GPU演算ユニット80基)
- Core i7-1185G7(3GHz~4.8GHz、4コア8スレッド、GPU演算ユニット96基)
対応するメインメモリの規格は、DDR4-3200またはLPDDR4X-4266となる。
UP4(オペレーティングレンジ:7~15W)
- Core i5-1140G7(1.1GHz~4.2GHz、4コア8スレッド、GPU演算ユニット80基)
- Core i7-1180G7(1.3GHz~4.6GHz、4コア8スレッド、GPU演算ユニット96基)
対応するメインメモリの規格はLPDDR4X-4266のみとなる。
第10世代(Comet Lake)からパフォーマンスが向上
Tiger Lakeは第10世代Coreプロセッサ(開発コード名:Ice Lake)をベースに機械学習ベースのAI(人工知能)の処理速度を向上し、内蔵GPUを「Intel Xeアーキテクチャ」ベースに移行することでグラフィックス性能やGPUを使ったAI処理性能を改善した。
同アーキテクチャに属する第11世代Core vProプロセッサは、第10世代Coreプロセッサ(開発コード名:Comet Lake)から「脅威的な性能進化」を果たしているという。インテル社内で実施したCore i7-1185G7とCore i7-10610U(1.8GHz~4.9GHz、4コア8スレッド)の比較テストでは、パフォーマンスの向上を以下の通り確認できたとのことだ。
- アプリケーション処理性能:最大1.19倍
- ビデオ会議中の生産性:最大1.35倍
- Webブラウジングのパフォーマンス:最大1.21倍
- Office 365における生産性:最大1.17倍
- AI性能:最大8倍
- ビデオ編集のパフォーマンス:最大2.3倍
Comet Lakeにはない機械学習用の命令やGPUの性能向上によって、特にAI処理とビデオ編集の処理性能の伸び幅は大きくなっている。その他の処理でも、ベースクロックの向上によって性能の底上げを果たした様子が伺える。
競合のAMDはモバイル向けのRyzen 5000プロセッサを発表している。このプロセッサはシングルコア性能やバッテリー駆動時のパフォーマンスを向上したことが特徴だが、vProプロセッサと競合することになる「PROプロセッサ」はまだ世に出ていない。
そこでインテルは、モバイル向けRyzen 4000シリーズのPROプロセッサで最上位となる「Ryzen 7 PRO 4750U」(1.7GHz~4.1GHz、8コア16スレッド)とCore i7-1185G7を比較した。すると、Ryzen 7 PRO 4750Uを基準としてCore i7-1185G7は以下のようなパフォーマンスを発揮したという。
- アプリケーション処理性能:最大1.38倍
- ビデオ会議中の生産性:最大1.52倍
- Webブラウジングのパフォーマンス:最大1.24倍
- Office 365における生産性:最大1.23倍
- AI性能:最大5倍
- ビデオ編集のパフォーマンス:最大1.8倍
Ryzen 7 PRO 4750UのCPUコアとスレッドの数は、Core i7-1185G7の2倍だ。しかし現代における「実際の利用環境」に即してテストをすると、半分のコアとスレッドしか備えないCore i7-1185G7の方が性能がよいということをアピールした格好だ。
「Evo vProプラットフォーム」も登場
第11世代Core vProプロセッサの登場に合わせて、インテルは新たな認証プログラム「Evo vProプラットフォーム」を開始した。既存の「Evoプラットフォーム」の要件に加えて、vProプラットフォームの要件を満たしたノートPCに認証が与えられる。
参考として、Evoプラットフォームの主な要件を列挙する。
- CPU:第11世代Core i5/i7プロセッサ
- メインメモリ:8GB以上のデュアルチャネル(帯域幅は128bit)
- ストレージ:256GB以上のPCI Express(NVMe)接続SSD
- ディスプレイ:12~15型台、解像度はフルHD(1920×1080ピクセル)以上
- スリープ仕様:コネクテッドスタンバイ(モダンスタンバイ)
- ログイン認証:生体認証(顔/指紋)またはBluetoothを使ったスマートフォンとの近接認証
- 音声認識:遠距離からのコントロールに対応
- 充電:USB Type-C経由の高速充電(USB Power Delivery)
- 無線LAN:Intel Wi-Fi 6(Gig+)モジュールの搭載
- 接続ポート:Thunderbolt 4の搭載
EvoとvPro両方の要件を満たす必要があることから、Evo vProプラットフォームを取得するためのテストは「(PCメーカーにとって)非常に難易度の高い」ものとなる。しかし、認証を取得できたノートPCは「IT部門のニーズと卓越したモビリティーを実現する、最高峰のエンタープライズPC」というお墨付きをインテルから得たということになる。
信頼性と性能を両立したビジネスPCが欲しいのであれば、Evo vProプラットフォームのロゴを目印に選ぶようにするとよいだろう。
関連記事
Intelが第11世代CoreとEvoプラットフォームのvPro対応を発表――次世代CPU「Alder Lake」の実働デモも
Intelは1月11日(現地時間)、第11世代CoreおよびIntel EVOプラットフォームのvPro対応を正式に発表した。また、次世代CPU「Alder Lake」(開発コード名)の実働デモも行った。「Tiger Lake」×「Iris Xe MAX Graphics」はなぜ速い? インテルが説明
Intelが久しぶりの外部GPU製品として発売した「Iris Xe MAX Graphics」。Tiger Lakeと協調動作することでより高速に動作することが特徴だ。その仕組みを、日本法人であるインテルが説明した。Intelがモバイル向け「第11世代Coreプロセッサ(Tiger Lake)」を正式発表 パフォーマンスをより改善
開発コード名「Tiger Lake」の新型Coreプロセッサが正式発表された。CPUとGPUの双方をパワーアップし、処理能力を改善していることが特徴だ。第11世代Coreプロセッサ(Tiger Lake)の性能は「PCメーカー次第」 どういうこと?
近いうちに搭載ノートPCが出る予定である「第11世代Coreプロセッサ」(開発コード名:Tiger Lake)。実は、同じCPUを搭載していても、メーカー(あるいはモデル)によって性能に差が生じる可能性があるという。どういうことなのだろうか。【画像差し替え】Intelが教育市場向けのPentium SilverとCeleron N(Jasper Lake)を発表
1月11日(現地時間)、Intelは開発コード名「Jasper Lake」の教育市場向け新プロセッサ「Pentium Silver」「Celeron N」シリーズを発表した。発売は2021年第1四半期の予定だ。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.