Office 2021と日本市場 永続とクラウドのはざまで:Windowsフロントライン(2/2 ページ)
Microsoftから、コンシューマー向けの「Office 2021」とエンタープライズ向けの「Office LTSC」の投入がアナウンスされた。ここから見えてくる、サポートライフサイクルや日本での動向を見ていこう。
消えないオフライン体験
サポート期間が大幅に削られてはいるが、Office Perpetualのように継続的にリリースされ続けるのも、それだけ非クラウド環境に対するニーズが根強く残っていることの裏返しでもある。
強引なようでいて、一定数存在する潜在的なニーズについては末永くサポートしていくのもまたMicrosoftらしいところだが、今回のOffice 2021とOffice LTSCの発表にあたって記したBlog投稿の冒頭には次のような文言が踊っており、「クラウドの方がいいんだけど、どうしてもという顧客が……」という言い訳にも聞こえるメッセージが込められている。
At Microsoft, we believe that the cloud will power the work of the future. Overwhelmingly, our customers are choosing the cloud to empower their people?from frontline workers on the shop floor, to on-the-go sales teams, to remote employees connecting from home. We've seen incredible cloud adoption across every industry, and we will continue to invest and innovate in the cloud as we partner with organizations everywhere to build the best solutions for the new world of work. But we also know that some customers just feel that they can't move to the cloud despite the widely embraced benefits.
実際のところ、現在のWindowsとOfficeはクラウド中心に作業が行われるように機能が“寄せられ”つつあるが、単純に従来の仕事環境を維持したいからという欲求だけでなく、何らかの形で直接インターネットとの接続を避けなければいけない業務というのは存在する。
例えば製造現場におけるラインの制御であったり、開発室などでネットワークが業務部門と隔離されているケースであったりだ。先ほどのOffice LTSCも、全社的に導入するというよりも、比較的大きな組織において特定の部門やマシンなどに導入が必要ということの方が多いだろう。
同様にOffice 365の考えにのっとれば、メールやストレージなどの機能もクラウド側に置くことになるが、当然企業によっては外に出したくないこともあるだろうし、法的なルールで自社のデータセンターでの運用が必要になるケースなど、オンプレミスでの運用が前提となることがある。
「ハイブリッドクラウド」のような言葉もあるが、全てがクラウドで解決するとはMicrosoft側も考えておらず、必要に応じて必要な製品とソリューションを提供できることが大事だと認識しているはずだ。だからこそ、今後もまだ継続的にOffice 2021のような製品が登場してくると予想できる。
最近のデータが入手できていないので、どの程度の比率かは分からないのだが、日本ではOffice Perpetualのような製品が人気だといわれる。PC販売では多少高価でもOfficeライセンス付属の方が人気があるとのことで、これを購入してそのまま企業のオフィスや家庭で仕事マシンとして活用するのだ。
ビジネス利用可能なコンシューマー版Office 365が出てもこの傾向はさほど変わらなかったといわれ、他国に比べてもOfficeライセンスの販売が好調とされていた。ゆえに、Office 2021が登場したとして、真っ先にターゲットになるのは日本市場なのではないかとも筆者は考えた。
だが、2021年1月に発表されたMicrosoft会計年度で2021年度第2四半期(2020年10月~12月期)決算によれば、「Office Commercial(ビジネス向け)製品はオンプレミスからクラウドへのシフトと契約数減で売上減少だが、日本においては前年比で非常に好調」「Microsoft 365 Consumerサブスクリプションは日本において前年比で非常に好調」と非常に真逆の結果が出ている。
この説明をそのまま受け取るなら、コンシューマー向けではクラウドが伸びる一方で、企業向けではOffice Perpetual購入が相次いだという風に読み取れる。コロナ禍でWFH(Work From Home)体制が拡大し、従業員はMicrosoft 365 ConsumerのライセンスがついたPCを買い求める一方で、企業は業務領域拡大のためにOffice Perpetualライセンスを買い求めたということで、目指すところは一緒でもその手段は異なっている。
関連記事
Microsoft、非クラウドの「Office 2021」を今秋発売へ
Microsoftが、Office 365ではない非クラウドのオフィススイート「Office 2021」を今年後半に発売すると発表した。価格は「Office 2019」と同じになる見込みだ。Chromeのデフォルト検索エンジンがBingになるOffice 365 ProPlusアップデートに集まる批判の声
Microsoftの対応に批判が集まっている。その理由は何だろうか。細かく見ていこう。【タイトル変更】Windows 7と10を取り巻く最新動向 「サポート終了」通知を表示
2020年に延長サポートが終了するWindows 7やOffice 2010と、Windows 10を巡る最新動向をまとめてみた。Microsoftが「Office 2019」よりも「Office 365」をプッシュする理由
Microsoftのオフィススイート永続ライセンス版「Office 2019」が発売されたが、同社自身でクラウド版の「Office 365」をプッシュする動きが顕著だ。Windows Virtual Desktop、Office 2019、そして…… 変化するMicrosoftの戦略
MicrosoftはAIとクラウドへの注力に伴い、WindowsとOfficeの戦略を柔軟に変えつつある。WindowsとOfficeの新製品・サービスをまとめつつ、同社の狙いを考える。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.