ノートとしてMaxな性能を持つ新型MacBook Pro その速さの秘密に迫る:新たなる表現者の出番を待つ(2/4 ページ)
Appleが10月18日(米国太平洋夏時間)に行ったスペシャルイベントでは、今後のPCに大きな影響を与えるであろう発表が行われた。その内容を林信行氏が読み解いた。
Mac Proや数百万円の業務用PCを過去の遺物に変える化け物級の性能
続いて行われたMac関連の発表は、驚がくの内容だった。Macの性能は毎年上がるため、その都度「驚異的な性能」といった形容がされる。例年、この性能アップはプロセッサの性能向上の結果であり、ある意味、順当に成長した結果、その性能が「驚異的」だったと言っているのに過ぎない。
ところが、今回はそもそもの出発点が異なる。Appleはデザインとバランス感覚の優れた会社だ。デザインとは製品の設計を何かの狙いに合わせて決めていくことだが、その狙いが分かると製品に対しての理解がより深くなる。
では、今回の新製品でのAppleの「狙い」は何かというと、ノートPCというカタチの中に、「もはや、これ以上はない」というMaxの技術を詰め込むことだったようだ。
Appleは、このゴール設定のために、M1 Maxという、M1チップの速さの秘密を最大限に拡張したチップを開発。そのチップの性能を最大限に生かせるように、PCの内部構造も搭載機能もゼロから見直した。
その結果、誕生したのはAppleが「化け物」と呼ぶ性能を持つ製品だ。
例えば8K映像の編集だ。映像編集に詳しくない人は、ぜひ検索サービスでぜひ「8K映像 編集システム」といったキーワードで検索をして見てほしい。家庭用TVでおなじみの4K映像の4倍となる画素数の8K映像は、多くのノートPCではまともに再生できず、それだけでも凄いことだ。
さすがに、ノートPCで8Kのディスプレイを持つ市販製品はないので、外付けディスプレイの接続は必須だが、その上で通常は画像を再生するだけでも、GPU BOXという外付けのユニットが必要になることが多い。ノートPC単体で実現しているものもあるが、その場合は電力消費が大きく、実質、持ち運べはするもののバッテリー動作はあまり期待できない。
これまで編集システムの多くはデスクトップ型だが、本格的な編集をうたう製品となると、検索してもらうと数百万円代のシステムも珍しくないのが分かるだろう。
ところが、新しいMacBookでは、これが楽々できてしまうという。しかも、8K映像の中でも動画版のRAWファイルといえる画像劣化が少ない分、情報量が多くて処理の負荷が大きいProRes画質の8K動画を7本同時に再生できるのだというと「化け物」という形容もあながち嘘ではないことが分かってもらえると思う。
Appleは2017年、プロのクリエイターの性能要求にきちんと応えると宣言した。2019年に正面がメッシュになったステンレスボディーのMac Proを発表し、ここにIntelプロセッサで出せる最高の性能を詰め込んだ。
さらに2020年、そのMac Proのビデオ編集性能をさらに向上させるAfterburnerという22万円のアクセラレーターカードを発売しており、これまではAppleが提供する8Kビデオ編集環境としては、この組み合わせが最強だった。
しかし、今回のM1 Maxを搭載したMacBook Proは100万円を大きく下回る価格で、このMac ProとAfterburnerの組み合わせの性能すらも軽々と超えてしまったのだ。
もちろん、プロのクリエイターといっても、ここまでの性能を使い切れるのはほんの一握りだ。そこでAppleは、よりバランスの良いM1 Proというチップも合わせて開発した。
M1 Proは、取り扱うデータが小さな汎用(はんよう)処理(例えばXcodeでプログラムをコンパイルなど)での性能はM1 Maxとほぼ変わらない性能を発揮する。
映像処理に関しても、動画の圧縮などを高速化するメディアエンジンと呼ばれる機構が組み込まれるなどして十分高い性能を発揮するが、映像のプロ達の一般的な使い方を想定している。これに対して、これまで想像もしていなかったような新たなチャレンジを生み出しそうなのがM1 Max、そんなバランスポイントのようだ。
なお、新しいMacBook Proが得意なのは映像処理だけでなく、3D関連の処理や機械学習の処理も圧倒的に高速だ。ただし、どの処理が何倍速いといった数字の羅列をしてもきりがないので、そうした比較は公式ホームページや他の記事に任せて、この記事ではそもそもMacBook Proは、何でこんなに桁外れのパフォーマンスを実現できていたのかに迫りたい。
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