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「M1 Pro」「M1 Max」は結局どこが違って何が進化したのか 極めて合理的なAppleの選択本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/4 ページ)

MacBook Proのモデルチェンジとともに登場したAppleの新チップ「M1 Pro」「M1 Max」。飛躍的に性能が向上したというが、その内部構造から秘密に迫る。

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拡張カードなしで高性能を発揮する「メディアエンジン」

 一方で新しい処理回路も加わっている。それが「メディアエンジン」だ。Appleは、ProRes(RAWも含む)のエンコード・デコード、HEVCやH.264のエンコード・デコードなどを行う専用処理回路のことをメディアエンジンと呼んでいる。

 メディアエンジンの回路構成は、M1 Proのダイ上ではGPUコア(上部中央あたり)の右にある。この回路パターンはM1には見られなかったもので、なかなか大きな面積を専有しているのだ。

 そして同じパターンがM1 MaxでもGPUコア(上部中央あたり)の右にあるが、動画のエンコードエンジンがM1 Proに比べて2倍に拡張されているのが分かる。つまりエンコード速度はM1 MaxがM1 Proの最大2倍となる。

M1 Pro
M1 Proのメディアエンジンはダイの右上に配置されている(発表会の配信動画より)
M1 Max
M1 Maxのメディアエンジン。M1 Proと異なり、エンコードエンジンを2基搭載する(発表会の配信動画より)

 こうした動画に特化したアクセラレータは過去にも存在し、例えばMac Pro向けには22万円で「Afterburner」というPCI Express接続の拡張カードが提供されている。

 ところが新しいMacBook ProではM1 Maxを搭載したモデルならば、28コアのIntel Xeon WプロセッサにAfterburnerを加えたシステムよりも高スループットとなり、ProRes RAWの再生を同時に7ストリーム可能になるという(Afterburnerは最大6ストリーム)。

 これはPCI Expressというボトルネックを通じてCPU、GPUが協調動作し、アクセラレータも同じインタフェースで接続されるという、一般的なコンピュータのアーキテクチャに対する、SoC+共有メモリというM1 ProとM1 Maxのメリットが生きている部分といえる。

Afterburner
Mac ProとPCI Expressで接続して利用する拡張カードの「Afterburner」

電力あたりの高性能をM1 Pro・Maxでも追求

 このようにM1 ProとM1 Maxは、M1の特徴をそのままに、より洗練され、オーバーヘッドが起きないよう配慮しながら並列化、メモリ帯域の拡大を進め、さらに動画処理に特化した処理回路を加えたものだ。省電力の面に関しても、恐らくはM1と同レベルか、さらに進んだ省電力制御が加わっているだろう。

 iPhone向けのSoCにもいえることだが、処理回路の動作速度は個別に制御されており、搭載する製品の熱設計や使用目的ごとに各パートの処理能力が最適化されている。このため「最大何GHz」といった評価はあまり意味がなく、14インチと16インチのMacBook Proでの性能の違い、あるいは長時間の高負荷テストでの性能の変化がどうなるのかが興味深いところだが、こればかりは実際の製品で確認したい。

 AppleがM1で主張した省電力性能は、そのまま額面通りに実現されていたことからも、M1 ProとM1 Maxのノート向けでは異常なほどの高性能も、冷却性能を上げたというMacBook Proの熱処理能力で十分に引き出すことができそうだ。

MacBook Pro
新MacBook Proの冷却システム。前世代のモデルより低速なファン速度で50%多くの空気を流せるとする(発表会の配信動画より)

 M1は10W程度の熱設計電力(TDP)にスイートスポットがあり、これが15W以上になっても(連続の高負荷では差は出るが)大幅な性能差はあまり感じられなかった。これがM1 ProとM1 Maxではどの程度のところになるのか、個人的には興味深い。

 恐らくM1 Proなら28Wの13インチMacBook Pro従来モデルと同等の熱設計でも、ほとんど冷却ファンは必要ないかもしれない。M1 Maxがフル稼働する場合でも、40W以下でハンドリングでき、さらにそれ以上、50Wの熱処理枠があれば持続的なパワーを発揮できるといったところだろうか。

 一方で16インチMacBook Proは付属のACアダプターが大型化し、140Wになっていることに気付いている方もいるだろうが、新しいMacBook Proはバッテリー残量がゼロの状態から30分で50%まで急速充電できるようになっている。動作中にもその充電速度を維持できるよう余裕のあるアダプターになっているためだ。

M1 Pro・Max
16インチMacBook Proに付属する140WのACアダプターとMagSafe 3ケーブル

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