死後に困らない&困らせないアレコレをスマートに託せる「lastmessage」:古田雄介のデステック探訪(2/2 ページ)
自分が死んでしまった際にメッセージを発信したり、抹消したいIDを消したりといったことを託せるサービスが増えている。しかし、利用者との約束を果たさないまま姿を消すサービスも多い。2020年3月に提供を始めた「lastmessage」はどうなのだろうか?
15~40年後を考えなければならないサービス
ユーザーの属性を見ると、年齢別では55~64歳が最も多く、45~54歳が次に続く山をなしているという。性別は男女がほぼ拮抗しているそうだ。
この割合のまま推移すると仮定すると、発動のピークを迎えるのは日本人の平均寿命(男性81.47歳、女性87.57歳)から単純計算しておよそ15~40年後ということになる。その頃までサービスが終了することなく、この仕組みを維持していけるのか。サービスの特性上、ここが大きなポイントとなる。
同社の取締役を務める牛越裕子さんは「継続はこのサービスの肝ですので、楽天カードさまや産経新聞社さまと提携をしています。もし、当社に何かあった場合にも、ライセンス先の企業さまに引き継いでいただけるような状態を作り上げていくようにいたします」と語る。
自社の命脈だけを頼りにすると、数十年先の継続を実現するのは難しい。そのためにさまざまな業界の企業と提携することで、複数本の命綱を作る考えだ。年内に提携先を5社に増やす予定もあるという。
lastmessageは、代表取締役の山村幸広さんの着想が起点になっている。
「師匠として慕っていた人が、亡くなられたことがきっかけです。病院にかけつけたときには何をおっしゃっているのか聞き取れない状態でした。最期の言葉を聞きたかった」と語る。
競馬やゴルフなど、趣味の世界で懇意にしていた“師匠”が75歳で亡くなったのは8年前。法的な遺言とは別に、手元にあるスマホやパソコンで安価で簡単に情報やメッセージを伝えられるサービスが必要だ。そう強く思い、2019年までにプロトタイプを完成させた。
サービスに込めた思いは、ユーザーの最期の言葉が望む相手に届けられてはじめて成就する。実現するためには数十年機能するレールを敷き続けることが重要だ。
2020年3月に正式リリースした後も継続的に機能を追加したり、社外との連携を増やしたりしているのは、そういったコンセプトを裏付けてもいる。デステック系でも、提供開始から数カ月してプレスリリースさえ打たなくなるサービスは残念ながら少なくない。
lastmessageが、そのようなケースとは一線を画するのは確かだ。
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