死後に困らない&困らせないアレコレをスマートに託せる「lastmessage」:古田雄介のデステック探訪(1/2 ページ)
自分が死んでしまった際にメッセージを発信したり、抹消したいIDを消したりといったことを託せるサービスが増えている。しかし、利用者との約束を果たさないまま姿を消すサービスも多い。2020年3月に提供を始めた「lastmessage」はどうなのだろうか?
入念な死亡確認でラストメッセージを送信する
自分が死んだとき、仕掛かり中の仕事や金銭がらみのことで家族や仲間を困らせたくないし、知られたくない持ち物のことは、やっぱり死後も知られずにいたい――。
ごく当たり前の願望ながら、実現は簡単ではないことも多くの人は知っている。自分がいつ死ぬか分からないし、死後には自分は何もできないからだ。
前者は解決しようがないにしても、後者は信頼できる誰かに情報伝達だけでも委ねることができたら何とかなるかもしれない。「lastmessage」(ラストメッセージ)はその“誰か”になってくれるサービスといえる。
lastmessageは、ITベンチャーのパズルリングが2020年3月に正式リリースしたWebベースのサービスだ。会員登録を行うと、自分の死後に特定の相手に送信する「ラストメッセージ」を設定したり、そのメッセージにスマホのパスワードや銀行口座といった重要な情報を添付したりできる。
会員登録や1通のラストメッセージの設定などは無料で利用できる。月額110円(もしくは年間契約で990円)の有料プランに入ると、2通目以降のメッセージが登録でき、指定したサービスの死後解約の代行も依頼できるようになる。なお、後述の他企業提携タイプは料金体系やキャンペーン適用は異なる場合がある。
死後解約の代行は、ユーザーの死後に「ID パスワード管理・削除ボックス」に登録したIDやパスワードを使って、同社が指定サービスを解約するというものだ。自分が死んだら抹消してほしいSNSやブログ、支払いを止めたいサブスクサービスなどがあれば重宝しそうだ。ちなみに、最大30件まで登録できる。
その他、「やりたいことリスト」をメモするメニューや、親子での話し合いを後押しする機能なども無料で提供しており、2022年12月には公正証書遺言の作成をサポートする有料オプションも追加した。ラストメッセージの発動を基本線に、生前と死後に関わる気になることを総合的に手助けするツールが多数そろえられている。
入念な死亡確認システムで死後発動を手がける
さて重要なのは、死後を委ねられるかという信頼性だ。どれだけ機能が充実していても、死亡確認が曖昧なまま放置されたり、発動までに期間が長く空いたりしてしまうようなら安心できない。
lastmessageは「終焉日確定プロセス」という独自の発動システムを採用している。チャート図の通り多重のチェックを盛り込んだシステムで、サービスに一定期間ログインしないユーザーには、まず生存確認のプロセスを実行する。
生存を確かめるメールを1週間ごとに3回送り、それでも反応がなかったら会員登録時に入力された電話番号にスタッフが連絡する。それでも安否が確認できない場合は死亡確認プロセスに移行する仕組みだ。
ユーザーが死亡確認の協力者(トラスティ)を指名している場合は、トラスティにスタッフから連絡が届く。トラスティと連絡が取れて死亡が確認されたら各種の設定を発動する。トラスティと確認がとれない、もしくはユーザーがトラスティを指名していない場合は、死亡確認プロセスに移行した3カ月後に発動する。
2023年1月までにラストメッセージを発信した実績は6件あり、保管しているメッセージは376件に及ぶ。それらの生存確認プロセスも継続しており、現状ではトラブルもなく安定したサービスが提供されている様子だ。
関連記事
- 自分にとっての「終活のポイント」を診断できる「はなまる手帳」が社会問題の解決をゴールにした理由
家族の介護やお墓、実家の不動産の扱いといった将来考えなければならない問題を、少しのインプット作業で自動診断してくれる。そんな「はなまる手帳」が立ち上がったのはコロナ禍中のことだった。 - フリーソフト「死後の世界」が19年以上も現役であり続ける理由
前回のログインから一定時間が過ぎたら、あるいは期日指定で特定のフォルダーが削除できる「死後の世界」。Version 1.00が完成して以来、19年以上も提供を続けている。息の長いこのフリーソフトはどのように作られ、管理されてきたのだろうか。 - コロナ禍はデジタル終活にどう作用するのか――「第4回 デジタル遺品を考えるシンポジウム」レポート
もし自分が突然この世から去った場合、スマートフォンやタブレット、PCの中身はどうなるのか。残された人たちはどうすればいいのか。今何ができるのか、何をしなければならないのかを考えるシンポジウムがオンラインで開かれた。その模様を振り返る。 - そのスマホ、形見になる? 供養される? 第3回「デジタル遺品を考えるシンポジウム」レポート
故人のデジタルデータはどう扱うべきだろうか。 - スマホのデータを残して死ねますか? 「第2回デジタル遺品を考えるシンポジウム」レポート
デジタル遺品依頼の7割はスマートフォンが対象――聞いたことがあってもイマイチ実態がつかめない「デジタル遺品」。そのガイドラインを作ろうというシンポジウムが開かれた。語られた現状は意外? 想定内?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.