VAIOは成長フェーズへ PC事業への回帰で周辺デバイスやリファービッシュ品も投入 VAIO Pの後継モデルも!?:IT産業のトレンドリーダーに聞く!(VAIO 後編)(3/4 ページ)
コロナの5類感染症変更など、世の中の環境、経済状況や社会情勢が激変する昨今。急激な円安に伴う物価の上昇が続く中で、IT企業はどのような手を打っていくのだろうか大河原克行氏によるインタビュー連載のVAIO 後編をお届けする。
国内シェアは最低でも5%を目指す 海外ビジネスは1度リセット
―― 市場シェアという観点での目標はありますか。
山野 「定番」と呼ばれるPCをラインアップするわけですから、シェアは1つの指標になります。現在、個人向けPCでは約1%、法人向けPCは2%だったものが、ここにきて3.5%程度に拡大しています。最低でも5%のシェアを獲得したいと思っています。
―― 海外事業についてはどんな取り組みを進めていきますか。
山野 ソニーから独立後、海外ビジネスは限定的な展開に留めています。今は海外事業比率は5%弱であり、また、海外で販売しているVAIOブランドの商品は、VAIOの設計/製造ではなく、ライセンス型の製品が大半を占めているという状況です。
今後は海外市場に向けても、自社製品の販売を増やしていきたいと考えています。しかし、単にボリュームを追うビジネスではなく、VAIOの価値を届けることを軸に置いた形で海外ビジネスを進めます。
海外には今でも根強いVAIOファンがいます。「カッコイイ」「カシコイ」「ホンモノ」という3つの商品理念に英語によるワードを用意したのも、海外市場に対してVAIOの価値を正しく伝えたいという思いがあるからです。海外事業は、これまでの取り組みを1度リセットするといった姿勢で取り組み、市場も選び、売り方も工夫しながら加速していきます。
BtoC向けであればECの活用を重視し、BtoB向けにはチャネル開拓を強化します。2022年のような急激な為替変動がこれからも起こることを想定すれば、海外事業比率を50%にまで引き上げておくことが理想だといえます。長期的な目標として、継続的に海外事業比率を高めていくことに力を注ぎたいですね。まずは、2024年5月期を目途に、海外事業比率を10%ぐらいには引き上げたいと思っています。
PCアクセサリーも展開 VAIOのリファービッシュ品も提供予定
―― VAIOでは、PC以外のNB(ニュービジネス)領域に力を注いできた経緯があります。この分野への取り組みは1度止めるという方向性を打ち出していますが、今後はどうなりますか。
山野 VAIOのモノ作りの強みを生かすことでスタートしたニュービジネスですが、残念ながら、これは大きな果実にはなりませんでした。むしろ、このままリソースを投入していくと、本業がおかしくなるという状態でもありました。
2021年6月に社長に就任した私の判断は、もう1度PCへリソースを集中し、本業でもっと大きな存在になってから、改めて枝葉を広げていくということでした。ですから、私は、社長就任からかなり早いタイミングで社内に「本業回帰」を宣言しました。EMS事業によるロボット、VFRを通じたドローンなどの事業は1度止めて、VAIOは本業であるPCに力を注ぎます。
ニュービジネス事業に携わっていたエンジニアも、PC事業に関わってもらうようにし、本業を加速できるようにしました。そして、ニュービジネスという範囲を、PC周辺領域に絞り込んで、そこに力を注ぐことも考えています。
―― PC周辺領域というのは具体的には何でしょうか。
山野 1つはアクセサリーです。PCはアクセサリーを組み合わせることでライフスタイルの提案ができたり、ビジネスシーンでの活用を高度化できたりします。実は、新製品の「VAIO F14/F16」では、オリジナルで開発したワイヤレスマウスが付属していますが、これは、操作性を追求した最適な形状を追求し、クリック時の静音性や操作時の感度などにもこだわっています。
これだけこだわったマウスを用意したのは、これからVAIOはアクセサリーの展開にもこだわっていくという隠れたメッセージだと思ってください。2023年6月からスタートする新年度には、新たなアクセサリー製品群を投入する計画です。
2つめはサービス関連の強化です。VAIOを利用する上での各種サービスであり、既に安全で快適なリモートワークを実現するVPNサービス「ソコワク」の提供などがあります。PC事業の成長に合わせて、VAIOならではのサービスを用意していくことになります。
そして、3つめがリファービッシュPC(認定中古PC)への取り組みとなります。環境に対する関心が高まる中で、PCメーカーといえども、新品だけを売っている時代ではなくなってきました。
具体的には、法人ユーザーが3年使用したものを下取りして、メーカー品質のもとでキチッと整備をして、メーカー認定中古PCとして販売していくものになります。安曇野の拠点を活用した整備が可能ですし、VAIOをより多くの人に利用していただくことにもつながります。
リファービッシュPC は、2023年度後半から試験的に開始しようと考えていますが、本格化するのは2025年以降となります。リファービッシュPCを事業化するには、それだけのPCを仕入れる必要があります。ようやく2022年ぐらいから法人向けにまとまった台数が導入されはじめています。これを下取りできるのが3年後です。そこを目指して準備を進めていきたいですね。
このように、PCに近いところで、VAIOがやらなくてはならないことは多いですし、この領域で新たなビジネスを進めていくことが、今のVAIOには大切だと思っています。現時点では、どれぐらいのビジネスに成長させていくのかといった具体的な目標はありません。ただ、本業が拡大すれば、それに伴って、アクセサリーやサービス、リファービッシュPCといった事業も拡大していくことになります。
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