ASUSの「ROG Ally」は良コスパで他のポータブルゲーミングPCとはひと味違うドッキング機能を備えた1台だった(5/5 ページ)
ASUS JAPANが6月14日に発売したポータブルゲーミングPC「ROG Ally」の上位モデルは、“エライ”よく売れているようである。本当に“アリー”な選択肢なのかどうか、ガッツリとレビューしてみよう。
サイバーパンク2077
ROG Allyでもっとヘビーなゲームは楽しめるのだろうか。その辺を検証すべく、超重量級のAAAタイトル「サイバーパンク2077」のゲーム内蔵ベンチマークモードでフレームレートを計測してみよう。
今回はバッテリー駆動/AC駆動/XG Mobile GC32L接続時の3パターンで、フルHD解像度のフルスクリーン表示におけるプリセット画質「中」「高」「ウルトラ(最高)」を試している。平均フレームレートは以下の通りとなった。
- 中
- 単体(バッテリー駆動):37.26fps
- 単体(AC駆動):39.79fps
- XG Mobile接続時:115.81fps
- 高
- 単体(バッテリー駆動):29.08fps
- 単体(AC駆動):31.58fps
- XG Mobile接続時:182.34fps
- ウルトラ
- 単体(バッテリー駆動):25.15fps
- 単体(AC駆動):26.78fps
- XG Mobile接続時:95.85fps
パッと見だと「お、これはプリセット『中』なら単体でも何とかなるか?」と思うかもしれない。しかし、これはあくまでも“平均の”フレームレートなので、場面によっては中設定でも描画がカク付くこともある。快適なプレイをするには、平均でも60fpsは超えることが望ましい。
その点、このゲームでは描画解像度をHDに下げると、バッテリー駆動時の中設定における平均fpsが61.91fpsまで改善する。この場合、最高フレームレートは102.6fps、最低フレームレートは12.47fpsとなるが、最低フレームレートとなるシーンはごくわずかで、十分にプレイ可能だ。
なお、Ryzen Z1 Extremeの内蔵GPUはRSRによる超解像にも対応しており、サイバーパンク2077でもその恩恵にあずかれる。ディスプレイが7型と小さいのも相まって、解像度を下げても画質の劣化をあまり感じない。
重量級タイトルをプレイする際はRSRの適用(と描画解像度の調整)を検討するとよいだろう(ただし、RSRを使うとどうしてもテキストのにじみが発生してしまう)。
Microsoft Flight Simulator
せっかくなのでもう1つ、重量級タイトルである「Microsoft Flight Simulator」における平均フレームレートも計測してみよう。
今回はディスカバリーフライトから「ニューヨーク」を選択し、2分間のAI操縦を行った際の平均フレームレートを「CapFrameX」を使ってチェックする。描画解像度はフルHDとし、グローバルレンダリング品質を「ローエンド」「ミドル」「ハイエンド」「ウルトラ」の4パターンでレートを測ることにする。レンダリングスケールなどはデフォルトのままで、垂直同期は「オフ」にしている。
ここまでの結果から、Turboモードではバッテリー駆動時とAC駆動時で大きな差は生じないと判断し、このテストではTurboモードのAC駆動時とXG Mobile GC32L接続時のみ掲載する。結果は以下の通りだ。
- ローエンド
- 単体(AC駆動):37.5fps
- XG Mobile接続時:74.9fps
- ミドル
- 単体(AC駆動):25.2fps
- XG Mobile接続時:67.3fps
- ハイエンド
- 単体(AC駆動):21fps
- XG Mobile接続時:50.9fps
- ウルトラ
- 単体(AC駆動):13.2fps
- XG Mobile接続時:36fps
サイバーパンク2077のような動きの激しいタイトルとは異なり、Microsoft Flight Simulatorでは好み次第だが平均30fpsを確保できれば快適にプレイできる。しかし、Allyは単体でもミドル設定でも平均30fpsを大きく割り込んでしまっている。単体で快適に遊ぶには、品質をローエンドにしておくといいだろう。
なお、ROG XG Mobileを接続すると、ウルトラ品質でも平均フレームレートが30fpsを超える。さすがは外付けGPUである。
価格以上のポテンシャル SSD容量とバッテリー駆動時間が課題か
ROG Allyは、Ryzen Z1 Extremeを搭載し、競合製品を上回る性能を備えている。どこにでも持ち運べる軽さを実現しながらも、最大120Hz表示も可能なタッチ対応ディスプレイを備え、設定次第で快適なゲーム体験を得られる。これで実売11万円弱(直販では10万9800円)となると、“お買い得”もいいところである。
ただし、細かい所まで見ていくと、ストレージの容量が512GBとやや少なめであることと、“本気”を出すとバッテリーがあっという間に上がってしまうという課題もある。
ストレージの容量については、microSDを使うことである程度増やせる。本体のmicroSDメモリーカードスロットは最大毎秒約312MBの読み書きに対応するUHS-II規格に準拠しているので、同規格のmicroSDを用意すればゲーム用ストレージとして十分に運用可能だ。しかし、肝心のUHS-II対応microSDはやや高価という課題もある。
幸い本体のバックパネルは取り外しやすい構造なので、内蔵SSD(Type 2230)を換装するという手もある。ただし、日本ではSSDを換装すると本体のメーカー保証が無効となってしまう。せめて、ストレージの換装サービスがあるとうれしいのだが……。
バッテリー駆動時間については、メーカー公称値で「ヘビーゲームで最大2時間、動画視聴で最長6.8時間」とされている。ただし、Turboモードにすると、タイトルによっては1時間程度でバッテリーが切れてしまう。外でのゲームを思いきり楽しみたいという人は、65W出力に対応するUSB PD準拠のACアダプターかモバイルバッテリーを“常備”した方がいい。
もっとも、ポータブルゲーミングPCにおけるバッテリー駆動時間は、ROG Allyに限らず大きな課題の1つに挙げられる。バッテリー駆動時間を重視する場合は、オペレーティングモードをTurboから変更した上で、ゲームの設定も負荷の掛からないものとすべきだ。
細かく見ると課題があるものの、ROG Allyは今までのポータブルゲーミングPCと比べるといろいろな意味で快適であることは間違いない。
Nintendo Switchのように「家でも外でも同じゲームを楽しみたい!」というニーズには十分に応えられている上、繰り返しだが性能の割に手頃な価格である。「ゲーミングPCってどんなもの?」と二の足を踏んでいる人向けの入門機としてもピッタリだ。
別売だがROG XG Mobileと接続すれば、重量級のゲームタイトルを快適に楽しめる。PCゲーミングの玄人も満足させるポテンシャルも備えているともいえる。
ROG Allyの上位モデルは思った以上の“オールラウンダー”なのかもしれない。
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