連載

「現場のデジタル化はまだこれから」 MetaMoJiが目指す日本人のための、日本語のための、日本文化のための会社とはIT産業のトレンドリーダーに聞く!(2/3 ページ)

コロナの5類感染症変更以降も、経済状況や社会情勢の激変は続いている。継続する円安に伴う物価の上昇が続く中で、IT企業はどのような手を打っていくのだろうか。大河原克行氏によるインタビュー連載のMetaMoji 後編をお届けする。

現場のデジタル化はまだ加速がつき始めた入口の段階

―― 長年、浮川社長に取材をさせていただいていますが、ジャストシステム時代から、ずっと「社長の仕事は好きではない」といっています(笑)。これは今でも変わらないのですか。

浮川社長 そうですね(笑)。MetaMoJiを大企業にしたいとは思わないですし、多くの利益をあげたいとも思いません。今は100人ぐらいの規模ですが、これ以上増やすつもりはありません。廊下ですれ違っても、全員の顔と名前が分かるという規模がちょうどいいですよ。

 そして、この規模の会社であれば、お客さまに向き合い、しっかりと価値を提供することに力を注げます。小さいけれど、こんなものがあればみんなが幸せになるよね、という技術や製品を出しながら、会社を進化させていきたいと思っています。

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 やりたいことは、いいソフトウェアを作って、多くの人に喜んでもらうことです。MetaMoJiがあったから自分たちが便利になったとか、今当たり前に使っていることを、あのときにMetaMoJiが作ってくれたからできているんだとか、将来の人たちが思ってもらえる会社になりたい。

 私の役割は、その目標に向かって、大きな方向性を決めることになります。そして、種をまいて、それを育てることが役割です。MetaMoJiは何でもできる会社だと思っています。それを実現する社員がそろっているのは私たちの強みだといえます。昨日より今日、今日より明日に向かって進化していることを実感できることは、とても楽しいですよ。

―― 「現場」のデジタル化やITの利活用は、MetaMoJiの存在があったことで、かなり促進したように感じます。

浮川社長 それはまだまだですね。現場に行くと、デジタルを否定している人たちがまだ多くいます。しかし、そうした現場に対しても具体的な事例を見せながら、メリットを提案できるところまではやれたかな、とは感じています。

 例えば、建設現場にはいろんな人が出入りをしていますから、そこでeYACHOを見て「そんなことをやっているんだ」と興味を持ってくれたり、メリットが分かると「うちでもやってみたい」という話が出てきたりします。現場での導入に加速がつき始める入口にきたという段階ではないでしょうか。

生成AIとの付き合い方

―― 生成AIが大きな関心を集めています。この動きをどう捉えていますか。

浮川社長 例えば今のiPadの使われ方は、かつてのITの延長線上にあり、いわば原始的な使い方といえる範囲のものです。しかし、AIが活用されるようになると、そこに大きな変化が生まれることになります。何かを問いかけると、それに最適な回答をしてくれるというのは、これまでのITにはできなかったことです。

 そして、この流れは今始まったばかりであり、今後、社会により大きな変化を及ぼすことになるでしょう。ここで重要なのは、最後は、あくまでも人間が考えることです。AIが提供する情報をそのままうのみにするのでは意味がありません。AIからの情報は、有益なものとして捉えながらも、それを元に人が創造的な価値を生み出すことが重要です。それが「考える」ということになります。


浮川社長が考えるMetaMoJiアプリケーションの哲学

 MetaMoJiは、「考える」ことを支援する会社です。その姿勢は、これからも変えません。日本人は考えるときに、「和」という精神をベースにします。そこに日本の文化といえるものがあります。「和」の発露は、柿本人麻呂が「言霊の幸わう国」と表現したように、豊穣な言葉世界が根底にあります。日本語は季節を表す言葉1つを取っても、多様であることからもそれは証明されます。

 さらに、聖徳太子が掲げた「和を以て貴しと為す」という言葉も、日本の文化を示しています。日本人の精神の基点には「和」があります。大規模言語モデルに代表されるAIを組み込んでいくときに、日本の文化的背景をどう反映させるのか、それをしっかりとした日本語で継承し、和をもって「考えること」を支援できるのかといったことに、もっと注目すべきだと思っています。


日本や日本文化でもある、「和をもって考えること」を支援できるのではないかという点に注目

―― これから、MetaMoJiはどんな会社になっていきますか。

浮川社長 やはり目指しているのは、将来こんなことをやってくれた会社があったから、今の生活が当たり前になっている、と言ってもらえる会社ですね。日本人がこんな生活ができ、日本語がデジタル社会の中でも使いやすい環境が実現できているのは、MetaMoJiの貢献があったからだという実績を作りたいと思っています。

 英語は世界中の人たちが使っていますから、デジタルの世界のおいても、どんどん使いやすい言語になっています。AIにおいても、それは同様です。日本語を母国語としている人は約1億2500万人です。MetaMoJiは世界に遅れることなく、日本人らしさを包み込みながら、デジタルを活用できる日本の社会の実現に貢献したいと思っています。デジタル社会において、日本人のための、日本語のための、日本の文化のための会社になりたい。それがMetaMoJiの役割です。

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