新しい「16インチMacBook Pro」に見るM3 Maxチップの“実力” M1 Ultraチップ搭載モデルからの乗り換えも現実に:本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/3 ページ)
Appleが新型「MacBook Pro」を11月7日に発売する。少し遅れて発売される予定の「M3 Maxチップ」を搭載する構成を先んじてレビューする機会を得たので、その実力をチェックしていく。
Appleが、Mac向けApple Siliconの最新版「Apple M3チップファミリー」において、無印チップ/Proチップ/Maxチップの3種類を一気にそろえたことと、新型14インチMacBook ProにエントリークラスのM3チップモデルが用意されたことは、既報の通りだ。
M3チップは、Thunderbolt/USB4の端子数や接続可能な外部ディスプレイの数に制約がある。ゆえに「え、Proで無印チップなの?」と思った人もいるかもしれないが、CPUコアのパフォーマンスはM1 Pro/M2 Proチップ並みだし、動画のエンコードもこなせる「Media Engine」も備えることを考えれば、Proモデルに搭載する価値はあると考える。
一方で、M3 ProチップはCPUコアの構成が見直され、先代までの「P(高性能)コア8基(6基)+E(高効率)コア4基」というパフォーマンス重視の構成から、「Pコア6基(5基)+Eコア6基」の省電力寄りの構成に見直された。GPUコアの基数も、M3 Maxチップの上位構成と比べると半分未満で、ProチップとMaxチップの差が開いた(≒Proチップが無印チップに近くなった)。これはユーザーの利用状況やアプリの利用状況に応じて調整した結果だそうだ。
そしてM3 Maxチップは、CPUコアを「Pコア12基(10基)+Eコア4基」という構成とし、“パフォーマンス重視”をより鮮明に打ち出している。新設計のGPUコアも、最大で40基備えている。これにより、「M1 Maxチップ」比で最大50%の高速化と、最大128GBのユニファイドメモリ搭載を実現したが、プロセスルールの微細化(5nm→3nm)もあってか、M1 Max/M2 Maxチップよりも発熱は抑えられているそうだ(※1)。
(※1)これにより、M3 Maxチップ搭載の14インチMacBook ProでもGPUパフォーマンスで「最高」を選べるようになった(先代のM2 Maxチップ搭載構成では16インチのみ対応)
短時間ではあるが、筆者はM3 Maxチップ(16コアCPU+40コアGPU)を備える新型「16インチMacBook Pro」を試す機会を得た。評価機は128GBメモリと8TBストレージ(SSD)を備える正真正銘の“最上位”構成で、Apple Storeでの販売価格(税込み)は105万6800円となる。このパワフルさが何をもたらすのか、紹介しよう。
レイトレーシング処理で本領を発揮する新GPUコア
M3 Maxチップを求めるユーザーがどれだけゲームを楽しむのかは分からないが、まずは新型GPUコアの実力を見るべく、Unreal Engine 5(UE5)を使って作られた最新ゲーム「偽りのP(Lies of P)」(NEOWIZ)をテストしてみよう。
UE5は、AppleのグラフィックスAPI「Metal」に最適化されている。そのため、UE5を使って開発されたmacOS/iOS/iPadOS向けのゲームであれば、M3チップファミリーの新型GPUコアによる「レイトレーシング」「メッシュシェーダー」のアクセラレーション機能を間接的に利用可能だ。
今回の評価機では、偽りのPを以下の設定でプレイしてみた。
- 描画解像度:2000×1350ピクセル
- Metal FX Upscaling(超解像処理):高品位
- グラフィックス品質:最高
macOSの「ターミナル」で、「defaults write -g MetalForceHudEnabled -bool yes」というコマンドを打ち込むと、Metalの動作状況を表示させつつゲーム(Metalを使うアプリ)を実行できる。この機能でフレームレートを確認したところ、少なくとも60fpsはキープできた。垂直同期させない設定にしてみると、およそ90fpsで安定する。
ちなみに先代のM2 Maxチップ構成(38コアGPU/96GBメモリ)で同じようにプレイすると、平均フレームレートは60fpsを切り、45~50fpsで安定する。メモリの容量はどちらも128GBと潤沢なので、GPUに搭載されたレイトレーシングとメッシュシェーダーのアクセラレーターの有無がフレームレートの差として現れたのだろう。
UE5は、最近はゲーム以外のアプリでも使われることが増えている。UE5ベースのアプリなら、この性能を別の場面で生かすこともできるだろう。なにしろ、一般的なゲーミングノートPCよりもはるかに薄く、軽く、そして小さなACアダプター(※2)で動作することは驚きだ。
(※2)一般的なゲーミングノートPCはACアダプターが150W超であることも珍しくないが、M3 Proチップ(CPUコア12基)/M3 Maxチップ搭載モデルでも96W出力だ
続けて、GPUのレンダリング性能と演算性能をチェックしていく。
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