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完成品PC限定で良コスパ! 内蔵GPUなしの「Ryzen 5 7500F」ってどんなCPU?(3/3 ページ)

AMDが2023年7月にリリースしたデスクトップ向けCPU「Ryzen 5 7500F」は、一部の国/地域を除いて単体販売されていない“GPUなし”のCPUだ。今回、ある意味でレアな本CPUを試す機会を得たので、その実力をチェックしてみたい。

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3DMark

 Ryzen 5 7500FはGPUレスなので、何かしらのグラフィックスカードを搭載しなければ画面を出力できない。それだけに、どのGPU(グラフィックスカード)を選ぶかが、特に3Dグラフィックスを使うゲームやツールのパフォーマンスに大きな差を生む。

 今回は、同じGPU(Radeon RX 6800 XT)でRyzen 5 7500FとRyzen 5 7600Xのスコアに差が生じるのかチェックしていく。まずは、3Dグラフィックスの総合ベンチマークテストアプリ「3DMark」の主要なテストの総合スコアを見てみよう。

  • Fire Strike(DirectX 11/フルHD)
    • Ryzen 5 7500F:3万9531ポイント
    • Ryzen 5 7600X:4万1416ポイント
  • Fire Strike Ultra(DirectX 11/4K)
    • Ryzen 5 7500F:1万3046ポイント
    • Ryzen 5 7600X:1万3152ポイント
  • Time Spy(DirectX 12/WQHD)
    • Ryzen 5 7500F:1万7138ポイント
    • Ryzen 5 7600X:1万7459ポイント
  • Time Spy Extreme(DirectX 12/4K)
    • Ryzen 5 7500F:8283ポイント
    • Ryzen 5 7600X:8518ポイント

 3DMarkの総合スコアを大きく左右するのは、GPUの性能だ。CPUがスコアに与えるはそれほど大きくないとされているが、GPUに送り込むデータの生成はCPUで行うので、CPUの性能差もそこそこ重要だったりする(だからこそ「CPUスコア」という概念もある)。

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 とはいえ、先のテストと同様、Ryzen 5 7500FとRyzen 5 7600Xのスコアに大差はない。最高クロックの差が、ほぼそのままスコアの差となっている。

 少なくともRyzen 5 7600XからRyzen 5 7500Fへの「ダウングレード」であれば、GPUの足を引っ張るようなボトルネックにはなり得ないだろう。


3DMarkのスコア

FF14/15ベンチマーク

 続いて、実際のゲームをベースとするベンチマークテストを実行してみよう。

 まず、比較的軽量な「ファイナルファンタジーXIV:暁月のフィナーレ ベンチマーク(FF14ベンチマーク)」を試してみる。画質設定は「最高品質」として、フルHD(1920×1080ピクセル)、WQHD(2560×1440ピクセル)、4K(3840×2160ピクセル)の3つの解像度でテストを行った結果は以下の通りだ。

  • フルHD
    • Ryzen 5 7500F:2万8214ポイント
    • Ryzen 5 7600X:2万9914ポイント
  • WQHD
    • Ryzen 5 7500F:2万3532ポイント
    • Ryzen 5 7600X:2万4899ポイント
  • 4K
    • Ryzen 5 7500F:1万4464ポイント
    • Ryzen 5 7600X:1万4501ポイント

 3DMarkと同じく「Ryzen 5 7500Fのスコアは少しだけ低い」という僅差に収まっている。


FF14ベンチマークのスコア

 続いて、負荷の重い「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION BENCHMARK(FF15ベンチマーク)」を実行してみよう。画質を「高品質」に設定し、フルHD、WQHD、4Kの3解像度でベンチマークを実行した結果は以下の通りとなった。

  • フルHD
    • Ryzen 5 7500F:1万6577ポイント
    • Ryzen 5 7600X:1万7287ポイント
  • WQHD
    • Ryzen 5 7500F:1万2977ポイント
    • Ryzen 5 7600X:1万3307ポイント
  • 4K
    • Ryzen 5 7500F:7398ポイント
    • Ryzen 5 7600X:7525ポイント

 こちらも「Ryzen 5 7500Fのスコアがちょっと低い」程度である。グラフィックスカードを搭載することを前提にするなら、Ryzen 5 7500Fは性能を犠牲にしない費用の節約に一役買いそうである。

 浮いたお金はグラフィックスカードやメモリ、またはSSDのアップグレードに充当すればいい。


FF15ベンチマークのスコア

「消費電力」は隠れたアドバンテージ

 最後に、Ryzen 5 7500Fの消費電力も確認してみよう。

 Ryzen 5 7500FのTDPは65Wと、通常の「X」の付かないRyzen 7000シリーズと同じ仕様だ。今回はPCを起動してから10分間放置した状態の消費電力「アイドル」、3DMarkの「Time Spy Extreme」を実行中の最大消費電力を「高負荷時」としてワットチェッカーで調べてみた結果は以下の通りである。

  • アイドル時
    • Ryzen 5 7500F:80W
    • Ryzen 5 7600X:81W
  • 高負荷時
    • Ryzen 5 7500F:372W
    • Ryzen 5 7600X:391W

 高負荷時の消費電力を見比べると、Ryzen 5 7600Xよりも19W低い。設計上のTDPの差は40Wなので、それを考えると差が少なすぎるようにも思える。しかしそれでも、電気料金のことを考えると、20W弱の差は大きい

 これまでのベンチマークテストの結果を見れば分かる通り、Ryzen 5 7500FとRyzen 5 7600Xとの間に、GPUのボトルネックになるような性能差はない。そう考えるとTCO(総所有コスト)の観点でもRyzen 5 7500Fの優位性は高いといえる。


消費電力の比較

Ryzen 5クラスでグラボを積むならベストなCPU

 Ryzen 5 7500Fは、現時点におけるデスクトップ向けのRyzen 7000シリーズのエントリー製品だ。実際に試してみると、完成品(BTO)PCとセットでないと入手できないことが残念なほどによくできている。

 別途グラフィックスカードを導入する前提で、Ryzen 5 7600/7600Xを搭載するPCの購入を考えているなら、CPUとしてRyzen 5 7500Fを選択できるか調べてみた方がいい。選べるなら、性能に大きな影響を与えないコスト削減策となるはずだ。特にRyzen 5 7600Xと比べた場合、消費電力が低いので運用面でのコストも低減できる。

 CPUで浮いたお金で、他のパーツを強化する――そういうPC選び(カスタマイズ)も良いものだ。

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