カラー電子ペーパータブレット「BOOX TabUltraC Pro」の出来は最高 値段と実用性のバランスを見いだせるかがポイントか:「目指せ↑ワンランク上の仕事術」デジモノ探訪記(3/3 ページ)
企業や組織のIT部門を支援してきた石黒直樹氏が、実際に使っていて仕事に役立つと思ったものや、これから登場する新製品、新サービスをいち早く試してレビューする連載。
キーボードが地味に良くなった
さて、今回の目玉のもう一つである専用キーボード+トラックパッドです。地味に改良されており、非常に良くなったと感じます。
この専用キーボードと本体の接続は、Bluetoothではなく金属接点です。しかし以前のTab Cの接点は溝に乗せる形であり、キーボード操作や画面タッチ時に振動があると接点が外れてしまうことが多々ありました。
Tab C Proは、端子が背面になり、マグネットでしっかりと吸着するので外れることはまずありません。
背面にあることで、平らにしてもキーボードはつながったままです。手書きしながらキーボード入力をしたくなるOne Noteアプリなども活躍の場が広がりました。その分、机の場所は取ってしまいますが……。
この専用キーボードカバーですが、惜しいのがタブレットを縦向きにすると使えないところです。きちんとマグネットで装着することもできないため、タブレットを立てかけることはできるのですが、やや不安定です。
雑誌など大型書籍を読む時は縦向きでスタンドしたいことが多々あるので、この点は残念です。もちろん、キーボードの接点位置が合いませんので、キーボードも使えません。
"ポメラ"のような使い方もアリ
テキスト入力に特化した端末であるポメラ──私は興味はありつつもポメラを使ったことがないため、正しい評価はできません。しかし「さっと取り出して、さっと文字入力できる」という使い方であれば、Tab C Proという選択もアリだと感じました。
何といっても電子ペーパーですので、電池の持ちはすばらしいです。そして起動しておいてもまぶしくありません。PCを使っている横に置き、いつでもテキスト入力できるようにしておくというのは仕事術としても非常に活用できるかと思います。Androidなのでさまざまなアプリが使えます。クラウドベースの同期も問題ないでしょう。
ただし本格的にキーボードを使うとなると、個人的にネックとなるのがJIS配列ではないということと、ファンクションキーがないことです。ファンクションキーがないとかなや英字への変換に手間取ってしまうのです。
FnキーはあるのでFn+数字キーでファンクションキーとして使えそうな気がするのですが、いろいろ試してはみるものの、狙った動作がまだ実現できていません。Androidタブレットである「Galaxy Tab S8 Ultra」+専用キーボードであれば、ファンクションキーも物理的に存在し、さらにかなや英字への変換も可能です。もしうまい設定方法をご存じであれば、ぜひご教示ください。なお、これらは個人的なネックです。これらが問題ないようであれば、あまり大きなハードルはないでしょう。
つまるところ、電子ペーパーをPCライクに使いたい用途は何?
私は基本的には読書のために電子ペーパーを使っています。画面がまぶしくないというのはかなり大きく、応答速度もあまり求められない読書は電子ペーパーにうってつけの使い方です。さらにスタイラスペンに対応した機種もあるため、本へのメモ書きもノンストレスです。Tab C Proは、雑誌サイズが読みやすい10型サイズでかつハイスペック機ということで購入しています。
Tab C Proは専用キーボードもあり、PCライクに使えることもアピールしています。しかし、この点については個人的にはどのようなメリットがあるのかが疑問です。確かに、キーボードもトラックパッドも普通に使えます。画面の応答も、設定次第でそこそこ何とかなります。しかし、だからといってPCより快適かというと、とてもそんなことはありません。あくまで電子ペーパーです。
また、SIMを搭載しているわけではないため、外ではテザリングやWi-Fiが必要で快適とはいえません。専用キーボードを装着すると本体と合わせて約1kgあります。私が使用しているLTE搭載の14型のWindows PC「LIFEBOOK WU2/H1」は約930gです。「それであればWindows機を持ち歩く」という考えに至ってしまいます。Windows機であれば、仕事上で困ることはありません。
個人的には、電子ペーパーの「紙」としての利点を生かすのであれば、キーボードよりもペンをフル活用できるような形が理想です。片手でタブレットを持ち、もう片手にスタイラスペンを持つスタイルです。
例えば、表示されている文字を丸で囲めば、その単語でネット検索できる。ペン書きでチェックを入れていけるようなリストや、手書き入力で端末にさまざまな指示ができる、などです。
そして、ハードウェア面では片手でページめくりがしやすいような物理ボタンの配置です。利用用途によっては、もっと物理ボタンがあった方がよいかもしれません。
キーボードやタッチ操作を極力せずとも、業務ができるような形を実現するのです。紙とペンの利点、そしてデジタルの強みを融合させたような業務フローが実現できてこそ、電子ペーパーの「Pro」といえる気がします。PCライクに使えるのがProではないと感じます。ただし、これはあくまで私の主観ですのでご了承くださいませ。
Androidベースですのでいろいろなアプリを工夫すれば実現できそうな内容ですが、製品としてそのような提案があると面白いと感じました。
しかし、無理にPCライクに使う必要はありません。最高峰の電子ペーパーであることは間違いなく、使う用途が明確であれば、間違いなくオススメできる1台です。
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