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「見たまま印刷」から「AIで望み通りに印刷」へ――HPの新プリンタソフトウェアが革命を起こしそうな件HP Amplify Partner Conference 2024(2/3 ページ)

HPが3月6日と7日(米国太平洋時間)に開催した年次イベント「HP Amplify Partner Conference 2024」では、同社の戦略が語られた他、同社にパートナー企業のCEOも登壇するなど一定の盛り上がりを見せた。NVIDIAのジェンスン・フアンCEOやAMDのリサ・スーCEOも登場したのだが、個人的に一番注目したいのが「プリンタソフトウェア」だ。

新しい法人向けノートPCは「耐量子コンピューター」の機能を装備

 基調講演の後半、バーチャル登壇したAMDのリサ・スーCEOは以下のように述べ、AI PCを含むAI関連の技術開発に積極的に取り組むことを表明した。

スーCEO AIは、過去50年で最も重要な変化になる。AMDは“AI”を最優先に企業活動を行っている。我々経営側だけでなく、従業員も同じ考えで仕事に取り組んでおり、皆忙しい状況だ。

 AMDはAI PCの市場に重要な取り組みを行っており、Ryzen 8040シリーズのようにNPUを含んだ製品を投入している。

 今回、HPはRyzen 8040シリーズを搭載する法人向けPCも発表している。ラインアップの概要については、別記事を参照いただきたい。


AMDのリサ・スーCEO(右)

法人向けPCでは「耐量子コンピュータ」対策を強化

 HPのアレックス・チョウPC事業部長は、同社の法人向けノートPCの2024年モデルの大半で「Endpoint Security Controller(ESC)」というマイクロコントローラーを第5世代に刷新し、他社のノートPCを上回るセキュリティを実現していると強調した(一部モデルは第4世代を継続搭載)。

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アレックス・チョウ氏

 今回、HPは第5世代ESCの詳細を明らかにしている。この新しいESCにおいて、最も注目すべき機能が「量子コンピュータ対策機能」だ。

 現在のPCやインターネットにおける情報の暗号化、例えば「RSA暗号」などは、量子コンピュータが実用ではないことを前提に設計されている。現在のいわゆる「ノイマン型コンピュータ」(PCやスマホもここに当てはまる)では、それを破ることは難しいというのが通説だ。

 しかし、量子コンピュータを利用すれば各種暗号の解読は不可能ではないと考えられている。その実現時期については、専門家の間でも意見が分かれているが、HPのイアン・パラット氏(パーソナルシステム事業部 セキュリティー責任者)よると「27%の専門家が、2023年時点で破られる可能性は50%あると予測していたほどで、その可能性は高まっている。米国政府も、2025年以降に導入するPCではその対策を施したものを奨励している」という。事実、CPUメーカーであるIntelも量子コンピュータによる暗号解読の危険性を訴えており、その対策に向けた研究を進めていることを明らかにしている。

 その上で同氏は「PCの世界でも、量子コンピュータによる暗号解除への対策を施すことは重要になりつつある」と、第5世代ESCの導入を決めた経緯を明らかにした。具体的な対策の1つとして、第5世代ESCではファームウェアの署名による保護を、量子コンピュータによって解析(解読)できないようにする仕組みが導入された。

 OSの起動前、ESCはファームウェア署名の“正しさ”をハードウェアベースでチェックしている。これはOS起動前の“素の状態”を安全かつ確実に作り出す上で重要なプロセスなので、ESC自身への対策も欠かせない。

 パラット氏は「PCは通常であれば5年程度、産業用に使われている場合はもっと長く使われることがある。今後、数年の間に量子コンピュータによる解読の懸念が現実のものになるのかどうかは、誰にもわからない。しかし、仮にそうしたことが起きたとしても大丈夫なように、ESCを第5世代に進化させることにした」と、PCを安心して長期間使ってもらうために取り組んだことをアピールした。


HPオリジナルのマイクロコントローラー「ESC」は第5世代を迎えた。ファームウェアに対する電子署名を量子コンピュータを使って解析することへの対策を施したことが大きなポイントだ

 HPといえば、PC事業と並んでプリンタ事業も重要な屋台骨だ。今回は、プリンタ事業における新製品や新サービスも発表されている。

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