連載

新型「iPad Pro」がM3チップをスキップした理由 現地でM4チップ搭載モデルと「iPad Air」に触れて驚いたこと本田雅一のクロスオーバーデジタル(4/6 ページ)

Appleが、新しいiPad Proを発売した。従来モデルと比較すると、プロクリエイター向けであることを一層強調したスペックとなっているが、そこまで振り切れた背景には、新しいiPad Airの存在があるかもしれない。イギリス・ロンドンで開催されたハンズオンを踏まえて、その辺をひもといて行きたい。

“全て”が刷新されたM4チップ

 「M3チップ」ファミリーが登場したのは、2023年10月だった。そして今回、新たに「M4チップ」が登場した。M3からわずか5カ月程度で、新たなナンバーを刻むSoCが出てきたことに、驚いた人も少なくないはずだ。

 このM4チップは、M3チップファミリーと同様にTSMCの3nmプロセスで製造されているが、改良されたプロセスを利用することで、電力効率が改善されている。


M4チップはTSMCの改良版3nmプロセスで製造される(Appleは「第2世代3nmプロセス」と呼称)

 Appleは「大幅に薄型/軽量化された新しいiPad Proに搭載するために、M4チップが必要だった」というが、実はiPad Proの冷却効率は新型になって20%向上している。グラファイトシートを用いることで速やかに熱を拡散している効果もあるが、より薄い13インチモデルに関しては、Appleロゴの部分を銅製のヒートスプレッダーとすることで熱の伝達速度をより向上している

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 iPad Proへの採用を想定して、M4チップ自身もSoC内の各種コンポーネントの性能バランスを最適化してきたという。「冷却性能は20%向上している」ということは、その分だけチップの性能を引き出しやすくなったともいえる。ほとんどの場面で、M4チップは従来のM2チップ搭載のiPad Proよりもクールに動作する。計算上、同じ処理を行った場合M4チップはM2チップ半分の電力消費でこなせるからだ。


先代と比較して、新しいiPad Proは20%の放熱効率改善を果たしている

性能面も、先代と比べると最大で4倍となっている

 新しい製造プロセスを採用する場合、 一般的に搭載する回路コンポーネントも合わせて刷新するのが通例だ。M4チップも例外ではなく、リリース間もないM3チップから変更された部分もある。

 CPUコアについては「Pコア(高性能コア)」「Eコア(高効率コア)」共に新設計となっており、特にEコアの性能は大幅に向上したという。最大6基のEコアの“出番”が増えたことも、電力効率の改善に貢献しているようだ。


iPad Proに搭載されたM4チップのCPUコアは、Pコアが最大4基、Eコアが6基という構成となっている。特にEコアは性能の向上幅が大きいという

 GPUコアについては、基本的なアーキテクチャはM3チップから大きく変化していない。ただし、回路の最適化は進められており、ハードウェアベースのレイトレーシング処理の実効パフォーマンスが最大2倍に向上している。

 GPU全体の性能が2倍になったわけではないものの、部分的な高速化によってシステム全体としてのパフォーマンスの改善は進んだというわけだ。 映画用の3Dグラフィックスの編集/レンダリングツール「Octane」のiPad版では、タッチパネルの操作によりなめらかにレイトレーシングの画像が確認できた。


GPUコアの設計はM3チップファミリーから大きく変わっていないが、回路の最適化と部分的な改良によって処理パフォーマンスを向上している

 このように、M4チップは「M3チップの基本コンポーネントを踏襲しながらも、システム全体を見直して最適化したSoC」と考えればよい……のだが、最適化にとどまらない大幅な構成変更が行われた部分もある。「Neural Engine」だ。

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