富士通とNVIDIAが「AIで駆動する社会」を目指した協業を拡大　富士通製CPU「MONAKA」とNVIDIA製GPUを密結合：ジェンスン・フアンCEOも来日

　富士通とNVIDIAは10月3日、産業特化形のAIエージェントを統合したフルスタックAIインフラストラクチャーの構築を目指す“戦略的協業”の拡大を発表した。富士通が開発するArmアーキテクチャCPU「FUJITSU-MONAKA」シリーズとNVIDIAのGPUを「NVIDIA NVLink Fusion」を介して接続し、統合されたAIコンピューティング基盤として開発／提供するという。

協業の内容

　今回の協業では、以下の3つの取り組みを進めるという。

産業向けの自律進化するAIエージェントプラットフォームの共同開発

　富士通が提供するクラウドベースのAIソリューションサービス「Fujitsu Kozuchi」のプラットフォームを基盤として、NVIDIAのモジュール型推論フレームワーク「NVIDIA Dynamo」のプラットフォームを融合することで高速かつセキュアなAIエージェントプラットフォームの実現を目指す。

　プラットフォームの構築に当たっては、カスタムマルチモーダル生成AIプラットフォーム「NVIDIA NeMo」を活用しつつ、富士通独自のマルチAIエージェントを開発／実装し、日本語性能を高めたLLM（大規模言語モデル）「Takane」の最適化を進めるなど、特定領域あるいは特定企業に特化したAIエージェント／AIモデルを自律進化できる仕組みを構築する。開発したAIエージェントは、「NVIDIA NIM マイクロサービス」を通して展開できるようにするという。

次世代コンピューティング基盤の共同開発と拡販

　富士通は、データセンター／HPC（ハイパフォーマンスコンピューティング）向けにArmアーキテクチャベースのCPUであるFUJITSU-MONAKAシリーズの開発を進めている。このCPUとNVIDIAのデータセンター／HPC向けGPUをNVIDIA NVLink Fusionを介して密結合することで、ゼタスケールの演算性能を備える高速AIコンピューティング基盤を共同開発する。

　HPCへの取り組みを通して、富士通はArmアーキテクチャ向けの高速ソフトウェア技術を持つ。これを「NVIDIA CUDA」に統合したソフトウェアを提供することで、ワンストップのエコシステムを構築できるという。

カスタマーエンゲージメントの推進

　いくらコンピュータが高性能化してAIがより便利になったとしても、使ってくれる“ユーザー”がいないと意味がない。そこで富士通はパートナーエコシステムを構築し、AIインフラストラクチャを通してAIエージェント／AIモデルの活用を促進する取り組みを行う。その過程において、NVIDIAと共同でパートナープログラムを提供するといった協業を実施する。

　この取り組みはまずロボティクス分野を対象に進めていき、順次分野を拡大していくことで先端技術の社会実装とユーザーの成長の両方を実現していくという。

量子コンピューティングとのシナジーも視野に

　主な取り組みには含まれていないが、今回の協業拡大は量子コンピューティングにおけるシナジー（相乗効果）も視野に入れているという。富士通では量子コンピューティングはAIの進化にとって重要な要素になると見ており、NVIDIAと共同でHPCと量子のハイブリッドコンピューティングを推進する考えだ。

革ジャンで登場したフアンCEOが期待を語る

　10月3日に行われた協業に関する発表会には、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOも来日してあいさつに立った。

　「NVIDIAにとって、日本はとても重要な友人だ」と語るフアンCEOは、これまでの日本企業との関わりについて一通り語った上で、「NVIDIAは、日本で最も偉大な企業の1つであり、コンピュータ産業におけるパイオニアである富士通と提携し、“次の未来”を提示できることになった」と今回の協業拡大に対する喜びを語った。

　その上で「富士通は日本で最も歴史のあるIT企業であり、最大のデジタルサービス企業だ。従業員数は11万3000人に上り、幅広い産業分野で深い専門知識を有する。富士通とNVIDIAのコンピューティングプラットフォーム、そして両社のエコシステム、業界におけるリーチの広さを結集し、AI時代の日本におけるITプラットフォームを作っていく」と意気込みを語った。