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モバ充の発煙/発火事故を防ぐ試み AIとX線でゴミの中から「リチウムイオン電池」を見つけ出す――PFUが技術を開発 IHI検査計測の検知システムに採用

PFUが、ゴミの中から「リチウムイオン電池」を見つけ出すAIエンジンを開発した。本エンジンを搭載する「LiB電池検知システム」は、本エンジンはIHI検査機械を通して販売される。

 PFUは10月31日、ゴミに混入したリチウムイオン(リチウムポリマー)電池を見つけることAIエンジン「Raptor VISION BATTERY(ラプタービジョンバッテリー)」の発売を発表した。本エンジンはIHI検査機械(IIC)が同日発表した「LiB電池検知システム」で採用されている。


Raptor VISION BATTERYを搭載するIICの「LiB電池検知システム」(写真提供:PFU)

Raptor VISION BATTERYの概要

 Raptor VISION BATTERYは、PFUが開発を進めている廃棄物分別特化AIエンジン「Raptor VISION」の第2弾となる製品だ。第1弾の「Raptor VISION BOTTLE」はビン/ペットボトルの選別に特化したものだったが、今回のRaptor VISION BATTERYはゴミに混入したリチウムイオン(リチウムポリマー)電池を見つけることに特化している。「ゴミに混入したリチウムイオン電池による発煙/発火事故」が増えていることを背景に、そのリスクを大幅に緩和すべく約2年前から開発に取り組んできたという。

 Raptor VISION BOTTLEではPFUが得意とするスキャナーの技術を応用していたのに対して、Raptor VISION BATTERYはゴミに対してX線を照射して撮影した映像をAIで解析し、リチウムイオン電池を検出する仕組みを取っている。

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 X線撮影はデュアルエナジーセンサーを利用しており、材質の特性も含めて解析を行うようになっている。撮影の方向は、導入先の予算やニーズに合わせて「水平」「垂直」「水平+垂直」から選択可能だ。複数の自治体で実施した実証実験では、検知率は94%に達したという。


ゴミをLiB電池検知システム(水平+垂直撮影対応)に投入すると、水平/垂直方向からX線撮影が行われ、AIが画像分析を実施する。分析の結果、リチウムイオン電池と思われる物体が検知されるとアラートが出る(画面の赤枠で囲まれた部分がリチウムイオン電池と認識されている)

先ほど投入したゴミの中身を確認すると、リチウムイオン電池を搭載したモバイルバッテリー(左)とタブレット端末(右)が出てきた。検出精度の高さが伺える

 検知可能な電池の形状は「角型」「パウチ型」「円筒型」「乾電池」と多岐に渡る。AIモデルを随時アップデートする機能も備えており、これを生かして各種危険物の検知にも対応する更新も行う予定だという。

 検出したリチウムイオン電池を探しやすくするオプションとして、ごみの搬出口に検出結果を表示するディスプレイを取り付けたり、検出箇所を照射するプロジェクターを装備したりすることも可能だ。


リチウムイオン電池を検知する大まかな仕組み(通知に出ているプロジェクターはオプション)

主立った形状のリチウムイオン電池は全て検知できる。今後のアップデートでは、ライターやスプレーなどの他の危険物も検知できるようにする予定だ

同じソリューションを導入している自治体/事業者のデータを利用してモデルのブラッシュアップも行える

 初期段階では、Raptor VISION BATTERYはプラスチックごみに混入したリチウムイオン電池の検出を想定しているという。ただし、実証実験を含む各種実験では「不燃ごみ(袋入り/袋破損)」「ペットボトルのベール」「梱包(こんぽう)された小型家電」「建築廃材」といったもの入った(混じった)リチウムイオン電池を検出できることも確認できているそうで、応用範囲は今後が広がっていきそうだ。


除去(検知)数は時間/日/月/年単位でデータ化可能で、実績をCSVファイルとしてダウンロードできる
検知のイメージ動画

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