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Snapdragon X2 Elite/Extremeは初代モデルから2年でどこまで進化したのか鈴木淳也の「Windows」フロントライン(1/3 ページ)

Qualcommが、11月に開催した「Snapdragon Architecture Deep Dive 2025」で、同社のPC向け最新SoC「Snapdragon X2 Elite」の詳細を明らかにした。その内容をお届けする

 10月に開催された「Snapdragon Summit」で、Qualcommの最新PC向けSoC「Snapdragon X2 Elite」が発表されたが、Summit開催時はまだ解説されていなかった事項について、11月に同社のイベント「Snapdragon Architecture Deep Dive 2025」で詳細な説明が行われたので、改めてまとめておきたい。


「Snapdragon X2 Elite」のスペックまとめ

Oryon CPUの強化点

 まずSoCのコアとなるOryon CPUの部分だが、以前のレポートでも触れた通り、最上位の「Snapdragon X2 Extreme」と「Snapdragon X2 Elite」の上位モデルについては、Primeコア×6で構成された「Primeクラスタ」が2基、Performanceコア×6で構成された「Performanceクラスタ」が1基搭載されている。

 Snapdragon X2 Eliteの下位モデルについては、Primeクラスタが1基の構成となる。初代のSnapdragon X Eliteでは、全てのCPUコアが同一のホモジニアスな形でクラスタを構成していたが、今回のX2では省電力方面での能力を向上させるため、あえて異なるコアを組み合わせるヘテロジニアスな形式を選んでダイナミックレンジを広げているというのは、以前に解説した通りだ。

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 Snapdragon X2 ExtremeとSnapdragon X2 Eliteの違いだが、最も大きな部分は動作クロックにある。ExtremeではPrimeコアのベースクロックが4.4GHzで、“ブースト”時のクロックが5.0GHzなのに対し、Eliteではベースクロックが4.0GHz、“ブースト”時のクロックが最大で4.7GHzとなる。

 Performanceコアについても、Extremeのベースクロックが3.6GHzなのに対して、Eliteでは3.4GHzと低く抑えられている。

 Qualcommによれば、同社はSnapdragon X2 Elite/ExtremeシリーズでノートPCや小型PCなどの比較的省電力なデバイスを志向しており、例えば「22Wの消費電力制限」のような上限が設定されている。

 他方でExtremeはこうした電力制限を設けず、ハイパフォーマンスなモデルをターゲットにしている。


Snapdragon X2 Elite(Extreme)におけるOryon CPUの構成

リファレンスデザインにおける2つのモデルの特徴

 前段で触れたブーストだが、ブースト時における動作クロックの上限はクラスタ単位で管理され、“アクティブ”なコアの数によって変化する。

 例えばクラスタ内の6基のコアのうち、3基のコアが“アクティブ”な場合はベースクロックである4.4GHzからそれほど上昇しないが、これが2コアになると動作クロックは4.8GHzまで一気に上昇し、コアが1基の状態では最大の5.0GHzに達する。

 これは動作するアプリケーションによってシングルスレッド性能が求められるケースで、一時的にクラスタ内の特定コアの動作クロックを引き上げることで処理性能を向上させることを主眼とする。クラスタ単位での制御となるため、最大の5.0GHzのクロックで同時に動作可能なのは1つのSoC内で2コアということになる。


クラスタ内マルチレベル“ブースト”の概要

 CPU部分の機能的な特徴は以上だが、この他にセキュリティ対策として各種メモリへのアクセスを利用した攻撃対策に加え、ハードウェアレベルの強力な乱数発生器(RNG)の搭載、CPU向けでは初となるクラスタ内で共有されるマトリックスエンジンの搭載など、世代を経た改良が行われている。

 またx86エミュレーションを効率動作させる仕組みの搭載など、既存アプリケーションが特に変更なしにそのまま高速動作するような工夫が行われていると同社は説明している。

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