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「Snapdragon X2 Elite」がNPU性能「80TOPS」をアピールする理由鈴木淳也の「Windows」フロントライン(2/3 ページ)

Qualcommが11月に開催したイベント「Snapdragon Architecture Deep Dive 2025」で語られた、最新PC向けSoC「Snapdragon X2 Elite」について細かく見ていこう。

CPU/GPU/NPUそれぞれの役割

 Hexagonの歴史が出てきたところで、これがSnapdragonにおいて「DSP(Digital Signal Processor)」から「NPU(Neural Processing Unit)」になってからの遍歴に触れよう。

 このNPUはQualcomm内部で世代管理されているようで、前世代のSnapdragon X Eliteに搭載されているのが「NPU3」で、X2 Eliteの世代では「NPU6」となっている。具体的に各世代でどのような設計思想をもって差異が生まれているのか不明だが、少なくともAIの進化の時流に合わせ、少し先の将来を読むことでどの演算ユニットを強化していくのかを適時判断しながら改良を続けているのだろう。

 同社によれば、モバイル向けの「Snapdragon 8 Elite」のシリーズに搭載されるNPUは、PCとは異なるチューニングが施されているということで、同じライブラリーこそ利用できるものの、性能などに差異が存在している。

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 また、面積の限られたSoCの“ダイ”においてどのような機能や性能を実現するのかは、CPUやGPU、そして他の処理ユニットとのバランスと面積の兼ね合いで、総合的に判断して決定されるため、NPUのみを一方的に強化するようなことは難しい。


Snapdragon X EliteシリーズにおけるNPUは世代単位で管理されている

 人によっては「GPUさえあればNPUはいらないんじゃない?」という人がいるかもしれない。実際、シンプルなSIMD処理はCPUでも高速に実行できるし、GPUの性能であれば問題なくNPUが行うような推論処理も可能だ。

 だがQualcommによれば「(ディスクリート)GPUは18輪駆動の大型トレーラーのようなもので巨大コンテナの運搬に適しているが、各家庭に宅配便で小荷物を届けるような処理には過大だし、利用したいとも思えない」ということで、非効率な点を強調する。適材適所というわけだ。同社では、CPU/GPU/NPUの3つの演算ユニットについて、それぞれ次のような処理に向いていると述べている。

  • CPU:スカラー演算や分岐の多いコード
  • GPU:ベクター演算や3Dのシェーダーコード
  • NPU:ニューラルネットワーク(AI)の処理に特化

 下図に具体的なサンプルが載っているが、比較的処理が軽く、どちらかといえばレスポンス性が重要な処理はCPUが最適とされる。OCRやシンプルな(顔認証などの)画像認識などがこれに該当する。

 NPUは基本的に今日「AI」と呼ばれる処理全般に向いており、低消費電力での高速動作を実現する。他方で、高い精度を必要とする画像処理や各種クリエイティブ作業の場合、より強力な演算処理が可能なGPUが向く。

 ただし、NPUよりも消費電力が要求されることになるため、可搬性を重視した薄型ノートPCのようなデバイスには向かないということになる。Snapdragonの(省電力性という)設計思想を考えれば、NPUを最も重点的に強化するというのは理にかなっているといえる。


CPU/GPU/NPUがそれぞれ向いている処理とターゲットとするフォームファクター

 なお、Deep Diveでの質疑応答では「TOPS値の算出に(Appleのように)CPU+GPU+NPUの処理能力の合算値を用いないのか?」という質問が出ていた。これに対するQualcommの回答は「ワークロードを複数のエンジンにまたがって効率的に分割実行することは困難で、3つの処理ユニットの合算値を出すのはミスリーディング。QualcommではAI専用エンジンとしてNPU単体の数値を重視する」とのことだった。

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