レビュー

攻めの構造と98%レイアウトの賛否はいかに? ロジクールの“コトコト”キーボード「Alto Keys K98M」を試す(3/5 ページ)

ロジクールから、新たなメカニカルキーボード「Alto Keys K98M」が発売される。同社初となる「UniCushionガスケット」を採用した意欲作を徹底レビューする。

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表情豊かなタイプ音を実現

 キーキャップはPBTダブルショット成形で、主要レジェンド(印字内容)は摩耗に強い。一方、日本語配列特有のかな印字など一部の副レジェンドはUV印刷と思われるプリント処理となっている。

 LEDはノースフェイシング(キー上側配置)で、上下2段構成の刻印では上段のみがシャインスルー(光透過)する仕様だ。


LED光が透過する部分はキーの上部のみとなる。ファンクションキーの下段のレジェンド(キー印字)である「F1」などはダブルショット成形ではあるものの、光らない

 ファンクションキーなどはメディアコントロール等のレジェンドを上段に配置しており、F1などのファンクションキー名は発光しない。その他、半角/全角や変換・無変換など、日本語配列特有のキーはキー下にLEDはあるものの、シャインスルーではない。もちろん、複雑な日本語はコスト的・技術的にダブルショット成形が難しいとか、ファンクションキーは場所で分かるからメディアコントロールの方を光らせた方が有用だ、とか、今どきはファンクションキーをあまり使わないからとか、きちんとした理由があるのだろうが、そもそもシャインスルーを採用しなくてもよかったのでは、とも感じる。

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 ビジネス用途として使用されるMX MECHANICALやMX MECHANICAL MINIでは全キーともシャインスルーではなく、逆にキーの間からのみ漏れる光が落ち着いた上品さを感じさせる仕上がりとなっていた。

 Alto Keysのライティングはオフィスにもマッチする白色のみで落ち着いたライティングなので、そういう方向性もあったのではないかと思う。そもそもダブルショット成形ではフォントがステンシル調になって、ややゲーム寄りの印象になる。1つのキーキャップの中でも英数字記号と日本語表記でトーン(と印字方法)が変わるちぐはぐさが個人的には気になった。


一部のキーキャップを取り外したところ

 搭載されている「Logi Marbleスイッチ」は、同社独自設計となるリニア軸のメカニカルスイッチだ。公式には詳細な数値スペックは公開されておらず、「大理石のような滑らかなキーの動きと適度なタイピング感を追求」といった感覚的なものにとどまっているが、実際にタイプした瞬間に感じるのは、滑らかさと底打ちの柔らかさだ。

 プレート固定型のように「コツン」と明確に止まる感触ではなく、わずかにクッションを挟んだような沈み込みがある。これはスイッチというよりは、UniCushionガスケットと多層フォームが振動を吸収し、衝撃の角を取っているのだろう。構造との相性を考えると、リニア軸との組み合わせは理にかなっているように思える。

 反発は穏やかで、跳ね返るというより自然に戻る印象だ。高速タイピングにも追従するが、強い反力で指を押し返すタイプではない。長時間入力ではこの特性が疲労軽減につながるのではないだろうか。実際に数千字規模の原稿を入力しても、あまり指先に響く感じは残らなかった。


Logi Marbleスイッチは、滑らかなリニアタイプだ。装着時はLED光を通す開口部が上(ノースフェイシング)になる

独自のMarbleスイッチを採用する

 一方で、しばらく使い込むとキーごとの音色や反発感に差があることに気づいた。中央部はやや低めでまとまり、外周部や端に近いキーはわずかに高音寄りに抜ける傾向がある。スペースキーはやや深く沈み、エンターやバックスペースは比較的締まった感触だ。矢印キーは軽快で、連続入力時の印象が他キーと異なる。

 これは単なる製造ばらつきというより、ガスケット支持構造による物理的特性が反映されていると考える方が自然だ。弾性素材で支持する構造は、中央と端で応力のかかり方が変わりやすい。均質性を最優先するならプレート直固定の方が管理は容易だろう。

 その意味で、本機のタイプ感は「均一品質の延長線上」ではなく、「構造的個性を許容した設計」に近いように感じた。東プレの「REALFORCE」シリーズや、剛性の高いプレート固定型に慣れたユーザーには違和感となる可能性もある。

 しかし、逆に言えばキーごとにわずかな表情があることが入力体験にニュアンスを与え、打っていて楽しいと感じるキーボードに仕上がっている。個人の経験を振り返ってみると、確かにガスケット構造のキーボードにはそういった「楽しさ」を感じるモデルが多い。

 ロジクールが完成品キーボードでここまでタイプ体験に踏み込んだ点は興味深い。均質性を保ちつつ、あえて幅を残す。そこにはまるかどうかが、本機の評価を分けるポイントになるだろう。

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