SNSの死後削除ニーズは5割! コロナ禍で変化した「おひとりさま信託」の実態:古田雄介のデステック探訪(2/3 ページ)
三井住友信託銀行が2019年12月から提供している、死後事務委任契約と金銭信託をセットにした「おひとりさま信託」。提供開始からコロナ禍を経て6年以上が経過するなか、契約者の高齢化や夫婦での申し込み増加など、利用者のニーズには変化が見られるという。担当者に詳しく話を聞いた。
コロナ禍を経て高齢化&男性比率の増加
おひとりさま信託の累計契約数は、2026年3月時点でおよそ数千件に及ぶ。そのうち死後事務に至っているのは数百件ほどだ。最初期の契約者は女性が圧倒的に多く、年代は50~60代が中心となっていた。しかし現在の男女比は4:6程度であり、契約時の年齢は70~80代が多勢になっているという。
同社の人生100年応援部 企画チーム 川西雄太さんは「以前は『夫に先立たれて』と申し込まれる方が多かったのですが、最近はご夫婦でお申し込みされるケースが増えています。お子さまが遠方に暮らしているなどの事情ですぐには頼れないから、どちらが残された場合でも安心できるように、と」と説明する。
自分が死んだときに、相続人になり得る血族が皆無という、天涯孤独のケースは案外少ない。子がいなくても、おいやめいなどの血族はいるが、物理や心理的な距離感などから緊急時の対応が頼みにくい。だから、おひとりさま信託を選ぶ。そうしたケースが典型になっているのは当初から変わらない。
コロナ禍を経て大きく変化したのは、希望する葬儀のスタイルだという。「サービス開始当初は、(お世話になった多くの人に参列してもらう)一般葬を希望されるケースが大半でした。しかし、最近は(身内とごく少数の知人だけが参列する)家族葬や、(通夜を省く)1日葬、それに(火葬場に直行する)直葬を希望される方が増えています」(川西さん、以下同)
一般的な葬儀でも、コロナ禍を経て家族葬等の小規模・少人数タイプが増加しているから、その流れを共有しているといえる。加えて、契約者(委託者)が高齢化しており、契約時点で参列が可能な知人が相対的に減少していることも関係していそうだ。
デジタル遺品の対応ニーズは5割
では、現在の契約者はどんな死後事務を委任しているのだろうか。
「ご葬儀と埋葬に関しては、ほぼ皆さんが希望を記載されます。次いで、家財の処分や公共サービス、クレジットカードの解約、それに訃報の連絡ですね。9割くらいの方が委任されます」
SNSアカウントや、スマホの中身の消去といったデジタル遺品の指定は約5割に及び、ペットに関してはそれ以下の割合で、意外と少数という。ペットを飼っている人が少数というわけではなく、「ペットに関しては別のツテでお願いを済ませている方が多いようです」とのことだ。
ここで筆者の主観を挟ませてもらうと、デジタル遺品の指定率は予想以上に高いと感じた。契約者の高齢化が進めば、デジタルの所有率は下がると予想される。また、おひとりさま信託では特定のデータの削除や開示、SNSへの訃報掲載といった細かな指定ができないため、ヘビーに活用している人ほど、ペットのように別の手段に頼るのではないかと思えたのだ。
それだけデジタルの持ち物が普及しており、デジタルの持ち物は最終的に消したいと考えている人が、年代を問わず増えているということなのかもしれない。
なお、SNSなどのアカウントの削除にはIDやパスワードの他に、二段階認証用の一時パスワードを受け取る電話番号やメールアドレスが必要になることが多い。「未来の縁-ingノート」にあるデジタル遺品の項目を把握するだけでは完遂に至るのは難しいが、現場では大きなトラブルは起きていないそうだ。
「死後事務の工程でスマホやパソコンに触れさせていただくこともあり、現在のところは問題なく対応できています。ただ、ご契約時から何年も経過すると、メールアドレスの変更であったり、サービス側の改変等もあったりして、対応が難しいケースも出てくると思われます。そのため、デジタルデータやアカウントについては、日頃からご自身でできる限り進めておいてくださいというご案内をしております」
委任された情報をベースに、できる限りのことはしてくれるが限界はある。本人がIDとパスワードを忘れてしまったサービスは手出しができないし、スマホやパソコンの自動バックアップ先を把握していない場合は追跡しきれない。このあたりはデジタルの構造上の問題になるため、今後も持ち主自身が日頃から意識して整理しておく必要がありそうだ。
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