デジタル資産継承サービス「アカレコ」が指し示す半世紀先を見据えた終活という課題:古田雄介のデステック探訪(1/2 ページ)
2023年8月に登場したばかりの「akareco」(アカレコ)は、「40代からはじめる、プレ終活 まずは、デジタル資産の整理から」のキャッチコピーを掲げる。その後の人生にずっと付き合うことを想定したサービスだ。月額税込み495円。その狙いと勝算を尋ねた。
サブスク契約などのややこしい情報を一元管理 そして備えも
2022年のQRコード決済の取引高は7.9兆円に達し、国内におけるサブスクリプションの市場規模は1兆円規模となった。デジタル資産やデジタル関連の契約を個人が複数持つことが当たり前になる一方で、利用者が倒れたときの後処理は遺族に一任される状況が続いている。
そんな現状に、利用者本人が備えるために作られたのが「akareco」(アカレコ)だ。
akarecoは2023年8月に登場したばかりのデジタル資産継承サービスで、所持しているデジタルの持ち物を管理するツールと、自分の死後に「継承者」に託す仕組みをセットで提供している。WebブラウザやiPhone/Android用の専用アプリで利用できる。
ログインページには「銀行・証券・仮想通貨」や「スマホ・PC」、「サブスクアカウント」などの項目が並んでいるので、自分が所持するデジタルの持ち物を随時入力していけばいい。所持品の一覧をExcelやCSVファイルで一括入力できるテンプレートも提供されており、本腰を入れて登録するならそちらを用いると効率的だ。
入力した情報は、万が一のときに引き継ぐか否かを個別に決められる。趣味のSNSアカウントや、そのパスワードなど、引き継ぎたくない情報があれば対象の項目を「継承しない」に設定すればいい。また、各情報にタグを最大5つまで設定できるので、「仕事」「プライベート」「家族」「重要」など、自分なりに工夫した整理もやりやすい。
なお、SNSやブログなどの情報は、死後に「akareco Web墓場」で自分のプロフィールとともに公開する設定も可能だ。公開ページには投げ銭(お弔い銭)機能がついており、弔問者が送った金額が継承者の口座に振り込まれる仕組みを備えている。その他、継承者だけに送るメッセージを残すこともできる。
継承者は1人だけ設定可能
では、利用者が死んだ後はどうなるのか。
利用者の死は、「継承者」が運営元に死亡診断書のデータを送ることで運営に伝える仕組みだ。
内容に不備がなければ、約3営業日後にakarecoから継承者にログイン情報を記載したメールが届き、本人が引き継ぎたいと思った情報やメッセージが受け取れるようになる。Web墓場を有効にしていた場合、そちらも同時に公開される。
つまり、継承者の能動的なアクションが必要になるため、契約者自身があらかじめもろもろの段取りを伝えておくのが確実だ。「継承者」を登録する際、継承者のメールアドレスにakarecoから通知メールが届くので、それをきっかけに説明するのがよいだろう(設定によって非通知も可能)。
以上のサービスを、月額税込み495円で提供している。ただし、初回90日はトライアル期間として無料としており、2023年9月からは39歳以下の契約者は無料で利用できるようになる。なお、継承者は課金なしで永続的に利用できる。
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