脳腫瘍から始まったデジタル終活ツール「まもーれe」:古田雄介のデステック探訪(1/3 ページ)
自分の身に何が起きてもデジタルの持ち物を託すべき人に託し、隠したいものは隠しきる。実体験からそのためのWindowsツール「まもーれe」を開発したMONET代表の前野泰章さんが重視したのは、徹底したローカル化だった。
「託す」も「隠す」もオフラインで完結できる
デジタルの持ち物やアカウントなどの管理と操作にWindowsを使っているなら、緊急時の備えに「まもーれe」(マモーレ)が役立つかもしれない。
PC内にある権利関係の重要書類や、内緒にしておきたいプライベートなデータなどを一元管理できるソフトで、上手く活用すれば、いざというときに託すべき相手には託したいデータを託し、消したいデータはバックグラウンドで削除できる。残された家族が相続に必要な情報を得られずに苦しんだり、知られたくなかった一面を家族や同僚に知られたりする悲劇を回避するツールといえる。
公式サイトで一般ユーザー向けの「まもーれe Lite」を申請すれば、無料で利用できる(士業ユーザー向けのPro版もある)。対応OSはWindows 10(64bit)のみだが、筆者環境ではWindows 11でも問題なく動作した。
インストールしてからパスワード認証を行えば、後はオフラインで操作できる。
初期設定で家族や友人などの託したい相手を個別に登録し、それぞれにIDとパスワードを割り振るのがユニークなところだ。
その上で託したいファイルやフォルダーを登録していき、誰に何を託すかを指定していける。例えば「パートナー」には利用している金融機関の口座名やID/パスワード、緊急連絡先リスト、遺影に使ってほしい写真などが入ったフォルダーへのアクセス権を託し、「友人」には共通の趣味のデータやSNSアカウントの処理を委ねるといった使い方ができる。
そういった個別に託す相手を指定したいファイルは、「重要データ」フォルダーの階層にショートカットを置いて、オープンに共有したいものは「開示データ」、そっとしておいてほしいファイルは「秘密データ」フォルダーに登録する。「秘密データ」は、自分でない誰かがログインした際に削除する設定を選ぶことも可能だ。
ゲストのログインが「秘密データ」抹消の合図
そして緊急時に、本人が残したPCを家族や友人が開くと、まもーれeのログイン画面が表示される。生前に各人に付与されたパスワードを入力すると、託された=アクセス権を渡されたフォルダーやファイルだけが開示され、中身を閲覧したりUSBメモリにコピーしたりできる仕組みだ。
全ての設定情報はAES 128bitで暗号化されており、盗み見はできない。このとき、「秘密データ」を削除する設定にしていると、何も告げずにバックグラウンドで抹消作業が完了することになる。
こうして託すべきものは託すべき相手に託し、隠したいものは隠しきるという“デジタル終活”を完遂できるわけだ。
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