メガバンク提供の情報管理サービス「SMBCデジタルセーフティボックス」が解決する悩み事:古田雄介のデステック探訪(1/2 ページ)
今の時代は、IDやパスワードなどのもろもろを死後のことまで考えてメガバンクに預けることもできる。三井住友銀行が「SMBCデジタルセーフティボックス」の本格提供を始めて1年。どんな人にどのように生かされているのか。その実情をのぞいた。
資産と契約、パスワード、動画メッセージまでまとめて保管
「SMBCデジタルセーフティボックス」は、三井住友銀行に口座を持つ人を対象にした情報管理サービスだ。
サービスの申し込み後にオンラインのマイページにログインすると、預金口座や保険、有価証券に不動産といった資産情報の他に、医療情報や介護と葬儀の希望、動画を含む個々人に向けたメッセージなどを保存しておける。利用しているデジタルツールのIDやパスワード、サブスク契約などを書き留める項目もあり、日頃の資産管理ツールとエンディングノートを兼ねたような構成になっている。
利用者は必要な項目を選んで自由にメモすればいい。本人はスマホやPCでいつでも閲覧できるし、書き換えることもできる。また、同行の本店や支店でスタッフのサポートを受けながら設定や閲覧をする方法も提供しており、デジタル機器の操作に不得手でも利用可能だ。
登録した情報は、条件に応じて、あらかじめ指定した「受取人」に公開されることになる。受取人は三親等までの親族を対象に最大10名まで登録できる。「医療」や「介護」、「葬儀」に関する希望は生前から共有されるが、資産情報やパスワード関連の情報開示は利用者が個別に設定する。そして死亡時には全ての情報が受取人に開示される仕組みだ。
利用料は月額990円(税込み)となる。ただし、ライフサポートサービス「SMBCエルダープログラム」に加入している場合は無料で使える。
死亡時の自然なプロセスで発動する
このサービスが頼もしいのは、死亡時の発動条件が「遺族による連絡」となっているところだ。死後発動系のサービスではよくある構造だが、銀行が運営しているため実行力をかなり高く見積もれる。
一般に人が亡くなると、その人の預金口座は相続の分配が確定するまで出入金が一旦停止(凍結)することになる。しかし、一部の著名人や高所得者を除いて、銀行側の判断で凍結にいたることは滅多にない。ほとんどは遺族等が死亡の事実を伝えることで銀行はその事実を知り、凍結処理を施すことになる。
つまり大抵の場合、人が亡くなれば遺族等が銀行に連絡するものなのだ。その一般的なプロセスを経るだけで、SMBCデジタルセーフティボックスの発動スイッチがきちんと押される期待が持てる。この利点は非常に大きい。
2022年2月に本格スタートして1年。会員数は非公開としているが、順調に伸びており、既に会員が死亡して受取人に情報が公開された実績も積み重ねているという。
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