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壊れにくい端末から校務の自動化、メタバース不登校支援まで! 教育現場の課題に応える最新ITソリューションを見てきたEDIX 東京 2026(1/2 ページ)

Next GIGA(GIGAスクール構想の第2期)では、学習用デバイスのシェアに大きな変化が出ている。このことは、EDIX 東京 2026に出展したPCメーカーやプラットフォーマーのブースにも一定の“変化”を与えている。「端末」「AI」「ネットワーク」の3軸でGIGAスクール構想の第2期(Next GIGA)とDXハイスクールに向けた取り組みを見てみよう。

 5月13日から15日にかけて東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された教育IT総合展「EDIX 東京 2026」は、学校を始めとする教育機関や、教育機関向けに学習用デバイスや周辺機器、各種ソリューションを提供する企業に向けた日本最大級の展示/商談会だ。

 文部科学省が2019年からスタートした「GIGAスクール構想」を通して義務教育課程(※1)に導入された児童/生徒用の学習用デバイスは、2024年度から順次入れ替え(リプレース)の時期に入っており、2025年度と2026年度にピークを迎えている。一方で後期中等教育(高等学校)課程では、同省が2024年度から「DXハイスクール(高等学校DX加速化推進事業)」を推進しており、2026年度には全高等学校の4分の1に相当する1249校が事業に採択され、ICTへの継続的な投資が続いている。

(※1)小学校、中学校、義務教育学校(小学校と中学校を統合した学校)、中等教育学校の前期課程(中学校相当)、特別支援学校の小学部/中学部

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 義務教育課程における学習用デバイスのリプレースに当たっては、調達方法の変化も相まって 端末のOS別シェアに変化が見える。MM総研が2025年7月に公表した調査では、2021~2023年に行った調査の統合値と比べてChromeOSが18ポイント増の60%に、iPadOSが2ポイント増の31%となった一方、Windowsが19ポイント減の10%になってしまった。

 このシェアの変化は、EDIX 東京 2026に出展したPCメーカーやプラットフォーマーのブースにも一定の“変化”を与えている。本稿では、会場で目にした主要なブースから、「端末」「AI」「ネットワーク」の3軸でGIGAスクール構想の第2期(Next GIGA)とDXハイスクールに向けた取り組みを紹介する。


EDIX 東京 2026は東京ビッグサイトで開催された

学校現場に“特化”したNECPCの「NEC Chromebook Y4」

 NECパーソナルコンピュータ(NECPC)ブースでは、Next GIGA向けに投入した学習用デバイス「NEC Chromebook Y4」を中心に展示していた。同社はGIGAスクール第1期で約160万台の端末を出荷した実績がある。Y4は、そこで培った経験をデバイスの設計に反映した後継機だ。


NECPCブースの全景。「NEC」の大きなサインを掲げたアーチ型のエントランスが特徴的だった

ブースで展示の中心だった「NEC Chromebook Y4」

 Y4で最も力を入れたのが、教室特有の事故への対策だ。本機種では、2基のUSB Type-C端子や3.5mmオーディオジャックを本体左側面に集約し、開口部を最小限にとどめている。これは机上に置かれた鉛筆の芯が端子の穴に入って発煙するリスクを極小化するための取り組みだという。

 子どもの多くは右利きで、机上の鉛筆も右側に置かれることが多い。そうなると、学習用デバイスは筆記用具の左側に置かれることになる。それなら、端子を左側にすれば鉛筆の芯が入ってしまうトラブルをグッと減らせる――そういうあんばいだ。

 端子類に関する工夫は配置だけでなく、従来モデルよりも位置を高く調整したという。これは机上で鉛筆が転がってきても、芯が侵入しにくくするための配慮である。

 学校で発煙事象が起きた場合、学校は消防に報告しなければならない。担当者は「教職員の負担を減らすためにも、こうした対策が必要だ」と説明した。


USB Type-C端子と鉛筆。左側に集中配備したのと端子自体の位置を少し高めにしたのは、机上で鉛筆の芯が端子の穴に入るトラブルを防止するための取り組みだ。なお、Y4はそもそも開口部(≒ポート類の搭載)を必要最小限に抑えている

 本体の落下対策では、本体の外周を弾力性と強度を兼ね備えたTPU素材でカバーした。

 担当者によると、第1期向け端末の修理では、落下による故障のうち「トップカバー」の破損が43%、「液晶パネル」の破損が24%を占めていたという。そこでY4では液晶ディスプレイのカバーガラスをCorning製の強化ガラス「Gorilla Glass」にすることでペンを挟んで閉じても割れにくくした

 バッテリーは販売店で交換できる構造に変更し、メンテナンス時の作業工数を削減した。

 Y4には学習体験を高める工夫もある。ディスプレイを奥側に360度回転させてタブレットとして使えるコンバーチブル式2in1構造で、画面に鉛筆で書き込める「鉛筆タッチ」に対応した。書き味は滑らかで、手のひらが画面に触れても反応しない「パームリジェクションも備える。

 書き込んだ計算式を自動で答えに置き換える機能も搭載した。話し合いの場で子どもが思考を整理するツールとして使える設計だ。


Y4のディスプレイパネルは鉛筆にも反応する。鉛筆で書いた線がそのまま画面に反映される

 保証面では「アクシデントダメージプロテクション(ADP)」を用意した。ADPは通常保証ではカバーできない破損、具体的には落下や水ぬれによる故障にも対応できる拡張保証で、修理費の上限はない。小学校や中高一貫校の在学期間に合わせて、通常保証/ADPは最長6年まで加入(延長)できる。

 修理は群馬の自社工場に部品を集約し、「引き取り1日、修理1日、返送1日」の最短3日で戻る体制を整えている。NECPCは、2028年度までに200万台の提供を目指しているとのことだ。

「メタバース支援」「先生用Chromebook」で間口を広げるレノボ・ジャパン

 レノボ・ジャパンのブースでは、最新のChromebookやワークステーションなどデバイス展示の合間に、教育向けソリューションの提案エリアが組み込まれていた。中央に大きく配置されていたのが、大日本印刷(DNP)と共同で展開する「レノボ・メタバース・スクール(LMS)」だ。

 文部科学省の「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の最新版(2025年10月公表分)によると、2024年度の小・中学校における不登校児童/生徒は35万3970人に達し、12年連続で過去最多を更新した。一方で、不登校児童/生徒の“受け皿”となる「教育支援センター」の不足は深刻な状況にある。

 LMSは、この状況に対処すべく提供されているもので、3Dメタバース上に教室や交流スペースを設けることで、学校に通いにくい児童/生徒の“居場所”を提供している。Webブラウザ上で動くため、児童/生徒の学習用デバイス(場合によっては手持ちのスマートフォン)でも問題なく動作する。

 このは東京都では28自治体で「バーチャル・ラーニング・プラットフォーム(VLP)」として、静岡県では35自治体の約800校が参加する「しずおかバーチャルスクール」として提供されている。

 ブースでは、しずおかバーチャルスクールの運用事例が紹介されていた。静岡県ではメタバース内で交流を深めた児童/生徒たちがリアルで集まり、マクドナルドで職業体験を行ったケースもあるという。「メタバースは最初の1歩で、そこから社会とつながる」という担当者の言葉が、サービスの方向性をよく表していた。


Lenovo Metaverse Schoolの教室空間。アバターでコミュニケーションを取ることができる

LMSの導入事例パネル。教員側と生徒側それぞれの画面を展示していた

 ブースの一角で目にとまったのが、教員の校務利用を想定した「Lenovo Chromebook i Gen 11」だった。

 校務向けにはWindows PC(場合によってはMac)を使うケースが多いのだが、「Google Workspaceで業務が完結する学校では、Chromebookで十分という声が出てきている」とのことで、校務でもChromebookを使うニーズは高まっている。

 事実、Google WorkspaceのようなWebアプリで業務が完結するなら、ChromebookはもちろんiPadを始めとするタブレット端末も候補になりうる。担当者は「Chromebookを売りたいわけではなく、学校が取り組む教育DXに合わせて(使う端末を)提案する」と強調する。例えばMicrosoft Officeが必要ならWindows PCを勧め、Google Workspace中心の学校にならChromebookを提案するといった具合だ。

 「初代GIGAスクール構想で浮き彫りになった課題を、Next GIGAでは真面目に(解決しようと)考えている」という担当者のコメントが印象に残った。


教員の校務利用を想定した「Lenovo Chromebook i Gen 11」

「国内生産」「国内サポート」でWindows派に応えるマウスコンピューター

 マウスコンピューターのブースでは、教員向け14型ノートPCや学習用デバイスに適した11.6型タブレットを展示していた。


「学ぶ人を 教える人を 応援するマウス」を掲げたマウスコンピューターのブース

 担当者が訴求の中核に据えたのは、「製品仕様」ではなく「国内生産と国内サポート」だった。「製品自体は、他社と大きな差がない。(納入の可否が)価格勝負になる中で、海外メーカーには真似できない国内サポートが強みになる」と語る。

 担当者によると校務用PCの傾向は2極化していて、第14世代Coreプロセッサよりも古いCPUを採用する低価格モデルを選ぶパターンと、最新世代の高スペックPCを選ぶパターンに分かれるそうだ。最近は「将来を見据えたスペック志向」で後者がジワジワと増えているともいう。

 新製品では13.3型の有機ELディスプレイを搭載した「MousePro C3」を教員/大学生向けノートPCとして展示していた。


13.3型の有機ELディスプレイを搭載するノートPC「MousePro C3

 主に学習用デバイスにおける「ChromebookとWindowsの動向」について、担当者に話を聞くと「Chrome(book)に取られたところは、確かに取られている。ただ、Windowsが入る余地もないわけでもない。むしろ、Windowsに戻ってくるケースも見受けられる」とのことだ。

 なお、同社は新しいChromebookを発表する予定は当面ないという。担当者は「個人的にも、Chromebookじゃなくてもいいのではないかと思う」と語った。

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