連載

ノートPCのバッテリー持ちを劇的に変えた新世代SoC──Intel、Qualcomm、AMDの最新動向を探る笠原一輝の「もう、どうなってもいいや!」(2/2 ページ)

最近のノートPCは、なぜこれほどまでにバッテリー駆動時間が長くなったのだろうか。AI PCに採用されている最新のCPU/SoCを例に、バッテリー持ちの鍵を握るチップの消費電力の仕組みと、各プロセッサメーカーの最新動向を解説する。

前のページへ |       

アイドル電力が長時間バッテリー駆動の鍵に

 ノートPCは、アイドル/PL1/PL2への移行を繰り返しながらWindows OSを動作させているが、実のところ、その多くの時間はアイドル状態にある。

 例えば、あなたがノートPCでこの記事を読んでいる場合、画面を見ているだけで、他には特に何もしていない時間が長いだろう。その間、SoCはアイドル状態となり、クロック周波数と消費電力は最小限に抑えられる。

 また、WordやExcelで作業しているときも、常に文字を入力しているわけではない。そのような場合も、SoCはこまめにアイドル状態へ入り、必要に応じてPL2やPL1付近で動作する。

advertisement

 一般的に、ノートPCをバッテリーで使用している時間の90%近くはアイドル状態だといわれている。アイドル時の消費電力が低いほど平均消費電力も下がるため、アイドル電力の削減が、長時間のバッテリー駆動を実現するSoCの重要な鍵となる。


Qualcommの上位モデル「Snapdragon X2 Elite Extreme」

 もともとアイドル時の消費電力が低かったのは、Arm系CPUを搭載したQualcommのSnapdragonシリーズだ。スマートフォンやタブレットへの採用を前提に開発されてきたArm CPUは、アイドル時の消費電力を低く抑える設計が重視されており、その結果、平均消費電力が下がり、バッテリー駆動時間を延ばしやすかった。

 一方、モバイル由来の製品は、従来だとPL1やPL2付近での性能が低く、PC向けとしては十分ではないとされてきた。

 しかし、2024年に投入されたSnapdragon Xシリーズでは、Qualcommが自社開発したOryon CPUを搭載し、高負荷時の性能が大幅に向上した。AMDやIntelのx86プロセッサーに迫る性能を実現したことも話題になった。

 2026年、QualcommはSnapdragon X2シリーズを市場に投入しており、Microsoftの「Surface Pro 13インチ(第12世代)」、「Surface Laptop 15インチ(第8世代)」、「Surface Pro 13.8インチ(第8世代)」などに採用されている。


Intelの開発コード名:Panther LakeことCore Ultra(シリーズ3)

 それに対して、従来のAMDやIntelのx86プロセッサーは高負荷時の性能を重視しており、アイドル時の消費電力低減ではArm系製品に後れを取っていた。

 この状況を大きく変えたのが、Intelが2024年から2025年にかけて投入したCore Ultra(シリーズ2)だ。製品群には新しいCPUコア設計の「Lion Cove」や「Skymont」などが採用され、アイドル時の消費電力を抑えながら、高負荷時の性能も高めた。その後継が、開発コード名「Panther Lake」で知られるCore Ultra(シリーズ3)だ。


こちらはAMDのRyzen AI 300シリーズ(開発コード名:Strix Point)

 なお、AMDの現行製品である「Ryzen AI 300シリーズ」(開発コード名:Strix Point)や、その改良版となる「Ryzen AI 400シリーズ」(同Gorgon Point)では、高負荷時の電力効率が改善されている。

 一方、アイドル時の消費電力はSnapdragonやCore Ultraほど低く抑えられていない傾向がある。そのため、同じシャシーを採用したノートPCで比べると、SnapdragonやCore Ultra搭載機よりバッテリー駆動時間が短くなる場合がある。

 その意味で、AMDについては2027年登場予定のZen 6ベース製品での改善が期待される。

前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.