Windows 10とともに登場した新しい開発ツール「Visual Studio 2015」は、製品構成が大きく変わっている。各エディションの概要をはじめ、開発規模や目的に合わせた選択ポイントを整理しよう。
「Windows 10」の一般提供が2015年7月29日から開始されたのに合わせて、その開発環境であるVisual Studioもまたアップデートが行われ、最新の「Visual Studio 2015」となった。
Windows 10の共通動作基盤「Universal Windows Platform(UWP)」向けのアプリを作成するだけでなく、既存のアプリを新環境でテストしたうえで配布したいというケースもあるだろう。今回はそれぞれのニーズに合わせた開発ツールの選び方についてみていきたい。
前バージョンの「Visual Studio 2013」では、「Professional」「Premium」「Ultimate」の有償サブスクリプションに加え、無償版として「Express」があり、主に4種類のエディションが提供されていた。
これに対して、最新の「Visual Studio 2015」では有償サブスクリプション版が「Professional」と「Enterprise」の2種類へと統合され、さらに新しい無償版として従来のExpressに代わり「Community」が追加されている。それぞれの特徴を見ていこう。
従来のExpressは「機能限定版」という形でVisual Studioの入門版的な扱いだったが、新しい「Visual Studio Community」は後述のProfessionalと機能的にはほぼ同等となっている(MSDNサブスクリプションは別途必要)。
ただし、ライセンスの利用規約が比較的緩かったExpressに比べ、Communityの利用は下記の場合にのみアプリ開発で利用可能だ。
※エンタープライズの定義は「250台を超えるPCがある(もしくは250人を超えるユーザーがいる)」「年間収益が100万米ドルを超える」のいずれかを満たす組織
つまりアカデミック用途やオープンソース以外の用途では、個人や小規模開発だけがライセンスの対象となり、商用製品または企業内での利用を想定したアプリの場合、多くはVisual Studio Communityが利用対象外となることに注意したい。
利用制限が一切ないVisual Studioの基本となるエディションが、「Visual Studio 2015 Professional with MSDN」だ。MSDNのサブスクリプションにより、Windows、Windows Server、Windows Embeddedの各OSライセンスのほか、SQL Serverのライセンスが入手できる。
前述のようにCommunityは一般企業での利用においてライセンス条件が合致しにくいため、Professional以上から検討することをおすすめしたい。
なお、Visual Studio 2013以前のバージョンでMSDNのサブスクリプション契約を行っていた場合、エディションの統合に伴い従来のProfessionalユーザーはこのVisual Studio 2015 Professional with MSDNへと自動的に移行される。
以前のバージョンではPremiumとUltimateの2種類のエディションに分割されていたものが、エディション統合によりEnterpriseとされたものが、「Visual Studio Enterprise with MSDN」だ。そのため、旧Premium/UltimateのユーザーはVisual Studio 2015でそのままEnterpriseへと移行することになる。
PremiumとUltimateでは開発規模や利用可能なテストツールの有無で両者が区別されていたが、Enterpriseの登場により、Professional以外はすべてUltimate相当の機能が入手可能になった。
このエディション統合によるメリットの1つは、MSDNサブスクリプションの低価格化だ。例えば、米Microsoft Store Onlineの場合、Ultimateでは1万3299米ドル(新規)/4249米ドル(更新)だったものが、Enterpriseでは5999米ドル(新規)/2569米ドル(更新)まで値下がりした。リセラーによる割引販売が行われるケースもあるが、Ultimate相当の機能をより安価に利用できるようになったことが大きい。
EnterpriseとProfessionalの違いは、MSDNサブスクリプションと利用可能なツールの種類による。ProfessionalのWindows OSライセンスに加え、EnterpriseではSharePoint、Exchange、Dynamics、Power BI Proなどのサーバ製品のほか、Office Professional、Office 365 Developer Subscriptionまで利用可能になる。
このほか、Microsoft Azureテスト用のサービスクレジットが単体テストあたり月額150ドルまで付与されるなど、ProfessionalにおけるMSDN契約の月額50ドルより高く設定されているほか、Professionalではほとんど利用できない高度なテストツール群がEnterpriseでのみ利用可能となっている。特にVisual Studio 2015で新規追加されたIntelliTestなどの自動化テストツールはEnterprise専用だ。
このように、一般的な商用アプリ開発ではProfessionalまたはEnterpriseを利用する形だが、Office製品や各種クラウドサービスを絡めた開発、大規模展開を想定したテストでは、MSDNサブスクリプションやテストツールが充実したEnterpriseが必要となることを覚えておきたい。
同じ商用アプリ開発であっても、利用形態や展開規模で選択すべきエディションは異なる。展開規模が大きくなるほどOSを含めた混在環境が複雑化するため、よりテスト工数が増えることになる。こうした点を踏まえ、Enterpriseを中心として、最適なエディションを選択していただきたい。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2015年9月3日