結局、PC用Blu-rayドライブの使い勝手はどうなのよ?──アイ・オー「BRD-UM2」(2/2 ページ)
PC用のBlu-rayドライブが間もなく登場する。価格は10万円以上と、いまどきの個人向けPC周辺機器としては“かなりハイエンド”な価格となるようだが、その実力・使い勝手はどうなのか。今回はUSB外付けタイプとなる「BRD-UM2」を試用した。
BD最大2倍速/DVD最大8倍倍速/CD最大32倍倍速の書き込みをサポート
待望のBDメディアへの書き込み速度はライトワンスのBD-R、リライタブルのBD-REともに2倍速記録をサポートする。
ちなみにBDは等倍速が36Mbpsであり、バイト/秒単位に換算すると約4.5Mバイト/秒に、2倍速だと約9Mバイト/秒となる。さらにDVDドライブにおける倍速単位に換算すると、だいたい6.5倍速という値に相当し、25Gバイト(実際に記録できる容量は約23.2Gバイト)の1層メディアいっぱいに2倍速で書き込むと50分ほどを要する計算となる。メディアあたりの書き込み時間としては現状の最速DVDドライブと比べてかなり遅いという印象になるが、同程度の容量のデータを書き込むなら概ねDVDと同じ感覚といっても差し支えなさそうだ。
*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***
テストPC | |
---|---|
CPU | Athlon 64 3500+(Venideコア) |
メモリ | PC3200 DDR SDRAM 1Gバイト(512Mバイト×2) |
マザーボード | ギガバイト「GA-K8N51GMF-9」(nForce 410+MCP430) |
グラフィックス | チップセット内蔵 |
HDD | マックストア「DiamondMax Plus9」(Serial ATA 200Gバイト) |
OS | Windows XP Professional SP2 |
2倍速対応のBD-REメディアを使用して書き込み時間の計測をしてみよう。比較対象として、単一ファイルおよび約2500個のファイルで構成するフォルダの2パターンで、1層DVDにほぼ満杯となる約4.3Gバイト分の書き込みと読み出しを行っている。使用した環境は右記の通り。
使用ソフトウェアは、ライティングソフト「Ulead BurnNow!」、Windows Explorerやアプリケーションから直接書き込みできるパケットライトソフト「Ulead Data ADD」、BDAVオーサリングソフトの「Ulead BD-DiscRecorder」を用いている。なおISOやISO/UDFでは4Gバイトを超える単一ファイルを書き込めないため、Ulead BD-DiscRecorder以外ではUDF 2.5フォーマットで統一した。
またUlead BD-DiscRecorderでは、再エンコードなしで1層DVDメディアに収まる約4.3GバイトのMPEG-2ファイルを用意し、これをBDAV形式で記録する方法とする、純粋にメディアへの書き込みに要した時間のみを計測している。ちなみにBDAV形式はDVDではDVD-VRに相当するフォーマットであり、近い将来、登場が予定されるBD-ROM/BD-R/BD-RE再生に対応するBD-VideoプレーヤーやBD-Videoレコーダーでも再生が可能とされている(ただしこれらの実機が登場していない現状では、再生が保証されるわけではない)。
なおテストでは16倍速記録対応のDVD-Rメディアを用いて、本機の最大書き込み速度である8倍速で約4.3Gバイトのファイルを記録した場合の結果も追加してある。
「BurnNow!」を用いた場合のBD-REの書き込み速度は等倍速程度、DVDでの倍速単位に換算すると3倍速程度に留まっているが、これはたとえ1セクタでもエラーが許されないデータ記録を行う場合を想定し、BD-REではDVD-RAMと同様に、ベリファイ処理を原則として行うためだ。また「Data-Add」を用いても単一ファイルの場合にはBurnNow!での記録速度とほとんど変わらないが、約2500個のファイルを記録する場合は記録終了まで30分以上かかり、単一ファイルの場合と比較すると約1.7倍の時間がかかっている。これはファイルシステムの更新が頻繁に行われるためと考えられ、BDに関わらずCD/DVDメディアでパケットライトを用いた場合にもよく見られる傾向だ。
一方、読み出し速度に関してはほとんど傾向が変わらなかった。今回はData-Addで記録したファイルをWindows ExplorerでHDDにコピーした時間を計測しているが、ほぼ2倍速相当で読み込まれており、単一ファイルでも2500個のファイル読み出し時でも大きく時間は変わらない。
もう一つ、「BD-DiscRecorder」を用いた場合は記録時間で10分強となり、2倍速相当で記録できた。これはBurnNow!やData-Addで記録する場合と異なり、ベリファイレスでの記録も許容されるためだと思われる。これはDVD-RAMでいう、連続性のある動画データであれば読み出せない部分ができても前後のデータからある程度を補完する、リアルタイムにデータを記録/再生するためのAV機器向けモード「AVライト」に相当する(関連記事参照)。
ただし今回はBD-REのみでテスト行ったため、BD-Rでの書き込み速度は計測していないが、ライティングソフト(つまり今回は「BurnNow!」)を用いた場合において、BD-Rであればベリファイレスで記録できるはずなので、悪くてもBD-REの場合の半分ほどの所要時間で完了するはずだ。
使用時の感覚としては、DVDの8倍速記録に近いと感じた。とりあえずメディアの価格を考慮しなければ(もっともこの点が重要だったりもするが)、「より大容量のDVDメディア」のような感覚でデータ保存には使えそうだ。
万人向けではないが、データ保存用としては多数のメリットも
ようやく登場した次世代光学ドライブの1つであるPC用のBDドライブだが、まだ一般PCユーザーにとっては現実感に乏しいのも事実だ。HD DVDとのフォーマット戦争もまだまだこれからということもあるだろうが、ドライブそのものの価格は非常に高価であり、BD映画タイトルもまだ登場していない。また、CDやDVDの場合は、CD/DVD-ROMドライブや再生プレーヤーが先行し、多くのユーザーがCDやDVDに記録できれば便利なのにという待望感から普及していった。対してBDの場合は、マニア向けに家庭用レコーダーが2003年4月頃から発売されていたが、PCへの搭載はようやくこの2006年夏モデルから始まったばかりだ。そもそも、現状はコピーコントロールの関係などからこの家庭用BDレコーダーで録画したものを本機では再生できない。
ただ、DVDに収まらないような「大容量データの保存先としてBDは現時点では悪くない選択肢だ」という考え方はできる。メディア単体の価格は1層DVD-RやDVD-RWにはもちろん現状では太刀打ちできないが、2層DVD-Rメディアに目を向けると、こちらはようやく800円台になってきたところ。例えば1層BDメディアに相当する容量で3枚必要と考えると、2500円前後となる計算だ。1層のBD-Rメディアはすでに1枚1500円前後で販売され、リライタブルのBD-REも2500円以下で購入できる。つまりバイト単価でいえば2層DVDメディアよりは安価である。
さらにいえば、2層DVDメディアの記録速度は2006年5月末時点でも8倍速が最大であり、これは2倍速のBD-R/BD-REの転送速度とさほど変わらない。もちろんこれもかなり偏った視点だが、このことからもDVDに収まらないデータのバックアップメディアとしてデータ用にBDを用いることも悪くないと思えるのである。ちなみにBurnNow!で「ISO」ないし「ISO/UDF」フォーマットで記録したBD-REメディアは、本機の付属ソフトを導入していない環境でも本機を接続するだけで読み出しが可能である。大容量データの比較的安全な(輸送時などの振動に強い)移動手段としての活用方法も想定できる。
……とはいうものの、現状では10万円前後というドライブそのもの価格には一個人ユーザーとしては躊躇してしまうものだし、価格という最大のネックを除いても、現時点で万人向けとして勧められる製品ではない。記録容量やバイト単価で換算したときのコストパフォーマンスに少々メリットがあり、かつ今買えば、心理的にかなり優越感にひたれる製品であることも間違いないが、もう少し市場が成熟し、一般ユーザーも導入できるほどの普及価格帯に下がってきた時のBD製品に大いに期待したいところだ。
関連記事
- 価格は10万円超──アイ・オー、PC用記録型Blu-rayドライブを発表
アイ・オー・データ機器は、本日発表されたパナソニック四国エレクトロニクス製ドライブを採用する、PC用Blu-rayドライブを6月に発売する。ATAPI内蔵/外付けUSB接続の2モデルを用意する。価格はATAPI内蔵タイプの「BRD-AM2B」で10万5000円から。 - 松下、PC用Blu-rayドライブを発表──OEM向けにはスリムドライブも投入
松下電器産業は片面2層記録に対応するPC用Blu-ray Discドライブを発表した。5インチベイに搭載するATAPI内蔵タイプで、発売は6月10日。価格は10万円前後。 - BDドライブ搭載やキーボード内蔵モバイルに注目のVAIO新製品発表
ソニーマーケティングはBlu-ray ディスクドライブを内蔵したVAIOシリーズ「VAIO type R」「VAIO type A」とキーボードを内蔵したモバイルPC「VAIO type U」を発表した。 - 超小型モバイルにBlu-ray、フルHDノート、地デジ──VAIOシリーズが担う「Quality」への自信
ソニーは、2006年PC夏モデルの第2段としてデスクトップ、ノート、超小型モバイルPCの3モデルを発表した。本モデルのテーマは「Quality is Power」。ソニーはコモディティ化が進むPC市場において、VAIOシリーズならではとなる、新テクノロジーやソリューションの投入によるプレミアム感・所有満足感をユーザーにアピールする考え。 - 富士通2006年夏モデル――地デジ対応ノートPCが登場、Blu-ray/HD DVD搭載モデルも
富士通は4月11日、FMVシリーズの2006年夏モデルとしてノートPC「FMV-BIBLO」5シリーズ21モデル、デスクトップPC「FMV-DESKPOWER」3シリーズ16モデルを発表した。地デジ対応機はノートPCを含む全12モデルに拡充されたほか、Blu-rayドライブを搭載したデスクトップPCやHD DVDドライブを搭載したノートPCも登場している。 - 東芝、HD DVD-ROM搭載の「Qosmio」を発表
- TDK、BD-R/BD-REメディアを発売
- リコー、記録型Blu-ray Disc/HD DVDをサンプル出荷
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.