TDP下がって使い勝手向上──TDP95ワットの「Phenom II X4 945」:イマドキのイタモノ(3/3 ページ)
Phenom II X4 955の125ワットというTDPにおじけづいていたユーザーにAMDが贈るTDP95ワット版のPhenom II X4 945が登場した。気になる消費電力はどうなった?
クロック相当のパフォーマンス。ピークで違いが分かる消費電力
Phenom II X4 945を3GHzという動作クロックで評価すると、CPU性能が直接的に反映される「Sandra 2009.SP2」や「Cinebench 10」といったベンチマークテストにおいて、Phenom II X4 955の約93.5%のスコアは妥当なラインといえる。一方で、同じ3GHzで動作するもののプラットフォームがAM2+とAM3と異なるPhenom II X4 940とPhenom II X4 945は、SandraのCPUベンチマークで同等、Cinebench 10ではPhenom II X4 945が若干良いスコアとなる。
この違いの原因として考えられるのは、プラットフォームが対応するメモリ帯域幅だろう。Sandraのメモリベンチマークでは、デュアルチャネルのDDR3-1333を利用するPhenom II X4 945で13.3Gバイト/sec、デュアルチャネルのDDR2-800を利用するPhenom II X4 940で10.3Gバイト/sec程度と結果に違いが生じている。全体を通してみるとPhenom II X4 945で優れたスコアになる傾向であるものの、その差はわずかだ。
Phenom II X4 945とPhenom II X4 940 BEの性能差はメモリアクセス頻度の高いアプリケーションではよりはっきりと出るが、そうしたアプリケーションをユーザーがどれだけ利用するのかで、適しているCPUが決まるだろう。
省電力性能では、ピーク時の消費電力が約230ワットのPhenom II X4 955 BEに対し、95ワット版のPhenom II X4 945は189ワットと約40ワットの差をつけている。また、TDPが125ワットのPhenom II X4 940に対しても95ワット版のPhenom II X4 945は10ワットほど低く抑えられている。その一方で、アイドル時の消費電力はどのモデルも115ワット近辺で横並びになった。
自作PC市場において、CPUの人気は最上位モデルとバリューモデルに集中し、ミドルレンジのモデルはそれほど選ばれない。ただし、95ワット版のPhenom II X4 945であれば、消費電力を低く抑えられるというメリットがある。それでいて、3GHzという高い動作クロックで十分なパフォーマンスも発揮する。micro ATXマザーボードで見られるTDP 125ワットのCPUをサポートしていない製品でも高クロックの最新Phenom II X4が使えるようになることは大きい。さらに、省スペースや省電力といったニーズの多いSI向けなどなど、Phenom II X4 945の95ワット版は日本市場において、存在価値の高いCPUと言えるだろう。
関連記事
- AM3を選ぶ「理由」がそろった──Phenom II X4 955のパフォーマンスをチェックする
高クロックモデルが不在だった“AM3”に3.2GHzの「Phenom II X4 955 Black Edition」が登場した。AM2+版Phenom IIの最高クロックを超える本命Phenom II X4の性能を検証する。 - 早くも登場AM3──DDR3対応“Deneb”は自作PCユーザーの“本命”なのか?
“DDR2”Phenom IIから1カ月。DDR3に対応したPhenom IIが登場する。しかも自作PC向けには「810」「720」「710」のみ。その微妙なパフォーマンスを検証しよう。 - “45ナノ”でPhenomが飛翔する──“Denebコア”Phenom II X4の性能に迫る
登板イニングが予定より長かった65ナノ版Phenomに、ようやく45ナノプロセスが加わった。消費電力やパフォーマンスがいかに改善されたか検証する。 - 「P、ウチでは扱わないからねぇ」――PCパーツショップの複雑な心境
GeForce GTX 285やPhenom II 920など、アキバ電気街には今週も注目アイテムが入荷。しかし「VAIO type P」の発売で盛り上がったのは一部の店舗だけだった。どうして? - CPU値下げ競争やHDD不具合など、いろいろあった1月のアキバ
2009年の幕開けとともにPhenom IIやGeForce GTX 295が店頭に並び、CPU市場では価格改定が発生。一方、低価格化&大容量化が進むHDDでは、シーゲイト製品の取り扱いが一時中断するなどの騒ぎがあった。 - 「金返せ!って言われても……」シーゲイト製HDDの波紋
シーゲイト製HDDの一部に不具合が発生したことで、PCパーツショップは一時的に取り扱いを中止。先週末までに多くのショップが再開したが、金曜日の時点では中断を貫く店舗もあった。対応の違いはどうして起こった? - 2009年のAMDは「チェンジをチャンスに変える」
日本AMDは、1月29日に2009年の事業方針説明会を行い、AMDが注力していく分野や2010年にかけてのロードマップなどが紹介された。 - 「2009年になって、ようやくAMDの力が出せたかなと」――Phenom IIで飛躍するAMD
1月10日に登場した新型CPU「Phenom II」にあわせて、AMDがユーザーイベントを実施。インテル製CPUとのベンチマーク対決やオーバークロックの解説など、いろいろと踏み込んだ内容だった。 - 「AMDが予定通りだなんて……」順調なスタートを切ったPhenom II X4
アキバ電気街に、AMDの新型CPU「Phenom II X4」や、NVIDIAの最上位GPU「GeForce GTX 295」などの大物が入荷。年初から話題に事欠かない状態だ。 - AMD、45ナノ“Shanghai”Opteron発表──Denebは「Phenom II」に
AMDのCPUがようやく45ナノプロセスルール世代に到達した。“Shanghai”世代Opteronの特徴とこの先のロードマップを紹介する。 - AMD、45ナノ“Shanghai”Opteron発表──Denebは「Phenom II」に
AMDのCPUがようやく45ナノプロセスルール世代に到達した。“Shanghai”世代Opteronの特徴とこの先のロードマップを紹介する - 「Nehalem? もちろんウェルカムだ」――IDF目前にAMDが優位性をアピール
8月19日(米国時間)に始まるIDFを目前にした15〜18日にかけて、AMDは関係者向けのブリーフィングを行い、45ナノプロセスルールに関する最新情報でライバルを“けん制”した。 - “Kuma”はへクター氏を救えるか?──「Phenom 9900」ベンチマークテストで2008年のAMDを占う
AMD Financial Analyst Dayで「失敗したことは非常に屈辱的だ」とCEOが告白したPhenomの立ち上がり。2008年登場予定モデルの先行レビューで、その“見通し”を予想する。 - “ネイティブ”は“ネイティブ?”に勝るか──Phenom出荷直前レビュー
19日に発表されたAMDのクアッドコアCPU「Phenom」がいよいよ出荷される。この記事を読んで、会社の昼休みにショップに駆けつけるかどうかは「自由だぁぁぁぁっ!」 - “ネイティブ?”と挑発するクアッドコア「Phenom」登場
AMDは「真のクアッドコア」CPUと、新世代チップセットの「AMD 7シリーズ」を発表。これらと先日登場した最新GPUで構成される新しいプラットフォーム「Spider」を立ち上げた。 - 倍率変更がフリーになった“黒箱”で遊ぶ──Athlon 64 X2 5000+ Black Edition
最初のBlack Editionが登場したとき、多くのユーザーは「これが最後でしょう」と思ったが、AMDの土居“アニキ”が「これは遊べるっ」とイチオシする真打ちが登場した。 - AMD、「コアが3つ」のPhenomを追加
Phenomのラインアップはクアッドコアの「Phenom X4」とデュアルコアの「Phenom X2」が予定されていたが、そこに「奇数コア」モデルが急きょ加わった。 - TDPが89ワットにリニューアル──Athlon 64 X2 6000+
AMDはネイティブクアッドコア“Barcelona”を準備する一方で既存のAthlon 64 X2の拡張を続けている。8月31日にAMDが発表したAthlon 64 X2 6000+はTDPを大幅に下げた。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.