あえて“モノクロ専用”なインクジェットプリンタ――エプソン「PX-K100」を試す:ビジネスはもちろん、通好みなアナタにも(3/3 ページ)
エプソンが15年ぶりにモノクロ専用A4インクジェットプリンタを投入する。なぜ、今になってモノクロ専用なのか、その性能はどうなっているのか、実機をチェックした。
設定の違いによって印刷速度はどう変わるか
印刷速度テストの結果(すべてA4モノクロ印刷) | |||
---|---|---|---|
片面プリント(JEITA J1 モノクロ テキスト文書) | |||
印刷品質 | はやい | 標準 | きれい |
片面1部プリント時間 | 3秒3 | 4秒3 | 30秒2 |
片面10部プリント時間 | 28秒4 | 36秒4 | 5分17秒5 |
両面プリント(JEITA J1 モノクロ テキスト文書) | |||
印刷品質 | はやい | 標準 | きれい |
両面1部プリント時間 | 10秒8 | 12秒9 | 1分02秒5 |
両面5部プリント時間 | 1分1秒5 | 1分12秒0 | 5分21秒7 |
片面プリント(JEITA J6 カラー 表/グラフ入り文書) | |||
印刷品質 | はやい | 標準 | きれい |
片面1部プリント | 4秒5 | 5秒1 | 34秒1 |
片面10部プリント時間 | 35秒6 | 44秒3 | 6分3秒7 |
両面プリント(JEITA J6 カラー 表/グラフ入り文書) | |||
印刷品質 | はやい | 標準 | きれい |
両面1部プリント時間 | 12秒9 | 14秒9 | 1分12秒6 |
両面5部プリント時間 | 1分13秒1 | 1分22秒7 | 6分10秒9 |
※テストに使用したPCのスペック CPU:Core i5-560M(2.66GHz/最大3.2GHz)、メモリ:4GバイトDDR3、HDD:750Gバイト/5400rpm、チップセット:Intel HM55 Express、グラフィックス:Intel HD Graphics(CPU内蔵)、OS:32ビット版Windows 7 Home Premium、プリンタとの接続:USB 2.0 |
それでは、実際の印刷速度を確認していこう。
印刷速度のテストは、モノクロテキスト文書(JEITA規格のプリンタ用標準テストパターン「J1」)と、カラーの表とグラフが入った文書(JEITA規格のプリンタ用標準テストパターン「J6」)の印刷にかかる時間を計測した。
それぞれの文書で片面/両面印刷の場合、印刷品質を3段階(はやい/標準/きれい)に切り替えた場合の速度を計測している。計測した時間は、給紙カセットで用紙が引き込まれた瞬間から、排紙が完全に終了した瞬間までだ。
テスト結果は右表の通りだ。モノクロテキスト文書1枚あたりの印刷時間は「標準」で4秒3、「はやい」で3秒3と素早く、印刷速度は「標準」で約16.6ppm、「はやい」で約21.4ppmという結果だった。測定環境が違うため、公称値の最速で約37ppmという値には及ばないが、標準設定で16ipmという速度はほぼ一致しており、インクジェット機としては高速だ。カラーの表とグラフが入った一般的なビジネス文書のサンプルでも印刷速度はそれほど落ちていない。これなら、ビジネスユースでもバリバリ使えそうだ。
ただし、設定を「きれい」にすると、とたんに印刷時間が延びるのは注意したい。余白がそれなりにあるモノクロテキスト文書でも1枚印刷するのに30秒2かかった。画像データを可能な限りきれいに印刷したい場合や、顧客に渡す重要な資料など、特別なシーンのみで使う印刷モードと考えたほうがいいだろう。
なお、PX-K100は自動両面印刷ユニットを内蔵しており、両面印刷を行う場合は、片面を印刷した後、排紙する前にもう一度用紙を引き込んで裏返し、もう片方の面にプリントする。この動作に多少時間がかかるため、自動両面印刷では片面印刷の3倍程度(モノクロ文書/「標準」「はやい」の場合)の時間を要する。とはいえ、もともとの印刷速度が速いため、少部数の両面印刷であれば、それほど不満なく使えそうだ。
設定の違いが印刷品質に与える影響
印刷品質は顔料系インクの特性によって、普通紙にくっきりと濃い黒が載り、耐水性が高く、にじみにくい。
プリンタドライバの印刷品質は前述の通り、3段階で調整できるが、これらの仕上がりは一目で分かるくらいの違いがあった。「はやい」設定でもかなり細かい文字まで判読できるが、文字は少し薄く、ジャギーや画像部分の粒状、輪郭のぼやけなどが目立つ。これに対して「標準」設定では文字のエッジがシャープに描かれ、画像もかなりクッキリする。さらに「きれい」設定は印刷時間が長いだけあって、文字の品質がよいのはもちろん、画像の輪郭や階調性もしっかり整う。
印刷時間は「はやい」と「標準」でそれほど変わらないので、基本的にはデフォルトの「標準」設定で利用するのがよいだろう。「標準」設定なら、社外の配布資料として十分利用できるレベルだ。「はやい」はとりあえず文書がどのように印刷されるか試し刷りしたいといったシーンに向く。「きれい」はここぞという時に使いたい設定といえる。
モノクロプリンタに再び加わったインクジェットという選択肢は十分アリ
以上、PX-K100を一通りチェックしてきたが、ビジネスユースで引きが強いモノクロ印刷に特化したシンプルで手ごろなインクジェットプリンタとして、手堅くまとまっている。冒頭で述べたインクジェットのウリを生かしつつ、ビジネスでストレスなく使えるように、印刷速度やインク容量、給紙容量、自動両面印刷、低インクコストといった点に注力しており、実際の使い勝手もなかなかのものだ。
実売想定価格が1万円台半ば(Epson Direct Shopでの直販価格は1万4980円)と、エントリークラスのカラー対応インクジェット複合機より割高な点は気になるが、大容量で2本構成のブラックインクカートリッジによるハンドリングのよさとインクコストの低さ、モノクロ専用設計による無駄のなさは、モノクロ専用のプリンタが欲しいというユーザーに好印象を与えるだろう。
例えば、カラー対応のインクジェットプリンタは、モノクロ文書を印刷する場合でも、印刷前のノズルチェックやヘッドクリーニングなどで全色のインクを少しずつ消費してしまう。モノクロ文書の印刷がほとんどなのに、勝手にカラーインクまで減っていくのは非効率で、精神衛生上もよくない。その点、PX-K100はブラックインクのみなので、そういった無駄がなく、モノクロ専用機として効率的に運用できる。
そもそもPX-K100はビジネス向けに開発されたモデルだが、個人でもモノクロ文書の印刷用にレーザー/LEDプリンタを導入しているケースは少なくない。レーザー/LEDプリンタもだいぶ本体の低価格化が進んだが、消費電力や消耗品の高さから、かなり印刷量が多くないと実力を存分に引き出せないだろう。PX-K100であれば、家庭用の低価格インクジェット機を1台買い足す感覚で手軽に導入でき、しかもモノクロ専用プリンタとしての性能も高いレベルにある。
レーザー/LEDプリンタを導入するほどではないが、モノクロ文書を印刷する機会が多い、もしくは文書やWebのプリントを今はカラーで行っているが、モノクロでも構わないのでコストを抑えたい、というユーザーにとって、PX-K100は手軽ながら効果の高い1台ではないだろうか。
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