ThinkCentre Edgeを“いま”コンシューマー市場で売る理由:VALUESTARはどうするの?
レノボ・ジャパンは、ThinkCentre Edgeシリーズをコンシューマー市場に展開した。ビジネスとコンシューマーの“Edge”における同社の変化を聞いてみた。
Thinkを求めるコンシューマーユーザーにEdgeを
レノボのラインアップは、ビジネスユーザー向けのThinkシリーズ、コンシューマー向けのIdeaシリーズ、そして、その両者のすきまをうめるThinkPad Edgeシリーズで構成する。その、Think Edgeシリーズで液晶一体型PC「ThinkCentre Edge 91z All-In-One」の店頭販売を6月28日から開始した。Edgeとはいえ、ThinkシリーズのデスクトップPCでは初めてのコンシューマー市場向けに投入したモデルだ。
レノボ・ジャパンが日本のコンシューマーデスクトップPC市場において、IdeaCentreシリーズに加えてThinkCentreシリーズを投入する意図は何であるのか。米国から来日したLenovo ワールドワイド コンペティティブ アナリストのケビン・ベック氏と、レノボ・ジャパン 製品事業部 ThinkCentre プロダクトマネージャーの大谷光義氏が説明した。
ThinkシリーズのデスクトップPCをコンシューマー市場に投入する、という理由の前に、レノボのブランドラインアップでいつも感じるのが、Thinkシリーズ、Ideaシリーズ、そして、Think Edgeシリーズの“すみわけ”だ。レノボ・ジャパンも製品発表会などで説明しているが、ケビン氏にもう一度解説してもらおう。
「伝統的なThinkシリーズは、ユーザーの利用目的など大企業向けに開発されている。Ideaシリーズはコンシューマー向けということで、例えば、チューナーなどテレビ関連の機能を導入している。ただ、大企業向けのユーザーとコンシューマー向けのユーザーの間は完全に分かれていない。両者が混ざっているユーザー層も存在する」とケビン氏が述べるように、ユーザーは企業向けとコンシューマー向けで求めるものが完全に分かれているのではなく、色のグラデーションのように機能に対する需要やデザインの好みが入り混じりながらビジネスからコンシューマーに移行するもので、両方の需要が混じるユーザーのために、Think Edgeシリーズが存在するという。
「大昔はビジネスユーザーとコンシューマーユーザーに完全な壁があった。しかし、いまはない。ビジネスユーザーでは(システム管理などの)ITレベルのニーズがある一方で、デザインにおける好みはコンシューマーユーザーと近い」(ケビン氏)
ただ、ThinkCentre EdgeはThinkCentreシリーズから機能を省いた低価格モデルではないと、大谷氏は主張する。「ThinkCentreは大企業の利用で求められるシステム管理機能やセキュリティ機能の代わりに、中小企業やSOHOなどのユーザーが求めるユーザビリティやデザインに開発リソースをかけている。それぞれの市場で必要とされる要素を持たせたモデルを、ThinkCentreとThinkCentre Edgeとして提供している」(大谷氏)
大谷氏によると、従来も小規模事業所で使うPCがコンシューマー向けモデルから選ばれるケースが多かったが、レノボ・ジャパンはこれまでこの層に向けたアプローチが弱かったという。今回投入したThinkCentre 91z All-In-Oneで、個人ユーザーと小規模事業所、SOHOのユーザーをターゲットに液晶一体型PCを展開する予定だ。
ThinkCentre EdgeとVALUESTARはコンシューマーで競合しない
ビジネス需要とコンシューマー需要の両者が入り混じるユーザーのために、ThinkCentre Edgeシリーズをコンシューマー市場に投入することにしたレノボだが、そうなると、NEC レノボ・ジャパングループとして連携することになったNECパーソナルコンピュータのデスクトップPCラインアップと競合するのではないか。両社はそれぞれのラインアップを現状のまま維持していくとしているが、その理由が「競合するラインアップがない」ことだった。その前提が崩れることにならないのか。
大谷氏は「それぞれのユーザーは、かぶらない」と説明する。「VALUESTARシリーズは高機能で比較的高価格モデルが多い。レノボのデスクトップは低価格モデルをそろえている。また、レノボの製品は首都圏や地方の中核都市など大都市圏では販売数が多いものの、NECは全国で購入されている」(大谷氏)と、VALUESTARとIdeaCentre、ThinkCentre Edgeが、VALUESTARと価格帯、販売地域が異なるので競合しないという考えを示した。
IDGの調査では、デスクトップPCのなかでも、タワー型とSmall Form Factor、Ultra Small Form Factorの割合が多数で、液晶一体型PCは、ビジネス市場、コンシューマー市場のいずれでも一部を占めているに過ぎない。
しかし、ケビン氏は、「デスクトップPCの販売実績は先進国とそれ以外で状況が異なる」と述べ、「先進国では、タワー型、SFF、USFFのデスクトップPCの販売実績は横ばいか減少傾向にあるが、液晶一体型PCだけは成長傾向を示している」と、コンシューマー向けデスクトップPCで液晶一体型PCに注力する理由を説明している。
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