「Bulldozer“改”!」というPiledriverを導入した「Trinity」の実力を試す:イマドキのイタモノ(3/3 ページ)
AMDは、第2世代のFusion APU「Trinity」が発表した。ノートPCモデルから登場するPiledriver導入のAシリーズは、Sabine世代からどれだけ“腕”を上げたのか?
動くには動くが、DirectX 11対応をほめるべきか
Battlefield 3やSkyrim、F1 2011でも、とりあえず計測してみた。Battlefield 3は、さすがにどのプリセットでも、とりあえず動くというレベルだ。一方、SkyrimはLow設定でギリギリ30fpsとなったが、ちょっと負荷が高くなると描画が“カクカク”としてしまうため、これもプレイには適さない。F1 2011は、Low設定あたりで30fpsを超え、Midiumでもギリギリ楽しめるところだ。ただし、画質的には臨場感を味わえるレベルにない。やはり、GPU負荷の低いゲームタイトルか、やや古いゲームタイトルを楽しむのがA10-4600Mには適している。
ゲームタイトルベンチマークテスト | AMD Trinity | |||
---|---|---|---|---|
Battlefield 3 | AverageFPS | 1366×768ドット | Low | 26.459 |
Midium | 22.934 | |||
High | 18.509 | |||
Ultra High | 10.450 | |||
Min.FPS | 1366×768ドット | Low | 23 | |
Midium | 20 | |||
High | 16 | |||
Ultra High | 8 | |||
Skyrim | AverageFPS | 1366×768ドット | Low | 37.655 |
Midium | 28.966 | |||
High | 23.744 | |||
Ultra | 14.267 | |||
Min.FPS | 1366×768ドット | Low | 30 | |
Midium | 25 | |||
High | 19 | |||
Ultra | 11 | |||
F1 2011 | AverageFPS | 1366×768ドット | Ultra | 16 |
High | 28 | |||
Midium | 33 | |||
Low | 41 | |||
Ultra Low | 47 | |||
Min.FPS | 1366×768ドット | Ultra | 14 | |
High | 24 | |||
Midium | 28 | |||
Low | 35 | |||
Ultra Low | 39 |
消費電力は、元々TDP 35ワットとTDP 17ワットの比較なので差がついて当然として、およそ40ワット台半ばから50ワット半ばというデータがとれた。なお、アイドル時における消費電力がかなり低いことにもノートPC向けプラットフォームとしては注目したい。
Trinityの性能は、CPUに関して、整数演算で比較的健闘するが、浮動小数点演算ではハンデがあると評価せざるを得ない結果だ。Bulldozerアーキテクチャのモジュール構造が、整数演算ユニット×2基に対し浮動小数点演算ユニット×1基で構成するため、これは変わりようがない。一方、動作クロックの引き上げによって、整数演算ではCore i5クラス(ただし、低消費電力タイプで動作クロックが比較的低い)との差を詰め、一部で上回るようになった。しかし、これも今回の比較でもベースクロックで700MHz、Turbo CORE Technology有効時で900MHzの差があり、IPCはまだまだSandy Bridgeと差があるといっていい。
Trinity、というより、Bulldozerの流れを汲むCPUコアが、そのパフォーマンスを引き上げていくためには、動作クロックを高めていく方向が最も効果的と思われる。ただし、同時に消費電力を抑える必要がある。Trinityでリーク電流を抑えたとされるが、さらにプロセスをシュリンクすれば、より効果的だろう。
一方、こうしたウィークポイントを補うのが、統合GPUであったり、Trinityでいえばハードウェアエンコーダーであったりする。特に、動画ファイルのトランスコード処理は、PCにおいてニーズの高まる分野であるが、浮動小数点演算の弱いBulldozerには分が悪く、ここを別のハードウェアユニットによって高速化できれば、弱点を補うことができる。
統合グラフィックスコアに関しては、AMDがリードする分野でもあり、Intel HD Graphicsシリーズに対して高いパフォーマンスを実現している。ただし、グラフィックスメモリとしてシステムメモリを共有するため、システムメモリが広帯域なほど効果も高いと考えられるが、デュアルチャネルのDDR3-1600に対応したにしては、ベンチマークテストにおけるシステムメモリの転送レートはあまり振るわない結果だった。ここが改善されれば、グラフィックス関連の性能だけでなく、システム全体のパフォーマンスが向上するのではないかと思われる。
メインストリーム向けプラットフォームとしての魅力は高まった
今回の性能評価では、Llanoと直接比較をしていないことに加え、Coreプロセッサー・ファミリーとの比較もSandy Bridge世代を搭載するUltrabookという同列に置くにはやや不釣り合いなものであるため、絶対的なパフォーマンスに関しては言及しない。ただ、一時期はBulldozerが登場したにも関わらずK10が売れるという現象がデスクトップPCのDIY市場で見られたが、このときのパフォーマンスと消費電力に関する懸念は、“Piledriver”世代ではある程度改善できたように感じる。ノートPCとしては、メインストリームセグメントのパフォーマンス要求には応えられるだろう。さらに、現在はまだ利用できないが、ハードウェアエンコードエンジンも統合し、メディアハブとしての性能も向上している。プラットフォームとしての魅力は、高まったといえるのではないだろうか。
CPUに統合したグラフィックスコアでゲームを楽しもうというユーザーにとっては、従来よりもさらに強力で、プレイ可能なゲームタイトル自体は増えていると考えられるTrinity世代は有効な選択肢となる。最新FPSゲームはさすがに厳しいが、カジュアルカテゴリーを中心としたゲームタイトルには対応できるだけのベンチマークテストの結果が出ている。また、デスクトップレスポンスは快適そのものなので、デスクトップ代替ノートとしての用途であれば十分だ。この点、統合グラフィックスコアでDirectX 11に対応しているところもポイントとなるだろう。
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