アーティストとのコラボで、マウスに“付加価値”を:世界で最も人気のあるデザインマウス(2/2 ページ)
日本マイクロソフトが「Wireless Mobile Mouse 3500 Artist Edition」のデザインを手掛けたケンゾー・ミナミ氏を招いて、トークイベントを開催。ケンゾー氏が独特のデザイン手法を語った。
作品中に膨大な“内輪ネタ”を盛り込む
トークセッションでケンゾー氏は、自身のデザイン手法や、過去作品を解説した。同氏の作品はよく衒学的(知識をひけらかしている)と評されているというが、今回のマウスのデザインでも、数詞や無限大マークなどさまざまな情報を盛り込んでいる。
「情報にまったく気付かない人も、気が付く人もいる。情報を正しく理解する人もいるし、こちらが意図していなかった意味で解釈されるのも、それはそれで面白い。オタク的などうでもいい情報をたくさん詰め込み、見る人に膨大な情報を与えることで、あえて自らの意図を主張せず、受け手によって解釈が異なる作品を作り出せる」とケンゾー氏は話す。
この具体例を、ケンゾー氏はニューヨークのMoMA(ニューヨーク近代美術館)が永久コレクションとして所蔵する、同氏の代表作となっている「DUNNY」で説明した。耳はドイツの国旗が、顔にはチェコの国旗が描かれている。2つの国旗を書いた理由を同氏は「この作品を作っていたころの彼女が、ドイツとチェコのハーフだったから」と説明したが、ドイツがチェコに侵攻した歴史について言及しているといった解釈をする人も多く、作者の意図を超えて作品が意味付けられ、「高く評価されてしまった」のだという。
最後に、ケンゾー氏はデザインで表現する世界観について「自分から何かを主張するのではなく、作品内に詰め込んだ知識や情報が解釈されることによって、世界観ができることを伝えたい。例えば、FacebookなどのSNSで自己紹介をするときを考えてほしい。About Me欄のように、漫然と自分はどういった人間かを説明するのは大変だが、趣味ならば簡単に書ける。ほかの情報や、他人からの見え方で自分を定義する時代なんです」と語った。
イベント終了後に、同社広報に今後、アーティストとコラボレーションするマウスは増えるのかと質問したところ、「アーティストとのコラボは、マウスに付加価値をつける方法の1つに過ぎない。弊社の場合、ハイエンドユーザー向けに『TOUCH MOUSE』『Explorer Touch mouse』といった製品があるが、一般ユーザー向けのマウスは特徴が少ないため、価格での差別化に頼りがち。価格競争にならないよう、製品に付加価値をつける方法を今後も模索していく」とコメントした。
このような試みはマイクロソフトだけではない。エレコムがデザインオフィス「nendo」とコラボレートした商品を発表したのは約1年前のことだ。今やマウスは安ければ数百円で購入できる製品となっている。過度な価格競争を避けるため、今後は性能や価格以外の価値を加えることや、“多少高くても買いたい”と思わせるような製品のブランディングがハードウェアメーカーの重要な課題になるだろう。
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