SDサイズの極小PC「Edison」詳報と戦略──ウェアラブル分野の推進で“新生インテル”をアピール:2014 International CES(2/2 ページ)
インテルのブライアン・クルザニッチCEOが2014 International CESの基調講演に登壇。ウエアラブル分野のさらなる推進により、“新生インテル”として業界をリードしていく姿勢を改めてアピールした。
PCを越えた、インテルの次なる取り組み
PC分野での1つの大きな発表は、これまでMcAfeeのブランド名で提供されてきたセキュリティサービスを「Intel Security」と改め、これをPCだけでなくモバイル分野にも広く訴求していくことを打ち出した点だ。モバイル向けセキュリティソリューションは無償での提供が発表されており、この分野でのプレゼンスを高める狙いがあるとみられる。
2つめは「デュアルOSプラットフォーム」戦略。AndroidとWindows、2つのOSを1つのデバイス上で実行可能にする仕組みを積極的に提供していく。単純にはデュアルブート機構なのだが、両OSの切り替え時間はわずか数秒程度とわずかにする工夫により「タブレットとして使うときはAndroid」「ノートPCとして作業するときはWindows」といった具合に用途によって即座にシステムを変更できる。


「デュアルOSプラットフォーム」戦略を発表。クルザニッチ氏がWindows 8.1が起動しているPCのスイッチを押して数秒すると……Android OSに切り替わる。1つのシステムで複数のOSを起動可能なデュアルブート機構のようではあるが、その切り替えが数秒程度という短い点が特徴こちらは、その点で本来の意味での「2 in 1」を実現する仕組みだといえる。また、これが意味するのは、AndroidをARMではなくx86プラットフォーム上で動かすという戦略的な動きも想定することだ。2014 International CESでは、ASUSからデュアルOSプラットフォーム対応デバイス「Transformer Book Duet TD300」が発表されたが、ほかにも東芝が「タブレットにおける1つのシステムプラットフォームへの収れん」を表明している。今後、同様の動きを見せるベンダーは多く登場すると思われ、Androidタブレット市場の一部は、ARMではなくx86(特にAtom)へとシフトしていく可能性が高い。これは2014年におけるPC/タブレット市場での注目すべき動きの1つだ。
またクルザニッチCEOの基調講演が行われた同日、ムーリー・エデン氏による報道関係者向けの発表会も行われており、ここでは「RealSense」という3Dセンサーカメラ技術が改めて発表された。3Dセンサーを駆使して新たなユーザーインタフェースを再構築していこうという野心的な試みだが、その一端として壇上では3Dセンサーカメラで立体物(バニーピープル)をスキャンし、RealSenseインタフェースを搭載した3Dオブジェクト加工ソフトウェアを使って成形、さらに3Dプリンタで出力するという一連のデモを紹介した。こちらはこれまでの技術でも不可能ではない作業かもしれないが、ほぼ汎用の市販機器を組み合わせて容易に行えるようになる点はとくに技術革新が感じられて興味深い。RealSenseの延長か、会場内を飛び回る巨大生物の臨場感溢れる仮想現実のデモも紹介され、基調講演会場を大いに沸かせた。


3Dセンサーカメラを内蔵したタブレットで対象を3Dオブジェクトとして取り込み、それをモーションセンサを内蔵したPCでハンドジェスチャーを使って加工し、さらに3Dプリンタを使って出力するというデモ。ただし完成品の出力には半日程度かかるとみられるため、事前に用意してあったオブジェクトを並べて紹介するあたりはテレビ番組の“○分間クッキング”と同じスタイルだったのは少しほほえましい

仮想世界と現実をリンクさせるデモ。正面スクリーンを動き回っていたクジラ型のリヴァイアサンが画面を飛び出し、会場内を動き回るというデモ。実際には肉眼では見えないのだが、音響効果に加え、壇上の複数のスクリーンに会場風景とリバイアサンが重ねられた映像が表示されるため、非常に臨場感がある。来場者が興奮して立ち上がって周囲を見回したり、その様子の撮影を始めるほどSteam対応マシン「Steam Machine」
話題性のあるデバイスとしては、同日に発表されたばかりのValve「Steam Machine」も壇上で紹介された。PCゲーマーにはなじみがあると思うゲーム配信サービスSteamだが、このSteamサービスを利用するための専用デバイスが開発されているという噂が長らく流れていた経緯がある。

ゲーム配信サービス「Steam」の提供で有名なValveは、同日発表したばかりの「Steam Machine」を会場でデモ。Core i7プロセッサを搭載したLinuxベースの小型キューブ型デバイスで、Valve認定の専用コントローラを使ってゲームを遊べるようになっている。Steam Machineはクラウド型ゲームではなく、同デバイス上で直接ゲームが動作する点が最近よくリリースされている小型ゲームコンソールと異なる。そのため、この手のデバイスとしてはかなりリッチなIris Graphics Pro搭載のCore i7プロセッサを採用している(写真=左、中央)発表されたSteam Machineは、小型のキューブ状の本体にValve認定の専用コントローラが付属するもので、ディスプレイにつないでそのままゲームを楽しめるようになっている。この手の軽量ゲームコンソールは最近いくつかの社からリリースされているが、Steam Machineの特徴はゲームの画面データをクラウド配信するのではなく、Linuxベースのシステム上で直接動かす点で特徴がある。そのため高度な3D描画表示などにも耐えられる高いパフォーマンスが必要であるが、こちらはCPU統合グラフィックス Iris Graphics Pro対応のCore i7を搭載することでカバーする。Steam MachineもPCの進化の形の1つだが、その姿は従来のPCの枠にはとらわれず、より目的別に先鋭化が進んでいる印象を受けた。
Intelが昨年2013年に実施したIntel Science Talent Searchの優秀者を招いての壇上での紹介。前出「Make It Wearable」チャレンジと合わせ、PCやサーバ以外の分野での出遅れが目立つIntelは周囲のパートナーとの連携が欠かせないと思われるPC業界が岐路へと差しかかる中、新生Intelをアピールしつつ同氏の出身母体である製造部門での関心事項について、業界のリーダーとしてIntelが中心となりその呼びかけも行った。IT機器に必要なレア鉱物資源の産出地の1つであるコンゴ民主共和国(旧名:ザイール)は現在紛争地帯であるが、紛争地帯で産出される資源をIntelのサプライチェーンから排し、業界全体にも呼びかけていくというものだ。その意味で、新生Intelと同氏のキャラクターを強く印象付ける基調講演だったといえる。
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