2014年のPC業界はどこへどのように進むのか:鈴木淳也の「まとめて覚える! Windows 8.1」
2014年のPC業界はどこへどのように進むのか。International CESで示された発表内容や展示をもとに、そのトレンドを俯瞰(ふかん)してみよう。
x86の興隆と、こなれてきたWindowsタブレット
2014年1月上旬にアメリカ・ラスベガスで開催された2014 International CESでは、今後数年先のPC業界を占ういくつかのトレンドを見て取ることができた。昨今スマートフォンやタブレット、そしてWindows以外のモバイルOSの興隆で斜陽ともいわれるPC業界だが、姿形を変えて今後もなお生き続けようとしている。今回は少しだけ視野を広げて2014年のPC展望について触れてみたい。
2011年に「Ultrabook」のコンセプトで発表された薄型ノートPCは、2012年にはWindows 8の発表と合わせてタッチ対応モデルなどにて発展が進み、2013年には「2in1」のコンセプトで「タブレットとキーボード付きPC、1台2役」という製品が登場し、市場としては非常にバラエティ豊かなものとなった。そして2014年は、こうした枠から離れ、複数のプラットフォームが絡み合ったより複雑な状況になる動きが出てきている。
2014 International CES全体を見回すと、ようやくPCタブレットも製品としてこなれたものが登場してきたと思う。典型的なものがレノボの「ThinkPad 8」で、このBay Trailプラットフォームを採用したタブレットは操作感もスムーズで本体の質感もよく、マグネット着脱式の専用カバーと相まって常用できそうなつくりだった。カバーは使用時に本体背面へと折ってたたむスタイルだが、そうすると背面のリアカメラが隠れてしまう。そこでカメラ部分のみを折ってレンズが表れる仕組みを採用した。この操作と連動してカメラアプリが自動起動し、すぐ撮影できるというわけだ。ちょっとした工夫だがよくインテグレートされた仕様と思う。過去、いわゆるiPadやAndroidタブレット(Kindleを含む)のような使い方をうたうタブレットはすでに多数発売されているがどっちつかずの印象が強く、性能的にも不十分だと感じることもあった。だが、2013年後半あたりからリリースされた製品はつくりも利用シーンもよく考えられており、Windowsがタッチ操作に本格対応してから、ようやくという形で“使える”レベルへと昇華されつつある。
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もう1つおもしろい兆候が、ASUSが発表したAndroid/Windowsのデュアルブート対応タブレット「Transformer Book Duet TD300」の存在だ。中身はAtomベースのSoCを搭載したPCアーキテクチャのタブレットだが、キー操作1つで2つのOSが切り替わる。インテルはこれを「Dual OS Platforms」と呼んでおり、こういった製品も戦略の1つだとしている。一般に従来のPC的な作業をするのであればWindowsが適するが、タブレット的な用途であればアプリも豊富なAndroidのがこなれている分、使い勝手がよい面もある。これまでの2in1は形のみが変わりつつもOSはWindowsを使うものだったが、OSも2in1で計4スタイルと、より効果的に機能させるのがDual OS Platformsといえる。これは、インテルがGoogleとの提携でAndroidのx86プラットフォームへの移植に多大なリソースを割いた成果の1つだが、PCメーカー側には別の事情もあるようだ。
CESで講演した東芝 デジタルプロダクツ&サービス社営業統括責任者の檜山太郎氏によれば、現在、タブレットの開発コスト負担が高くなってきているという。例えばWindows用とAndroid用でx86とARMプラットフォームが混在すると、それぞれに対してシステムを別々に設計しなければならず「ならばどちらか一方にアーキテクチャを収れんさせていく」というのが業界の流れとして出始めている。この取材時点では前述したASUS製品やインテルの「Dual OS Platforms」戦略はまだ発表されていなかったが、業界全体としてAndroidタブレットのアーキテクチャを少しずつx86ベースのものにしていくという思惑は存在しているのだろう。こちら、どの程度のメーカーがどの製品ラインをシフトしていくのかは不明だが、今回のTransformer Book Duet TD300を見る限り、8型以上の比較的大型サイズの製品はこのコンセプトが採用されていく可能性が高いとみている。なぜなら、このサイズはキーボードもプラスしてPCとしても常用可能であり、もちろんAndroid以外のOSを搭載するメリットもより生かせるからだ。Dual OS Platforms対応製品はASUSだけに留まらず、2014年内に各種メーカーよりリリースされることになると思われる。
もう1つのトレンド=「Chromebook」の存在
さて、「7〜8型クラスのWindowsタブレットがようやく使いやすくなってきた」「タブレットのプラットフォームは一部でARMからx86へのシフトが進み、x86の存在感が高まっている」というのが筆者が予測する2014年の大枠での流れだ。
だが一方で「Windows RTはコンシューマー向けのメインストリームには入れず、Androidタブレットもディスプレイサイズによっては苦戦」「Atomプロセッサの比重が高くなりつつあり、ミッドレンジ以下のCoreプロセッサーは市場を食われつつある」といったトレンドも垣間みえる。数年の混迷期を経て、市場の最適化が進みつつあるようにも見える。
こうした中で登場したもう1つの興味深いデバイスが「Chromebook」だ。2013年末に1月〜11月の11カ月間の集計データで販売台数シェアが2012〜2013年にどれだけ変化したかを示した米NPDの資料によると、Chromebookの数字が2012年の0.2%から2013年には9.6%に大きく躍進していた。この集計結果に多くの業界人が疑問を抱き、なぜChromebookが躍進できたのかとする議論が活発になされた。この理由の1つとして、わずか200〜300USドル程度で“そこそこ使える”作業マシンが手に入ることで、これがPC市場の一部を侵食したという説がある。そしてユーザー側の利用動向が変化し「Webサービス/アプリケーションで十分」と考える層が一定数存在する可能性も語られた。それは今後もさらに増え続ける可能性がある、というわけだ。
ある意味Windowsだけでなく、iPadやAndroidタブレットとも対極の存在にあるChromebookだが、次のPC業界はこの変化も見据えなければいけないのかもしれない。
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