「Surface Book」日本版レビュー Appleの牙城を切り崩すキッカケとなるか:本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)
ついに日本でも販売が開始された「Surface Book」。ハイスペック構成のモデルを入手したので、早速デジタルフォト用途などに使ってみた。
Surface Bookの次に期待したいのは……
最後に筆者個人のSurface Bookに対する印象をお伝えしておきたい。
Surface Bookのキーボードは好みもあるだろうが、十分なストロークと良好なタッチ、高い剛性で、近年の薄型ノートPC+アイソレーションキーボードの流れの中では、最も好ましいキーボードの1つだと思う。
日本販売モデルは日本語キーボードのために、一番手前が窮屈な配列になっているのは残念だが、Windows PCに慣れているならば問題ないだろう(Macの配列に慣れていると、少しばかり不満かもしれない)。
ただし、北米モデルのレポートでも指摘されていたようにタッチパッドのフィーリングはあまりよくない。Macと同様にガラスを用いているのだが、表面仕上げが微妙に異なる。ただし、一番影響しているのはドライバなどソフトウェア面でのチューニングだろう。
例えばマルチタッチ機能を用いた2本指スクロールをする際にも、瞬間的にスクロールモードへの移行が遅れることがある。常にではなく、また使いこなそうと思えば問題なく使える。とはいえ、MicrosoftがSurface Bookを「プレミアムクラスのノートPCという分野でAppleの牙城を切り崩す先兵」と位置付けているのであれば、ハードウェアのギミック以上に、こうしたフィールにこだわるべきだろう。
また、プレミアムクラスのノートPCとして、「13インチMacBook Pro」を狙い撃ちにしたスペック設定だが、Microsoft製品のラインアップとして考えると、「Surface Pro 4」との間が、少し広すぎるという印象も持った。“広い”というのは、ニーズとしてのすき間が広いという意味だ。例えば膝の上で使いやすいクラムシェル型の筐体で使いたい……となると、そういったSurfaceはラインアップに存在しない。重さも今どき1.6キロ近いとなれば、決して軽いとは言えない。
また、Surface Bookの特殊なハードウェア構成は、いま一度、よく理解しておくべきだ。Surface Bookを「ノート型+タブレット」と取られているのであれば、確かに表面上はその通りだが、現実には少し違う。Microsoft自身がクリップボードモードと言っているように、タブレットとして本格的に使うことは想定していない。
なにしろ、クリップボードモード時のSurface Bookには、USBの1ポートも端子がないのだ。あるのはヘッドフォン端子だけで、残りの外部インタフェースは、全てキーボード側に配置されている。3時間まで満たないクリップボードモード時のバッテリー駆動時間を無視するにしても、この制約は厳しい。
もちろん、どんな製品も万能ではない。Windowsには多数のOEMメーカーがいる。Microsoftにしてみれば、Surface Bookで1つの道筋を作ったのだから、そこに多くのメーカーがなだれ込んできてほしいと考えているのかもしれない。
もしそうだとするなら、次に期待すべきはMicrosoftではなく、Surface Bookを1つのアイデアとして、より抑えた価格帯で品質の高い製品が登場することだろうか。Surface Book自身の完成度は実に高いだけに、後に続くメーカーの製品がそれ以上の完成度で登場することこそが、「Surface Bookにとっての成功」と言えるだろう。
関連記事
- 「Surface Pro 4」と「Surface Book」の率直な疑問――米Microsoft担当者に聞く
「Surface Pro 4」と「Surface Book」の国内発表に合わせて、米MicrosoftでSurfaceのセールスとマーケティングを担当するジェネラルマネジャーが来日。新機種の気になる点を聞いてみた。 - 2016年にPCが向かう先は? 高性能な2in1か、原点回帰のノートか
PCの進化において、2015年はSkylakeやWindows 10といった大きなトピックがあった。それらを踏まえ、2016年のPCはどこへ向かおうとしているのだろうか。 - 日本語キーボードをチェック! 国内モデル発売直前の「Surface Book」をおさらい
「Surface Book」が間もなく日本で発売する。デザインはUSモデルとほぼ同じだが、国内モデルの日本語キーボードはどうだろうか。写真で確認してみよう。 - Windows 10搭載ノートPC「Surface Book」の発売日を確定――2月4日
日本マイクロソフトは、タブレットとしての利用も可能な2in1ノートPC「Surface Book」の発売日をアナウンスした。 - 「Surface Book」はペン付き大画面タブレットの本命か――USモデル先行レビュー
Microsoftが“究極のノートPC”を標ぼうする「Surface Book」は、Core i7搭載PCで最薄最軽量のタブレットでもあります。今回は独特な2つのタブレットモードと筆圧ペンをチェックしてみました。 - 「Surface Book」はノートPCとして最上級の完成度か――USモデル先行レビュー
Microsoftが“究極のノートPC”と自慢する「Surface Book」。米国で先行発売されたこの注目モデルを入手し、ノートPCとしての実力をチェックしてみました。 - US先行発売の「Surface Book」開封レビュー
日本での発売は2016年の予定ですが、USで先行発売された「Surface Book」のハイスペックモデルをいち早く入手しました。SurfaceもMacBookも使っているソフトウェアエンジニアの筆者が、パッケージの開封からリポートします。 - 「Surface Book」発売日に米Microsoft Store店舗を訪ねてみた(買えるのか?)
日本での販売はまだ先だが、米国で「Surface Book」が無事に発売された。発売日に現地のMicrosoft Store店舗を訪ね、Surface Bookの販売状況を聞いた。 - 「Surface Book」でMicrosoftとPCメーカーの関係はどうなる?――OEM担当者に聞く
「MacBook Pro」に対抗意識を燃やすMicrosoftの「Surface Book」だが、OEMパートナーのWindows PCからもシェアを奪ってしまうのではないかとの懸念も耳にする。米MicrosoftのOEM担当者に直接こうした疑問を聞いた。 - 「Surface Pro 4」と「Surface Book」はPC市場を活性化させるか――国内初披露の実機リポート
日本マイクロソフトが、新しいSurfaceシリーズの国内展開について発表した。発売日は「Surface Pro 4」が11月12日から順次、「Surface Book」は2016年初頭を予定する。 - Surface Bookは「AppleになりたいMicrosoft」の象徴か
唐突に登場した「Surface Book」は、同時発表の「Surface Pro 4」や従来のSurfaceシリーズとは異なるインパクトをPC市場に与えそうだ。 - 「Surface Book」と「Surface Pro 4」はどちらを選べばいい?――Microsoft新モデルを徹底チェック
正統進化の12.3型Windowsタブレット「Surface Pro 4」と、突然登場した13.5型2in1ノート「Surface Book」。これら新モデルはどちらを選ぶべきなのだろうか。 - 「Surface Book」発表――13.5型ディスプレイ+GeForce搭載の新2in1ノート
Microsoftが、Surfaceシリーズの新ラインアップとして「Surface Book」を発表した。13.5型サイズのマグネシウムボディに第6世代Coreと外部GPUを搭載。独自のヒンジ機構を採用するほか、ディスプレイ部を分離してタブレットとしても利用できる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.