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2019年、Microsoftが飛躍するために取り組むべきこと鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(1/3 ページ)

WindowsやMicrosoftの最新情報を独自の視点でお届けする本連載。2019年の第1回は、筆者の鈴木淳也さんが「今後Microsoftが飛躍するために取り組むべきこと」と題してお届けする。

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 2019年の本連載で初回となる記事のテーマは、「2019年のMicrosoftとWindowsを考える」だ。これまで、2018年の初頭に「未来のPC」的な話題を取り上げ、そして2018年の年末に「MicrosoftとWindows、そしてPC業界の最新状況まとめ」の記事を掲載してきた。

 ZDNetでMicrosoft関係のレポートを続けているエド・ボット氏が「My Microsoft wish list for 2019」のような記事を公開しているが、今回はやや趣向を変えて、2019年7月で登場から4年を迎えるWindows 10を踏まえ、「2019年、Microsoftが飛躍するために取り組むべきこと」としてをまとめた。

Microsoft
2015年7月にリリースされた「Windows 10」

歯車のズレが目立ちつつある「Windows as a Service」の見直し

 Windows 10になり、新しいOSを購入せずとも常にバージョンアップし続ける限り最新の機能とサポートが提供され続ける「Windows as a Service」という仕組みは、非常に興味深いものだ。ユーザー側のメリットもさることながら、古いバージョンのWindowsサポートとセキュリティ対策に悩まされ続けてきたMicrosoftにとってもメリットがあり、本来であれば「Win-Win」のサービスだといえるだろう。

 だが現実を見ると、「(春と秋の)年2回」に固定されたWindows 10の大型アップデートについて、かなり深刻なトラブル報告や、アップデート期間が短いが故の問題も顕在化しつつある。

 下記の記事はその一例だが、特に配信が1カ月半ほど停止された「October 2018 Update(1809)」は顕著で、Microsoftの検証不足とユーザーからのバグレポート見逃しが顕在化した。

 また年2回という、クライアントOSの大規模アップデート実施は企業のIT管理者にとって負担が大きく、当初18カ月(実質的には年1回更新)の猶予期間だったものが、現在では一部の大規模ユーザーを対象に最大30カ月まで延長されるなど、シンプルで簡潔な点が特徴だったOSのライフサイクルが余計に複雑化する事態が起きている。

 Microsoftの意図としては、「Windows Updateを使えばOSのバージョンアップからセキュリティ対策、最新ドライバへの入れ替え、そしてアプリのアップデートまで一括して安全な仕組みを提供できる」というものかもしれない。

 だが実際のところ、「October 2018 Update」の件で私たちが得た教訓は「Windows Updateのボタンを自ら押さない」ということだ。

 同社の説明によれば、October 2018 Updateの配信開始から、問題に気付いてすぐに停止するまでの期間は短く、「手動でWindows Updateを行わない限りアップデートは行われなかった」という。

 Windows 10 Homeのようにアップデートのタイミングを自由に設定することができないエディションの場合、アップデート提供初期にありがちなトラブルを回避するには、強制的にアップデートさせられるまでは極力旧来の環境を使い続けるというのが自衛策となる。

 例えば、米Intelが提供している「Universal Windows Driver(UWD)」のケースも同様で、トラブルが発生しても以前の環境へと戻るロールバック行為が推奨されていない以上、「しばらくは見送り」というのが安全策といえる。

普及が遅れるWindows 10の最新バージョン「1809」

 その結果かどうかは不明だが、ユーザーがWindows 10の新バージョンへ移行するペースがかなりスローダウンしているのが現状だ。先ほども少し触れたが、October 2018 Updateの配信再開から半月程度を経た11月末時点での同バージョンのWindows 10 OSにおけるシェアは2.8%にとどまる。

 AdDuplexが公開した最新の「AdDuplex Report for December 2018」によれば、さらに1カ月が経過した12月末時点での同バージョンのシェアは少し伸びて6.6%だったが、1つ前のバージョンである「April 2018 Update(1803)」が1カ月で50%のシェアに達したことを考えれば大幅に後退している。

 ZDNetの報道によれば、「12月17日のタイミングで『Check for Update』によるマニュアルアップデートを選択した全てのユーザーがOctober 2018 Updateを利用可能になった」ということなので、Microsoftと最終的に配信にGOサインを出すOEMメーカーがアップデートに対して慎重になっているという背景もあるのかもしれない。だがアップデートに慎重なのはユーザーも同様で、おそらくこれは次の大型アップデート「19H1(開発コード名)」にも響く可能性が高い。

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2018年12月時点におけるWindows 10の各バージョン別シェア(出典:AdDuplex)
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Windows 10の各バージョン別シェアの推移(出典:AdDuplex)

 これの何がまずいのだろうか。

 1つはゼロデイ対策が後手に回る可能性が高まる。つまり、セキュリティ対策のためにこまめにアップデートを行っていればよかったものが、アップデートそのもののリスクが認識されることで、「Windows as a Service」がうまく働かなくなるからだ。

 これは、Microsoftが提供を準備しているとうわさされる「Microsoft 365 for Consumer」も同様で、「クラウドを介してMicrosoftに全てを依存させることは危険」という認識を事前に植え付ける可能性がある。

 実際のところ、“無料提供”されているOSに対して追加料金を払ってまでの付加価値というのをユーザーに理解してもらうのも非常に難しいと思うのだが(顕著な例は「Windows Vista Ultimate」だろう)、今回のトラブルは後々のサービス提供に大きな影響を及ぼすと考えている。

 もう1つは企業向けのサポートだ。「Semi-Annual Channel(SAC:半期チャンネル)」におけるアップグレード猶予期間が毎回少しずつ延びているのは、一部大手顧客の要望をくんだためだと推測する。

 一方で例外規則が増える上、Windows 7の追加延長サポートプログラムである「Extended Security Updates(ESU)」提供やそれに伴うOffice 2016の機能サポート延長など、ルールがより一層複雑化している。

 Microsoftにおいて、エンタープライズ向けの製品の名称が毎年変更となって内部の人間でも混乱するのは日常茶飯事だが、それに輪をかけてサポート期間やそれにまつわるルール変更は混乱に拍車をかけている。完全なシンプル化は難しいと思うが、性急すぎるという批判もある「Semi-Annual Channel(SAC)」のルールそのものの見直しも含め、2019年は一度この辺りを再整理してほしいところだ。

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