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ポケモンGOとの違いは? クラウドとAIのMicrosoftを象徴する「Minecraft Earth」鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/3 ページ)

年次イベント「Microsoft Build 2019」において発表された「Minecraft Earth」は、単なるゲームタイトルではなく同社の最先端技術を凝縮した“テクノロジーショウケース”だ。注目ポイントを整理した。

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Minecraft Earthの注目ポイント

 では、Minecraft Earthが注目されるポイントはどこにあるのだろうか。それは、「AR空間を共有」という部分にあると考える。ゲーム性や動作の快適さを重視する形で、プレイヤー同士があまり干渉しない仕組みだったポケモンGOと比較して、ゲーム世界のカスタマイズ性やユーザー同士の共同作業を重視するMinecraftでは、当然ARを通じて共有される情報は多い。

 ポケモンGOにおけるARは、ポケモン捕獲における臨場感を演出するためのものだが、ARという仕組みそのものがゲーム性につながる点でMinecraft Earthは大きく異なる。

Minecraft Earth
Minecraft Earth

 ARをより現実世界と融合させる方法はいくつかある。例えばNianticの場合、背景や奥行きを意識してより臨場感を出しつつ、AR上でマルチプレイヤーゲームが楽しめるよう時間と空間をシェアする仕組みを新しいプラットフォームの中で模索している。

 おそらく、ポケモンGOで新しく実装された対人バトルはこの応用例の1つで、2019年のリリースが見込まれる「Harry Potter : Wizards Unite(ハリー・ポッター:魔法同盟)」にも、このあたりの応用技術が組み込まれるとみられる。

Minecraft Earth
「Harry Potter : Wizards Unite(ハリー・ポッター:魔法同盟)」

 一方のMinecraft Earthはどうか。正式公開に先立ち、米ワシントン州レドモンドのMicrosoft本社キャンパスに一部の報道関係者が招待される形で事前レビューを行っていたようで、そのバックグラウンドや狙いについてまとめた記事が何件か公開されている。そのうちの1つ、The Vergeのトム・ウォーレン氏のレポートでは、同ゲームで用いられている技術解説が行われている。

 ポケモンGOを始めとするNianticのゲームでは、その経緯(GoogleMapsのチームが独立して作った会社)もあり、基本的にGoogleの地図情報をベースにARの全世界マッピングが行われていたが、現在ではOpenStreetMapをベースとしたものとしているようだ。Minecraft Earthでも同様に、OpenStreetMapをベースにシステムを構築している。

 OpenStreetMapは複数の団体や個人が世界地図上で各種情報を加えることで、フリーで地図に関する各種素材を利用できるようにする共同プロジェクトであり、Microsoft自身もBing Mapsを通じて同プロジェクトに貢献している。地図や関連情報はGoogleにおける大きな資産だが、これを使わずにMicrosoftがMinecraft Earthで位置情報サービスを提供するための礎となっている。

Minecraft Earth
OpenStreetMapの利用例

 もう1つ、筆者がMinecraft Earthの非常に重要なコア技術と考えているのが「Azure Spatial Anchor」の存在だ。先日スペインのバルセロナで開催された「HoloLens 2」のイベントでもフォーカスされた同サービスだが、Microsoft Azureを通じて空間マップを複数のユーザーで共有することを実現している。

 例えばHoloLens 2を装着して目の前の仮想オブジェクトに対して作業を行っているユーザーに対し、iPadを手に持った別のユーザーが同デバイスのカメラを通じて空間をのぞくことで、本来であれば肉眼では見られないオブジェクトに対する作業の様子を観察し、場合によっては干渉もできる。

 これをMinecraft Earthの世界に当てはめた場合、目の前でブロックを使った作成中の作品に対し、他のユーザーがAzure Spatial Anchorを通じてその様子をリアルタイムで観察し、ときにその作業に参加できる。リアルタイムで刻々と変化するAR情報を簡単に共有可能なわけだ。

Minecraft Earth
Azure Spatial Anchorsを使ったHoloLensとiPadによる協調作業
記事初出時、記載内容に誤りがありました。おわびして訂正いたします(2019年5月24日15時)。

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