「Microsoft Loves Linux」から考える2020年のWindowsとLinux:Windowsフロントライン(2/2 ページ)
MicrosoftがLinuxに急接近している。しかも単なるポーズではなく、相当な入れ込みようだ。両者の距離感を探ってみた。
Linuxへの注力を強めるMicrosoft
ここでいうWSL 2の話でのメインテーマは「MicrosoftのLinuxへのコミットメント」という点にある。同社としてはWindows上に本格的なLinuxアプリケーション実行環境構築を目指しているようで、例えば9月11日(米国時間)にリリースされた「Build 18980(20H1)」では、ARM64環境におけるWSL 2対応を表明している。
Windows 10におけるARM64対応は、どちらかといえば一般ユーザー向けよりもエンタープライズ用途を主に想定したもので、その文脈でいえば最近ではARM64における「Windows Defender Credential Guard」対応を発表している。WSL 2発表に際してMicrosoftは「Dockerコンテナのように、より多くのLinuxアプリケーションを動作可能に」という目標を掲げており、Windows 10であればWindowsとLinux含めてあらゆるソフトウェアを実行できる環境を整備することを目指しているようにも見える。
実際、WSLにかける同社の意気込みは並々ならぬもので、[今年9月10日には初となるコミュニティイベント「WSLconf」の開催が発表されている。場所は米ワシントン州レドモンドの本社キャンパスで、2020年3月10-11日の会期で実施される。本社エンジニアだけでなく、CanonicalのUbuntu on WSLチームも参加するとのことだが、それだけWSLにおける開発者コミュニティを育てたいということなのだろう。
WSLに限らず、最近のMicrosoftのLinuxならびにオープンソースコミュニティーへのコミットメントは極端なレベルで上昇している。2018年末時点で「Microsoft Azure上で動作するインスタンスの半分以上がLinux」という話があったが、近年はクラウドやサーバサイドだけでなく、今回のWSLのようにクライアントの領域までそれが浸透しつつある。
Microsoftは2020年リリースを目標にChromium Edgeの開発を進めているが、この開発に携わるSean Larkin氏が先日Twitterで「Chromium EdgeのLinuxへのポーティング」に関して意見を大々的に募集していたように、クライアントサイドでの活動領域をLinuxへと拡大しつつある様子がうかがえる。
10月2日の発表イベントで“Android”を搭載したスマートフォン「Surface Duo」が発表されているが、近年のMicrosoftはOSよりもEdgeブラウザなどの“入り口”となるアプリケーションの提供を通じて活動領域を広げつつあり、Surface DuoへのChromium Edge提供の可能性はこの戦略を補完するものとなる。Linuxへのポーティング作業もまた、こうした活動の一環なのだろう。
同様に、近年の同社の戦略製品であるTeamsの「Teams for Linux」の提供計画の話が持ち上がっており、Microsoft自身も話そのものを否定していないことから、筆者の推測ではあるものの、早ければ2019年11月初旬に米フロリダ州オーランドで開催される「Ignite 2019」カンファレンスで何らかのアナウンスが行われる可能性がある。
特にLinux向けTeamsのデスクトップ版が存在しないことは、ライバルにあたる「Slack」とのウィークポイントにもなっており、これを補完する意味もある。
逆のコミットメントでいえば、主にSDメモリーカードやUSBメモリなどのリムーバブルメディアで使われ続けているexFATのLinuxカーネルへの拡張などにも触れており、Chromium Edgeを通じてChromium自身の改良を進めているのと同様、Linuxカーネルそのものへもその影響を及ぼしつつあるようだ。
最近見た中では「Call me crazy, but Windows 11 could run on Linux」というクレイジーなタイトルのコラムも出現しているくらいで、「どれだけ入れ込んでいるのか」と最近の一連のニュースを見て思う。今後も2020年のWindows 10新バージョンが登場するまで同社のアナウンスは続くが、これら背景を振り返りつつ、その動向を見守ってほしい。
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