Surface Pro XとSurface Laptop 3にみる、MicrosoftがSnapdragonとAMDプロセッサを採用した理由:Windowsフロントライン(3/3 ページ)
Microsoftが発表した新モデル「Surface Pro X」と「Surface Laptop 3」。それらに搭載されるプロセッサから、ぶれないMicrosoftのハードウェア思想を見ていく。
ChromiumでIronyな話
Surface Pro Xのようなプラットフォームには、ARM64なネイティブアプリが必要な一方、前述のようにSurface開発チームが“その先”をにらんでハードウェアを設計しているとすれば、おそらく汎用アプリの多くが「ネイティブアプリ」である必要性はそれほどないということの裏返しでもある。
PWA(Progressive Web Apps)のようなWebアプリケーションであったり、Web上で動作するSaaS的なアプリケーションであったりしてもいい。それらのインタフェースがUWPやWebブラウザ経由で実行できるものであればいいという考えなのだろう。
つまり、“キー”となる一部のアプリケーションさえネイティブ実行環境に落としてさえしまえば、あとはArmであれx86であれ、多くのアプリケーションは実行する上でプラットフォームに依存しないという考えなのだろうか。
これは非常に興味のあるテーマだ。既存の多くのアプリケーションという実行資産を抱え、互換性そのものが特徴というWindowsにおいて、そのリファレンスともいうべきSurfaceはその先を既に見据えている。
Win32の次にWinRTを提案し、新たなアプリ配布プラットフォームとしてUWPという枠組みを作ったMicrosoftだが、そのUWP自体も実は過去に置き去ろうとしているのかもしれない。
先日、WalkingCatがTwitterでコメントしていたが、Surface DuoというUWPが動作しないAndroid OSを搭載したプラットフォームがMicrosoftから登場したことで、どうやって自身のUWPアプリをこの新しいデバイスに導入したらいいのかと疑問を呈していた開発者に対し、Windows DeveloperのTwitter公式アカウントが「心配することはない。この方法を使えばUWPをAndroidでも動かすことができる」と回答し、Visual Studio上でXamarinを使ってAndroid用のパッケージを作ればいいと提案していたという。
方法としては正しいが、これは単に「WindowsではなくAndroid用アプリをビルドしろ」っていっているだけで、当該開発者の疑問の答えとしては正しくない。当該のツイートはすでに消されたようでスクリーンショットが残っているのみだが、WalkingCatが「家に帰れ。酔っ払っているんだろ」とコメントしたという流れだ。
クロスプラットフォームというと聞こえがはいいが、実際には単一のアプリケーション実行環境としてのプラットフォームにMicrosoftは既にさほど興味を示していないことの証左なのかもしれない。
WiredのインタビューでCEOのサティア・ナデラ氏は「OSはもはやわれわれにとって最も重要なレイヤーではない。重要なのはアプリモデルや体験であって、DuoやNeo向けのアプリをどのように記述していくかということが、単純にWindowsとAndroidのどっちのアプリを記述するという話ではなく、相互により多くのことが可能になる」と述べ、究極的にはMicrosoft Graphのようなクラウドサービスを通じて提供される総合的なユーザー体験に結びついていると説明する。
最近の同社のLinuxへの注力ぶりは先日も紹介したが、「OSはどうでもいい、Microsoftのクラウドを通じて同社が想定するユーザー体験さえ得られれば……」というのが本音なのだろう。Windows 10Xもまた、“2画面”という特殊なハードウェアを動かして想定するようなユーザー体験をもたらすための道具の1つであって、「Windowsであることにそれほど意味はない」という考えなのかもしれない。
一方で、OSの上のレイヤーで「アプリケーション実行環境」として要となる「Webブラウザ」については非常にこだわっているようだ。Chromium Edgeの開発が急ピッチで進んでいることは紹介済みだが、NeowinがQulacomm関係者に確認したところによれば、このChromium EdgeはSurface Pro Xとセットで出荷が行われるという。
2018年12月に予告されていたFirefoxについては、β版提供が進んでいるものの、それ以外のブラウザ、例えばGoogle Chromeについては現状で特にアナウンスがない。Chromiumベースでの移植が進んでいることは確認しているが、Chromeとしてはリリースが行われていない。
Neowinによれば、Google、Microsoft、Qualcommのいずれかの2社間で意見の相違があり、少なくとも2020年2月のタイミングまでは動きがないとの話を紹介している。Surface Pro XへのChromium Edgeの導入はQualcommによって推進されているもので、こちらは10月のリリースで提供が行われ、デバイスが市場出荷される11月のタイミングで一般ユーザーが利用可能になるという。
いずれにせよ、Surface Pro XとChromium Edgeがセット出荷されるということが意味するのは、アプリケーション実行環境としてのWebブラウザをやはり重視していると考えるのが妥当なのだろう。
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