AirPods Proに学ぶ魔法とテクノロジーの境界線(4/4 ページ)
Appleのワイヤレスイヤフォン「AirPods Pro」が話題を集めている。さまざまな機能がうたわれているが、Appleの神髄はそこにない。Appleがかけた“魔法”を林信行氏が解説する。
AirPods Proに漂う新しい何かが始まる「予感」
AirPods Proは、何か予感を感じさせる。
既にその前身であるAirPodsの時点で、多くの人がこの「予感」を共有していたのかもしれない。AirPodsは2016年に最初の製品が発売されるや世界でもっと売れている「Bluetoothイヤフォン」になったかと思うと、その後、すぐにBluetooth以外も含めた「全イヤフォン」の中でも、世界一人気の商品に大化けをした。
だが、筆者が感じる「予感」は、ただのヒット製品の予感といったレベルのものではない。
2001年10月、発表直後の初代iPodが「予感」を感じさせながらも、その時点ではただの音楽プレーヤーでしかなかった時のような、あるいは2007年1月、発表直後の初代iPhoneが「予感」は感じさせるものの、その時点ではただのスマートフォンでしかなかった、あの時に感じたのに近い「予感」だ。
最近、米AppleのYouTube公式チャンネルを見ると、ひっそりとASMR(Autonomous Sensory Meridian Response:自律感覚絶頂反応)のコンテンツがアップロードされ、スマートフォン画面を眺めている時間が長過ぎる現象を引き起こしたことで責められることも多いAppleが、聴覚回りでできることがないか模索しているのを感じる。
私たちはウェアラブルというと、すぐにスマートウォッチやスマートグラス(メガネ)を想像してしまうが、実はイヤフォンも立派なウェアラブルの1つだ。
初代AirPodsが出てきた当時、初代Mac開発チームのプログラマー、ビル・アトキンソン氏は「耳の中こそがSiriにとって最適なすみか」と語ったが、AirPodsとはまさに耳に装着するSiriだ。
これだけ付け心地よ良ければ、音楽を聴いていない時でも、例えば騒音をシャットアウトして仕事に集中するため、あるいは瞑想(めいそう)や深い眠りにつくために、AirPods Proをずっと耳に入れたままで過ごして、そのままiPhoneを持たずにジョギングに出かけた時も、Apple Watchから景色にBGMを添えることもできれば、オーディオブックで本を聴いたり、最新のニュースや調べ物を声で調べたりもできる。
この既に大好評の新しいウェアラブルデバイスをAppleが出したことで、ここからどんな新しいウェアラブルの未来が広がるのだろう。発売直後のiPodやiPhoneがそうだったように、今の私たちはまだその未来の広がりを十分に想像することができない。
だが、何か大きな広がりを見せそうな「予感」を感じているのは、おそらく筆者だけではないはずだ。
関連記事
- アクティブノイズキャンセリング対応の「AirPods Pro」が10月30日に登場 2万7800円
Appleのワイヤレスイヤフォン「AirPods」に上位モデルが登場。シリコン製のイヤチップを装着するスタイルとなり、新たにアクティブノイズキャンセリング機能を搭載した。 - アップルの「HomePod」はシンプルであることの魅力を再認識させてくれる製品だった
アップル純正のスマートスピーカー「HomePod」が、ついに日本でも発売される。使って試した「HomePod」から、林信行氏が感じたものは何か。 - 魅力を再構築した新モデル「Apple Watch Series 5」の進化と変化
スマートウォッチで独走を続けるApple Watchも、登場から5年目を迎える。新モデルSeries 5の魅力はどこにあるのか。林信行氏がレビューをお届けする。 - カメラの進化が楽しさと使い勝手を跳躍させる――iPhone 11/11 Proレビュー
9月20日にAppleから発売される新型iPhoneを、林信行氏が徹底レビュー。すぐ分かる魅力、じっくりと使い込むと分かる魅力などを細かくチェックした。 - 言葉では伝わらない新iPhone 11とApple Watchのすごさの本質
9月11日(現地時間)、Appleのスペシャルイベントで数多くの製品が登場した。発表会の情報だけでは分からない、iPhone 11シリーズと新型Apple Watchの魅力に迫る。 - WWDCで鮮明になった「Apple=安心ブランド」という戦略
tvOS、watchOS、iOS、macOSに加え、第5のOSとしてiPadOSも発表されたAppleの開発者イベント「WWDC 2019」。5つのOSに共通する開発姿勢を見ると、今、世界で起きている新しいデジタルの潮流とピタリと符合をしていることが鮮明になってきた。Appleの今だけでなく、世界のテクノロジー業界全体が迎えている変化についても見ていこう。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.