Sidecarで液タブは不要に? refeia先生がガッツリ試したよ:人気イラストレーターが徹底チェック(3/5 ページ)
iPadをMacの外部ディスプレイとして利用できるAppleのSidecarにより、PhotoshopもCLIP STUDIO PAINTもApple Pencilで操作可能になった。この“液晶ペンタブレットキラー”の登場により、イラスト界はどうなるのか? プロイラストレーターがガッツリと試した。
実際に使ってみると弱点もチラホラ
さて、遅延も小さくて表示品質も良い! 完璧だ!――と言いたいところですが、やはり実際に使った感触は気になりますし、本当に液晶タブレットの代わりになるのか? というのも興味がわくところです。そこで、線画やラフ、塗りの作業を試しながら、手元のCintiq Pro 16の使用感と比べてみましょう。
SidecarによるiPadでの作画は、無線接続しているとは思えないようなレスポンスでサクサク描けますし、Apple Pencilの筆圧検知も動作します。また、画面端にOptionなどの装飾キーやTouch Barが表示され、特にTouch Bar対応アプリでは素早く操作できる項目が増えるのは便利でした。これらは位置を変えたり、非表示にして画面の広さを優先させたりすることもできます。
ただ、致命的な問題が1つありました。Photoshopで始筆の一瞬だけ、かなり強い筆圧が入力されてしまいます。
この問題はCLIP STUDIO PAINTでは起こりませんし、ほどなく直るだろうと期待していますが、テストしている時点ではPhotoshopでイラストを描くのは無理でした。
他にも、Sidecarを使ったときに引っかかる点は、以下のものがありました。今回は液晶タブレットの代用として評価したいので、Sidecar固有の問題ではなくてiPadを使っていれば普通に起こることも挙げています。
- Sidecarに表示されたMacの画面をタッチ操作できない
- サイドボタンがなく、ペンだけでは右クリックできない
- ホバーでマウスカーソルやブラシカーソルを見ることができない
- ツールチップなどの一般的なホバー操作も機能しない
- ホバー状態で筆圧が検知されてしまう「空中筆圧」問題
まず、タッチ操作ができないのがなかなか厳しいです。スクロールやピンチズームなどの、トラックパッドとしてのジェスチャーはできますが、一般的なタッチ操作はできません。Appleとしては「Macは画面をタッチさせない。タッチするのはTouch Bar」という方針でしょうが、iPadにUIが表示されていたら普通にタッチするじゃないですか……そこで反応しないと、「なんで……」と感じてしまいます。一方、Cintiq Proではマウス操作のフリをさせているのか、タッチ操作ができました。
次にサイドボタンについて、第2世代のApple Pencilは本体にタッチセンサーがあるはずですが、何かが動作する様子はありませんでした。Cintiq Proのペンでは、2つのサイドボタンを右クリックや自分でカスタマイズしたツールに割り当てられるので、作業効率に差が出ます。
ホバーでブラシサイズのプレビューが得られない問題も、太いブラシで始筆の前にカーソルを見ながら位置を決めることができず、描きづらかったです。元々iPadで描いている人なら気にならないのかもしれませんが、PC作業に慣れた人だとストレスになるかもしれません。
「空中筆圧」は、Apple Pencil自体の問題です。ペン先がギリギリ触れていない状態で線が描かれてしまう動作で、一度触れてから離れる時に特に粘りが大きくなります。手元の古いiPad Proと、最新の評価機で同様に発生していて、試用する限りでは、第2世代のApple Pencilでは軽減されていました。
字を書いたりハッチングをしたりするときに、線に余分なハネが現れやすいです。好ましい動作ではないですし、液晶タブレットや実在のPencilでは経験しない現象なので、やはり気になります。
その他、使い勝手で感心する面も多々ありました。
- 無線接続中にUSBケーブルを抜いたりWi-FiルーターをオフにしたりしてもSidecarは継続して動作
- Wi-FiルーターがオフでもSidecarを開始できる
- スリープからの復帰もSidecarの状態が維持される
こういった動作は、日常や外出時の使い勝手としてかなり良さそうですね。
そのあたりを、プロのSidecar使いに聞いてみましょう。
関連記事
- 新型iPadとiPadOSがあればテキスト入力環境はこんなに進化する!
AppleがリリースしたiOSの新たな派生版である「iPadOS」。新しいOSになることで、同社のタブレット「iPad」シリーズにどのような変化があったのだろうか。テキスト入力面での違いをチェックした。 - 「iPadOS」で今度こそ“iPadがモバイルPC代わり”になるか PCユーザー視点からβ版を試して分かったこと
2019年秋のリリースに向け、「iPadOS」のパブリックβが登場。仕事ではタブレットではなくパソコンを使い続けてきた筆者の視点から、「12.9インチiPad Pro」にiPadOSのβ版をインストールし、ノートパソコン代わりに使ってみたインプレッションをお届けする。 - 「macOS Catalina」を導入して分かった“iPadとの一体感” iTunesの廃止は問題なし
Mac向け新OS「macOS Catalina」の正式版がリリース。iPadをサブディスプレイ兼ペンタブレットとして利用可能にする「Sidecar」をはじめとする注目の機能、そしてiTunesの廃止など、インプレッションをお届けする。 - 「MacBook Air(Mid 2019)」でWindowsを使いたい? よろしい、Boot Campだ!(セットアップ編)
7月11日に発売された「MacBook Air(Mid 2019)」。その店頭販売モデルの上位構成を集中レビューする。第3回は、MacでWindowsを動かす「Boot Camp」機能を使って、Windows 10をインストールしてみる。 - 人気プロ絵師による「Cintiq Pro 16」発売直前ガチレビュー
液タブ歴9年のイラストレーター、refeia先生がワコムの新型4K液晶ペンタブレット「Wacom Cintiq Pro 16」を仕事で使ってみた結果。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.